制御ソフトウェア開発におけるモデルベース開発事例が続々登場 ―― MATLAB EXPO 2010
制御系ソフトウェア開発ツール「MATLAB/Simulink」の開発企業である米国The MathWorks社の日本法人マスワークスジャパンは11月26日,顧客向けの講演会兼展示会「MATLAB EXPO 2010」を東京ミッドタウン(東京都港区)にて開催した(写真1).

写真1 MATLAB EXPO 2010の来場者受付所の様子
開演25分前に撮影.かなり円滑に来場者をさばいていた.
今回の「MATLAB EXPO」はThe MathWorks社の日本法人が2009年7月に発足して以降,2回目の開催となる.2008年までは日本国内の総代理店であるサイバネットシステムと,The MathWorks社が「MATLAB EXPO」を共催してきた.
日本法人が発足してから2回目の今年は,会場を昨年までの「ザ・プリンスパーク タワー東京」から「東京ミッドタウン(ホールおよびカンファレンス)」に変更した.昨年までのザ・プリンスパーク タワー東京は,最寄り駅から少し離れているためにやや不便だったが,東京ミッドタウンは地下鉄駅と直結しているなど交通至便で,会場まではずっと行きやすくなった.ただし講演会場が2カ所に分割されたため,会場間の移動に手間取るなど,改善の余地を残した.
MATLAB EXPO 2010の講演は午前に全体講演となる基調講演セッションを開催し,午後に七つの会場に分かれて講演トラックを開催するという流れで実施された(写真2).基調講演の会場でもある第3会場の隣には展示会場が設けられており,The MathWorksとパートナ企業による製品展示や技術展示などが行われていた.本レポートでは,午前中の基調講演について,概要をお届けする.

写真2 基調講演の会場における開演前の様子
開演5分前には,ほぼ満席になっていた.
●モデルベース開発導入で開発期間を大幅に削減した事例を提示
基調講演では始めに,MathWorksのマーケティング担当バイス・プレジデントを務めるRichard Rovner氏が「科学技術計算およびモデルベースデザインにおけるイノベーション」と題して講演した.Rovner氏は,日本国内のユーザが「MATLAB/Simulink」を採用してモデルベース開発を導入した結果,どのような効果があったのかという事例を示した.
自動車用電装部品メーカのミツバは,自動車用リバーシングワイパーのコントローラ設計と実装にモデルベース開発を導入し,以前に比べてわずか2割の期間でコントローラの開発を完了したという(写真3).MathWorksのツールは,制御システムのモデル化とシミュレーション,検証,量産コードの生成に活用した.

写真3 ミツバでのモデルベース開発導入の効果
自動車メーカの富士重工業は,「MATLAB/Simulink」を1999年以前から制御シミュレーションに,1999年からHILS(Hardware In the Loop Simulation)に,2001~2002年からラピッドプロトタイピングに,2003~2004年から仕様書(Simulinkで記述した仕様書)に,2004年から自動コード生成(ACG:Automatic Code Generation)に適用していった(写真4).

写真4 富士重工業が「MATLAB/Simulink」の適用範囲を拡大していった様子
Rovner氏は調査会社のデータを引用し,モデルベース開発によって開発スケジュール遅延の割合と平均遅延期間が減少し,開発期間が短縮され,開発コストが削減されたとの結果を示していた(写真5).

写真5 モデルベース開発の導入が開発プロジェクトに与える効果
それから,2010年9月3日に発表した「MATLAB/Simulink」の新バージョン「Release 2010b(R2010b)」の概要(写真6)と,同年9月13日に発表したいくつかのツールに関するバージョンアップの概要を説明した.

写真6 「R2010b」における新機能の例
並列コンピューティング機能のツールボックスが,NVIDIAのGPU向けC言語ソフトウエア統合開発環境「CUDA」をサポートした.