放熱性を高めたビルドアップ基板や分解コーナなどに人だかり ―― JPCA Show 2011
プリント基板技術と実装技術に関する総合展示会「JPCA Show 2011(第41回 国際電子回路産業展)」が2011年6月1日~3日に東京ビッグサイトで開催された(写真1).
写真1 東京ビッグサイト東館のJPCA Show 2011展示会場
※ 本レポート記事の写真をマウスでクリックすると拡大できます
JPCA Showは毎年5月末~6月初めに東京で開催されてきた展示会である.前年(2010年)のJPCA Show 2010では,部品内蔵プリント基板の展示が注目を集めていた.今年は前年に比べると展示規模が少し小さくなり,展示そのものも,やや地味になった印象を受けた.開発拠点の日本,量産拠点の海外という役割分担がさらに進んできたことがうかがえた.
ただし,高密度実装技術で日本が世界最高水準を維持していることは変わらない.プリント基板は高密度と高放熱を両立させながら,一段と高い水準に進化していた.
●放熱性をさらに高めたビルドアップ基板を展示
日本シイエムケイは,自動車の電子機器に向けたプリント配線基板を展示し,来場者の注目を集めていた.高密度,高信頼性,高放熱性,大電流対応を同時に実現したプリント基板である(写真2,写真3).中でもビルドアップ基板「PPBU」の内層銅配線を厚くして大電流に対応させた「内層厚銅PPBU」が目を引いた.内層を全面銅プレーンのコア層として放熱性を高めたプリント基板がすでに製品化されているものの,実装密度をあまり高められないという弱点があった.その点を改良したのが「内層厚銅PPBU」と言える.
同社の展示ブースでは,PPBUの車載応用例としてトヨタ自動車のハイブリッド車用PPBU基板や車載電子機器メーカのケーヒンが採用したPPBU基板を展示していた.またこれとは別に,日産自動車の電気自動車「LEAF」が採用したインバータ制御基板を展示していた.
パナソニックエレクトロニックデバイスは,ビルドアップ基板などの高密度プリント基板に向けた高放熱絶縁樹脂を開発し,その樹脂を組み込んだ多層プリント基板を展示した(写真4).通常のプリント基板に使われるFR-4樹脂の熱伝導率が0.4W/mK前後であるのに対し,開発した高放熱樹脂は熱伝導率が1.3W/mK~1.5W/mKと高い.金属コア基板やサーマル・ビアなどを使いたくない高密度実装基板に適しているとする.
写真4 放熱性を高めたインバータのプリント基板(右)と,従来のプリント基板(左)にそれぞれパワー・デバイスを実装し,動作時の温度分布を測定
同社の展示ブースでは,FR-4両面板と高放熱樹脂両面板に同じパワー・デバイスを実装し,サーモ・グラフでパワー・デバイスの表面温度分布を表示していた.FR-4両面板に実装したデバイスの表面温度が最高で105℃になるのに対し,高放熱樹脂両面板に実装したデバイスの表面温度は最高で95℃にとどまっていた.
同社はまた,3次元実装技術を参考出展としてパネル展示していた(写真5).プリント基板に深さ0.4mmほどの凹み(キャビティ)をつけてチップ部品を実装し,その上にBGAパッケージをかぶせて蓋をした構造や,キャビティの上に2個のBGAパッケージを積層する構造(パッケージ・オン・パッケージ構造)を示していた.