制御ソフトウェア開発におけるモデルベース開発事例が続々登場 ―― MATLAB EXPO 2010

福田 昭

tag: 組み込み

レポート 2010年12月 2日

●日立グループの制御ソフト開発に「MATLAB/Simulink」を採用

 続いて日立製作所 モノづくり技術事業部 組込みシステム改革戦略センタのセンタ長を務める小泉 忍氏が,「日立グループにおける組込みソフトウェア開発力強化の取組み」と題して講演した.

 小泉氏はまず,組み込みソフトウェア開発が抱える課題を3点にまとめて提示した(写真7).「複雑度の上昇」(テスト工数の増大とソフトウェア品質の低下),「開発組織の拡大」(人材の不足,管理オーバヘッドによる効率低下),「開発期間の短期化」(開発期間の圧縮によるソフトウェア品質の低下)である.また組み込みソフトウェアの開発には,リアルタイム処理といった性能の要求水準が高い,利用できるハードウェア資源の制約条件が厳しいといった根本的な制限を抱えていると述べた(写真8).

写真7 組み込みソフトウェア開発の課題

写真8 組み込みシステム開発の構造

 ソフトウェア開発技術の強化そのものは,銀行系や交通系などのオンライン・トランザクション・システムの業務用ソフトウェア開発で早期から必要性が認識されており,1980年代には「ソフトウェア技術センタ」またはこれに類似したソフトウェア開発力の強化組織が相次いで設けられるようになっていた.

 組み込みシステムのソフトウェア開発で開発力の強化に本腰を入れ始めたのは,日立グループでは2005年4月に「組込みシステム改革活動」を開始してからだ(写真9).ソフトウェア工学の成果や業務用ソフトウェア開発のノウハウを取り込むとともに,研究所や技術支援部門の開発技術を事業部門に適用していった.

写真9 日立グループにおける組み込みソフトウェア開発力強化の取り組み

 2008年10月には「組込みシステム改革活動」を第2期へと移行し,4つの視点に基づく活動へと進化させた.4つの視点と活動とは,

1)開発プロセス(P):プロセスの整備とソフト開発の可視化
2)アーキテクチャ(A):ソフトウェアの階層構造化と再利用化
3)設計・開発技法(D):モデルベース開発などの抽象度の高い設計・開発
4)技術者教育(E):組み込みスキル標準をベースにした技術者育成

を意味する(写真10).

写真10 組み込みソフトウェアの開発力強化に向けた4つの視点と活動

 この中でソフトウェアの設計・開発技法では,モデルベース開発を導入することで,設計の上流工程で不具合を発見することにより,下流工程からの手戻りを減らすことを狙った.具体的には「MATLAB/Simulink」を採用し,制御ソフトウェアの開発において制御アルゴリズムと制御対象の物理現象をモデルで記述した.そしてモデルをシミュレーションによって検証した.この検証工程により,不具合の早期発見と手戻りの削減を実現した.さらに,モデルからプログラム・コードを自動生成することにより,コード生成とテストの工数を削減した(写真11写真12).

写真11 モデルベース開発の導入と実行

写真12 従来の開発プロセス(左)とモデルベースの開発プロセス(右)
電子制御ユニット(ECU)のソフトウェア開発プロセスの例

 日立グループでは,自動車関連機器や家電製品,モータ/インバータ,建設機械,産業用機器などの制御ソフトウェア開発にモデルベース開発を導入し,ソフトウェア開発期間の短縮やソフトウェア品質の向上などで大きな成果を挙げているとした.

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