太陽電池パソコンやUSB駆動大画面液晶など,低炭素社会を後押しする要素技術が続出 ―― Green Device 2010
低炭素社会を支える電子デバイス「グリーン・デバイス(Green Device)」に関する展示会「Green Device 2010」が2010年11月10~12日に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催された.低炭素とは,二酸化炭素(地球温暖化ガス)の排出が少ないことを意味する.すなわち低炭素社会とは,地球温暖化ガスの排出を低減した社会を指す.動力源に再生可能なエネルギを利用したり,消費するエネルギそのものを減らしたりする.このような努力を支援する電子デバイスをグリーン・デバイスと呼ぶ.
グリーン・デバイスの展示会は昨年が初回で,薄型ディスプレイの展示会「FPD International」と合同で開催された.会場はパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)だった.今年も「Green Device 2010」と「FPD International 2010」は合同で開催されている.来場者数は両展示会の合計で43,599名.なお会場が幕張メッセとなったのは今年だけのようで,来年(2011年)は会場をパシフィコ横浜に戻して実施する予定である.
「Green Device 2010」と「FPD International 2010」は展示会場内では明確には区別されておらず,混然一体となってブースが配置されている(写真1).そこで本レポートでは,グリーン・デバイス関連と思われる展示から,興味深いものを紹介する.

写真1 Green Device 2010の会場風景
FPD International 2010と同じ会場であり,両者の展示ブースが混在している.
●太陽電池パネルを組み込んだノート・パソコン
液晶ディスプレイの大手ベンダである台湾のAU Optronics社は,太陽電池パネルを組み込んだノート・パソコンを試作し,実機を動作状態で出品した(写真2).2枚の太陽電池モジュールを組み込んである.1枚はタッチパネル式の透明なキーボードの下層に,もう1枚は液晶ディスプレイの裏面に埋め込んだ(写真3,写真4).

写真2 太陽電池パネルを組み込んだノート・パソコンの試作機(キーボード側)
透明なキーボードの下層に太陽電池パネルが組み込まれている.

写真3 太陽電池パネルを組み込んだノート・パソコンの試作機(液晶ディスプレイ背面側)
液晶ディスプレイの背面に太陽電池パネルが組み込まれている.

写真4 太陽電池パネルを組み込んだノート・パソコンの概要説明図
ノート・パソコンに埋め込むため,太陽電池モジュールの厚さを2.1mmと従来の4.7mmから半分以下に薄くしている.さらにキーボード側では,タッチパネルと太陽電池モジュールを一体化した.展示ブースの説明員によると,太陽電池モジュールの発電電力は10W(2枚の合計値)で,ノート・パソコンの消費電力は40Wだという.
液晶ディスプレイ側の太陽電池モジュールの大きさは320mm×186mm.液晶ディスプレイの厚さは3.9mm,太陽電池モジュールの厚さは2.1mmである(写真5).キーボード側の太陽電池モジュールの大きさは310mm×194mm.タッチパネル式キーボードの厚さは0.55mm,太陽電池モジュールの厚さは2.1mmである.

写真5 太陽電池パネルとキーボードの主な仕様
●USB電源で動作するフルカラー大画面液晶ディスプレイ
液晶ディスプレイの大手ベンダである台湾のChimei Innolux社は,USB電源で動作するフルカラー大画面液晶ディスプレイを開発し,実機を動作状態で展示した(写真6).23.6型のフルHD(1920×1080画素)ディスプレイである.消費電力が9W未満と低い.このため,USB3.0のコネクタ2本から取り出した電源で動作する.なお同社が製品化済みのLEDバックライト23.6型フルHD液晶ディスプレイ「V236H1-LEx」の消費電力は,17.6Wである.

写真6 USB電源で動作する大画面フルHD液晶ディスプレイ
開発したUSB電源フルHD液晶ディスプレイの仕様は画素ピッチが0.2715mm(「V236H1-LEx」と同じ),有効画面寸法が521.3mm×293.2mm(「V236H1-LEx」と同じ),外形寸法が564.8mm×382.4mm×140.3mm(「V236H1-LEx」は544.8mm×320.4mm×11.4mm),ディスプレイ部の厚みが7.6mm,輝度が1平方メートル当たり200カンデラ(「V236H1-LEx」は300カンデラ),視野角(上/下/左/右)が80/80/85/85度(「V236H1-LEx」と同じ),コントラスト比が1200(「V236H1-LEx」は1000),反応時間が8ms(「V236H1-LEx」は5ms)である.
なおChimei Innoluxは,台湾の液晶ディスプレイ・ベンダであるChi Mei Optoelectronics社とInnolux Display社,TPO Displays社が合併して2010年3月に誕生した.