米国発クリーンテック便り(2) ―― トーマス・エジソン vs. ニコラ・テスラ,130年後の決着

阪口 幸雄

tag: 電子回路

コラム 2010年12月 3日

●直流送電で一気に運ぶ

 で,ここで「直流送電」が登場します.直流送電には,「最大電圧が小さく,絶縁が容易である」,「表皮効果を生じないため,導体利用率が良い」,「電力当たりの電流が小さいため,電圧降下や電力損失が小さい」といったメリットがあり,ポイントからポイントへ大きな電力を送るのに適しています.

 直流送電は,実は欧州や中国で実用化が進んでいます.最近では米国でも直流送電線が使われるようになってきており,大平原地帯にある大規模風力発電施設から200km近い長さの送電線で,800kV / 1GWの電力を一気に運んでいるそうです.交流送電と異なり途中に中継地点を設ける必要がなく,ほぼ97%の効率で運べるそうです.これは凄いですね.

●同期の取れていない交流電力網同士の接続は直流送電で

 前述のように,米国には大きな三つの電力網があり,それぞれの中では同期が取れています.逆に言うと,互いの電力網の間では同期が取れていません.このため,三つの電力網をつなぐところでも直流送電が使われています.

 西と東の交流電力網は何カ所かの地点で接続されています.接続地点では,一度交流が直流に変換され,さらに相手と同期の取れた交流に再変換されます.こうして,何GWもの電力が直流を用いて双方向に変換されています(可変周波数変圧器が使われることもある).

 現在,米国ではTres Amigasという超伝導を用いたスーパ変換ステーションを作る計画も進んでいるようです.ニューメキシコ州にあるこのステーションでは,三つの電力網を図3のように地下に埋めた超伝導配線でつなごうとしています.


図3 超伝導配線で三つの電力網を接続
出典:TresAmigaのWebサイト


 発明王エジソンはテスラとの争いに敗れて,晩年は失意の中で過ごしたと言いますが,130年たって直流送電の良さが見直され,世界中で実用化が進みつつあります.歴史は決して,優れた技術を忘れ去ることはないのでしょう.

 

さかぐち・ゆきお
yukio@sakaguchi.org
http://d.hatena.ne.jp/YukioSakaguchi/

 

◆筆者プロフィール◆
阪口 幸雄.シリコンバレー在住25年.もともと半導体技術のベテランで,CQ出版が発行していたDesign Wave Magazineにも数度登場.最近,環境技術をあれこれ勉強中.「地球環境を守ることとビジネスの発展は両立する」がモットー.

 

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