Androidが勢力を拡大,スマートフォンからディジタル家電へ ―― ワイヤレスジャパン2010レポート
●異なるAndroid搭載機器間でアプリケーションを共通化
Androidはスマートフォン向けのソフトウェア環境だが,開発ターゲットとなる電子機器はスマートフォンには限定されない.インターネット接続機能とグラフィカル・ユーザー・インターフェイス(GUI)を備えた機器に適した環境であり,タブレット型パソコンやディジタル家電などの開発にも利用できる.
ここで重要なのは,Androidを搭載した機器はすべて,原理的には同じアプリケーション・ソフトウェアが動作するということだ.Androidのバージョンの違いやハードウェアの差異などがあるので,実際にはすべての機器で動作するとは限らないが,基本的なハードウェアだけを利用する同じバージョンのAndroidを搭載した機器であれば,ほぼ問題なく動作するはずである.
そこでKDDIとKDDI研究所は共同で,Androidを搭載したセットトップ・ボックス(STB)を試作し,Android搭載スマートフォンと同じアプリケーション・ソフトウェアが動作することを紹介していた.セットトップ・ボックスはMIPSプロセッサで,スマートフォンはARMプロセッサで動いている.プロセッサの違いがあっても,同じアプリケーション・ソフトウェアが動作していた.
展示ブースではさらに,スマートフォンとセットトップ・ボックスが連携動作し,異なる住宅に設置したセットトップ・ボックス間でコンテンツを共有する仕組みをデモンストレーションしていた(写真12,写真13).
写真12 Android搭載セットトップ・ボックスとAndroid搭載スマートフォンでアプリケーションを共通化する試みの説明パネル
写真13 異なる住宅に置いたAndroid搭載セットトップ・ボックスの間でコンテンツを共有
2台のセットトップ・ボックスが表示しているテレビ画面は,Android搭載携帯電話と同様の表示画面となっている.
●身振り手振りで仮想楽器を演奏
Android以外では,身振り手振りで仮想的な楽器を演奏するシステムが注目を集めていた.ヤマハが参考展示していた(展示ブースはノルウェーのNordic Semiconductor社).「ミューロセンサー」と呼称している(写真14,写真15).
手のひらに収まる程度の小さな白い箱を振ると,スピーカから楽音が出力される.白い箱には3軸加速度センサと2.4GHzの無線トランシーバIC(Nordic Semiconductor社の「nRF24LE1」),ボタン電池が収納されている.加速度センサの信号をノート・パソコンのUSB無線アダプタが受信し,楽器の出力信号を合成する.無線通信のプロトコルはヤマハが独自に開発したもの.
本システムは,ドラムや太鼓などの楽器をエミュレーション可能である.展示ブースでは,来場者が「ミューロセンサー」の白い箱(モジュール)を操作したり,スポンジのボールにモジュールを入れて説明員がキャッチボールを行ったりして,さまざまな楽曲を鳴らしてみせていた.
「ミューロセンサー」はヤマハの半導体事業部が開発中で,応用としてはバーチャルな楽器や情操教育用玩具などの組み込み機器を想定している.
写真14 「ミューロセンサー」の説明パネル
写真15 「ミューロセンサー」のモジュール
左上の白い箱が,3軸加速度センサと無線トランシーバIC,ボタン電池を内蔵したモジュール.右下はモジュールのプリント基板.右上の緑色の球はスポンジでできており,モジュールを球体内部に埋め込める.
ふくだ・あきら
フリーランステクノロジーライター
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