制御ソフトウェア開発におけるモデルベース開発事例が続々登場 ―― MATLAB EXPO 2010
●マイコンをモデルベース開発に取り込む
続いて小泉氏は,自動車分野での制御ソフトウェア開発に話題を移した.自動車分野の制御ソフトウェア開発でもすでに,「MATLAB/Simulink」を活用したモデルベース開発が行われている.自動車の制御系は今後もますます複雑化する傾向にあり,個々の電子制御ユニットの集合体から,複数の制御ユニットをまとめて制御する統合制御へと進化しつつある.電子化が特に進んでいるハイブリッド車では,ハイブリッドのパワートレーンを担う統合制御ユニットと,ステアリングやブレーキなどの車両運動を担う統合制御ユニット,外界認識や外部ネットワーク通信などの車両情報システム(ITS)を担う統合制御ユニットが連携し,自動車全体を協調的に制御するようになる(写真13).
このためにはモデルベース開発を一段と強化する必要がある.その手法の一つが,マイコンのモデル化とモデルベース開発への取り込みだと小泉氏は説明していた.これまではマイコンのモデルが存在せず,実機の完成を待ってから,マイコンを含めたシミュレーションを実施せざるを得なかった(写真14).
そこで,「MATLAB/Simulink」の制御プラントモデルとマイコンのモデル,制御ソフトウェアを組み合わせた検証手法を開発した.講演では,自動車のエンジン制御システムへの適用例を示していた(写真15).制御プラント・モデルはアクセル・ペダルの踏み込みをセンサ信号に変換してマイコン・モデルへ送り,マイコン・モデルは制御プラント・モデルにアクチュエータの制御信号を返す,というものである.マイコン・モデルには,米Synopsys社(元は米VaST社)の「CoMET」を利用した(写真16).SH-2A CPUのモデルを使い,CPUの動作を解析した結果を見せていた.
●iPhone/iPadアプリにMATLABが登場
このほか展示会場では,iPhone/iPad用アプリケーション「MATLAB Mobile」の展示が目についた(写真17).「MATLAB Mobile」を利用すると,MATLABが動作しているパソコンにアクセスし,図面やコードなどをiPhone/iPad上にも表示できる(写真18).
ただし,現在はエディタやGUI(Graphical User Interface)が搭載されていないなど,「MATLAB Mobile」の機能は非常に限られている.そのせいか,展示ブースは控えめなものだった.今後の機能拡張を期待したい.
ふくだ・あきら
テクニカル・ライタ/アナリスト
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