眼鏡なしの立体視ディスプレイやフル・カラー電子ペーパなどに注目集まる ―― 第20回 ファインテック・ジャパン レポート
フラット・パネル・ディスプレイ(FPD)に関する総合展示会「第20回 ファインテック・ジャパン」が2010年4月14日~16日に東京国際展示場で開催された(写真1).眼鏡不要の大画面立体視ディスプレイ(3Dディスプレイ)やフル・カラーの電子ペーパ,大画面のタッチパネルといった展示に来場者の注目が集まっていた.
なお,「第20回ファインテック・ジャパン」は「第6回国際フラットパネルディスプレイ展」,「第2回国際タッチパネル技術展」,「第20回FPD研究開発・製造技術展」,「第5回FPD部品・材料EXPO」の四つの展示会で構成される.
●裸眼で観賞できる大画面3Dディスプレイ
立体視を実現するディスプレイにはさまざまな方式があるが,専用の眼鏡が不要な(裸眼で観賞できる)3Dディスプレイを実現する代表的な方式は以下の2通りになる.
一つはパララックス・バリア方式(視差バリア方式)で,右目用の映像と左目用の映像を専用のスリット列(視差バリアと呼ばれるアパーチャ・グリル)を通して見せる.この方式は通常の平面(2D)表示との切り換えが容易という特徴があるものの,画面がやや暗くなるためにバックライトを強化しなければならないという問題がある.
もう一つはレンチキュラ・レンズ方式で,右目用の映像と左目用の映像をかまぼこ板状のレンズ(レンチキュラ・レンズ)を通して見せる.この方式は視差バリア方式に比べると表示が明るいものの,平面(2D)表示との切り換えが複雑になる.
本展示会では,視差バリア方式を使った70型や65型などの大画面3Dフル・カラー液晶ディスプレイが展示されていた.
70型の3Dディスプレイを展示したのは,ニューサイト ジャパンである(写真2).ディスプレイの解像度は1,920ドット×1,080ドット,視聴距離は5m~15m,外形寸法は横1,630mm×縦952mm,重量は110kg.同社は42型の3Dディスプレイやノート・パソコン用の3D/2D切り換え機能付き3Dディスプレイ,ポートレート用小型ディスプレイなども展示していた.
65型の3Dディスプレイを展示したのはVMJである(写真3).解像度は1,920ドット×1,080ドット,視聴距離は3.5m~4.5m(最適視聴距離4m).外形寸法は横1,572mm×縦923mm,重量は95kg(スタンドを除く).
このほか,3Dディスプレイの業界団体である「3Dコンソーシアム」のブースで,ニューサイト ジャパンが開発したレンチキュラ・レンズ方式の46型裸眼3Dディスプレイが展示されていた(写真4).視聴した印象では,視差バリア方式に比べると映像がややぼけているように感じた.
パララックス・バリア方式とレンチキュラ・レンズ方式はいずれも,3D映像がディスプレイよりも手前に飛び出して見える.ところが,人間の眼はディスプレイの画面に焦点を合わせようとするので,見ている3D映像に対する違和感が残る.この結果,3D映像を見続けていると頭痛や吐き気,めまいなどの症状が起きることがある.
これに対して液晶ディスプレイを2枚使うことで映像に立体感を持たせたのが,米国PureDepth社の立体ディスプレイ技術「MLD(Multi Layer Display)」である(写真5).日本法人のピュアデプスが12.1型のMLDを展示し,パソコン・ゲームの映像を立体表示させていた.
MLDで表示された立体映像は飛び出しているのではなく,奥行きのある映像という印象である.パララックス・バリア方式およびレンチキュラ・レンズ方式の3Dディスプレイに比べると,はるかに見やすかった.