変換効率の向上や交流出力品など,改良が著しい太陽電池モジュール ―― PV EXPO 2011レポート
2011年3月2~4日,太陽電池技術に関する展示会「PV EXPO 2011(第4回国際太陽電池展)」が東京国際展示場(東京ビッグサイト)にて開催された(写真1).再生可能なエネルギー技術の開発気運の高まりを受けて,国内はもちろんのこと,海外の太陽電池モジュール・ベンダが数多く出展していた.展示会場最奥の通路は両側に大手・中堅の太陽電池モジュール・ベンダが並び,通路には来場者がひしめき,さながら「太陽電池モジュール通り」とも呼ぶべき状態となっていた.
当然ながら,出展していたすべての太陽電池モジュール・ベンダを紹介することは難しい.ここでは注目の展示に絞って太陽電池モジュールを紹介する.
●表面電極を省いて面積当たりの出力を高める
太陽電池モジュールを構造で大別すると,結晶系と薄膜系に分かれる.結晶系は変換効率の高さが,薄膜系は柔軟性と低コスト化の可能性が特長である.まずは現在の主流である,結晶系モジュールの主な展示を報告しよう.
太陽電池モジュールの大手ベンダであるシャープは,表面電極を省いて単位面積当たりの出力を高めた単結晶型太陽電池モジュールを開発し,実物を出品した(写真2).太陽電池セルの出力を送電する電極と配線を裏面にまとめている.太陽電池セルの表面で光を電気に変換する面積が増大するとともに,裏面電極が全面電極となるので配線抵抗が大幅に減り,配線による電力損失が減少した(写真3).従来品(出力180W品)はモジュール変換効率が13.6%だったのに対し,開発品(出力209W品)はモジュール変換効率が16.0%と大きく向上した.
出品していた太陽電池モジュールの仕様は,公称最大出力が208.5W,モジュール変換効率が16.0%,外形寸法が1318mm×990mm×46mm,重量が17.0kgである.
●交流出力の太陽光モジュール
ディスプレイ用フルカラー液晶パネルの大手ベンダとして知られる台湾のAUO(AU Optronics)は近年,太陽電池事業に力を入れている.同社は交流出力の単結晶型太陽電池モジュールを実物出品し,来場者の注目を集めていた(写真4).通常の太陽電池モジュールは直流出力なので,商用交流電力を得るためにはインバータを必要とする.太陽光発電システムで太陽電池モジュールを増設すると,条件によってはインバータの設備を変更する必要がある.交流出力の太陽電池モジュールを使用した発電システムだと,こういった問題がない.
出品していた太陽電池モジュールの仕様は最大出力が225W,交流最大出力電圧が240V,出力電流が0.9375A,交流動作電圧が211V~264V,周波数が60Hz,外形寸法が1651mm×992mm×40mm,重量が22kgである.
●太陽光セルのサイズを半分に縮小
三菱電機は,変換効率を同社従来品に比べて12%高めた単結晶型太陽電池モジュールを開発し,実物を出品した(写真5).太陽電池セルを従来の半分の大きさに切断することで電極と配線による抵抗損失を減らし,変換効率を向上させた(写真6).この結果,出力190Wの同社従来品と同じ大きさで出力を209Wに増やすことができた.
出品していた太陽電池モジュールの仕様は公称最大出力が209W,モジュール変換効率が15.0%,公称最大出力動作電圧が25.8V,公称最大出力動作電流が8.11A,外形寸法が1625mm×858mm×46mm,重量が17.0kgである.