組み込み技術者のための資格試験,傾向と対策(3) ―― 高度な(スキル・レベル4の)情報処理技術者試験を知る
●高度試験では自律的なスキルを問われる
スキル・レベル4の高度試験では,プロフェッショナルとして,自律的に担当業務を遂行できるだけのスキルがあるかどうかを問われます.そのため,合格すると,IT業界では一目置かれることがあります.組み込み業界でも,エンベデッドシステムスペシャリスト試験を中心に知名度が増しています.
前回の繰り返しになりますが,図1に,情報処理技術者試験の体系図を示します.平成21年度からの試験制度の変更により,「組み込みシステムに関する知識,技能の重要性の拡大への対応」が行われ,情報処理技術者試験全般において,組み込みシステムが出題範囲に含まれています.そのため,エンベデッドシステムスペシャリスト試験以外の高度試験にも,組み込みシステムに関する問題が出題されています.なお,情報処理技術者試験の試験要綱は,情報処理技術者試験センターのWebサイトから参照することができます.

図1 情報処理技術者試験の体系図
情報処理技術者試験の「試験要綱・シラバス・過去問題 など」のWebぺージに掲載されている,試験要綱Ver1.2より引用した.
●組み込み技術者にお勧めする四つの高度試験
組み込みシステムに大きく関係する高度情報処理技術者試験には,例として以下の四つの試験を挙げることができます.
1)ITストラテジスト試験(略号:ST,秋に実施)
情報システムや組み込みシステム(製品)の企画を行い,企業経営レベルの判断も必要とされるストラテジスト向けの試験です.
2)プロジェクトマネージャー試験(略号:PM,春に実施)
プロジェクトの策定や管理を担うプロジェクトマネージャー向けの試験です.
3)システムアーキテクト試験(略号:SA,秋に実施)
要求仕様の分析や決定,システムの構成,外部設計などを担うアーキテクト向けの試験です.
4)エンベデッドシステムスペシャリスト試験(略号:ES,春に実施)
システムアーキテクトが策定した要件や仕様に基づき,専門性の高いスキルを活用して,組み込みシステムの作り込みを担う技術者向けの試験です.
いずれの高度試験にも,午前Ⅰ,午前Ⅱ,午後Ⅰ,午後Ⅱの四つの試験があり,午前Ⅰから受験すると,9時30分から16時30分までの,1日がかりの試験となります.
・午前Ⅰ:4択問題,スキル・レベル3
午前Ⅰは,すべての高度試験で共通の問題が出題され,IT全般から幅広く出題されます.レベル的には,スキル・レベル3の応用情報技術者試験(AP)の午前問題と同等の問題が出題されます.なお,午前Ⅰは,ほかの情報処理技術者試験の合格などによって免除してもらうことも可能です.
・午前Ⅱ:4択問題,スキル・レベル4
午前Ⅱは,各試験の内容に応じたスキル・レベル4の問題が出題されます.スキル・レベル4なので,専門性が高い問題が題されます.
・午後Ⅰ:記述式
午後Ⅰは記述式の問題です.3~4ページの問題文に書かれた事例を読み,設問に対して指定された文字数以下で記述して回答します.
・午後Ⅱ:記述式または論述式
午後Ⅱは,試験によって試験形式が異なり,午後Ⅰと同様な記述式の問題が出題される試験と,小論文を書く論述式の試験に分かれます.論述式の場合,与えられたテーマに対して,2千数百字程度の論述を行います.ITストラテジスト試験やプロジェクトマネージャー試験,システムアーキテクト試験は論述式の試験で,エンベデッドシステムスペシャリスト試験は記述式の試験です.
それでは,実際に具体的な問題を引用しながら,試験内容を紹介していきましょう.高度試験のすべてを紹介すると膨大な量になるので,今回は,エンベデッドシステムスペシャリスト試験とシステムアーキテクト試験について解説します.
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