眼鏡なしの立体視ディスプレイやフル・カラー電子ペーパなどに注目集まる ―― 第20回 ファインテック・ジャパン レポート

福田 昭

tag: 実装 電子回路

レポート 2010年4月16日

●フル・カラーの大画面電子ペーパ

 電子ペーパには,画像を切り換えるときにしか電力を消費しないという大きな特徴がある.液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどに比べると,はるかに消費電力が低い.第20回ファインテック・ジャパンでは,フル・カラー表示が可能な大画面の電子ペーパに来場者の注目が集まっていた.

 フル・カラー表示の手法には大別すると,特定の色に反射する材料を使う方法と,色フィルタ(カラー・フィルタ)を使う方法がある.前者はフル・カラー表示を可能にする材料の探索が課題であり,後者は表示画面が暗くなってしまうという課題がある.

 前者の代表が3種類のコレステリック液晶を使う方法だ.コレステリック液晶は特定の波長の光を反射する性質があり,しかも,その状態を保持してくれるという,フル・カラー電子ペーパに適した特性を備える.赤色(R)を反射する液晶層と緑色(G)を反射する液晶層,青色(B)を反射する液晶層を積層した電子ペーパを開発したのが富士通フロンテックである.8型のフル・カラー電子ペーパを搭載した携帯情報端末「FLEPia」と電子ペーパ・モジュールを展示していた(写真6).



写真6 富士通フロンテックの携帯情報端末「FLEPia」に採用された8型のフル・カラー電子ペーパ・モジュール

 

 「FLEPia」の電子ペーパは解像度が768ドット×1,024ドット,表示色数は最大で26万色,画面寸法は123.6mm×164.8mmである.端末の重量は360g.

  後者の事例には,ブリヂストンが開発したフル・カラー電子ペーパがある(写真7).同社は「電子粉流体」と呼ぶ流体の性質を備えた荷電微粒子を独自に開発して電子ペーパに応用しており,最大でA3判サイズのフル・カラー電子ペーパを試作した実績を有する.



写真7 ブリヂストンのタッチパネル一体型の13.1型電子情報閲覧用電子ペーパー端末

 

 本展示会ではペン・タブレット一体型の13.1型電子情報閲覧用電子ペーパ端末を展示し,実際の動作を来場者に示していた.なお,2010年春から関西アーバン銀行で,この電子ペーパ端末とKDDIの携帯電話システムを組み合わせた渉外支援システムを試験運用する予定である.

 13.1型電子情報閲覧用電子ペーパ端末の電子ペーパは解像度がカラー表示(4,096色)で800ドット×600ドット,モノクロ表示で1,600ドット×1,200ドット.端末はLinux OS 2.6を搭載しており,外部インターフェースとして無線LAN,Bluetooth,USB 2.0,マイクロフォン,イヤホン・ジャックなどを内蔵する.ペン・タブレットはスタイラス・ペンによる電磁誘導方式.端末の外形寸法は245mm×303mm×13mm.重量は約660gである. 

●タッチパネル技術が勢ぞろい

 タッチパネルは,半導体製造装置やボード組み立て装置,銀行ATM,カーナビ,ファミリ・レストランの注文端末,スマートホンなどの入力デバイスとして普及してきた.タッチパネルの実現にはいくつかの手法がある.タッチパネルの開発企業であるタッチパネル・システムズは,5種類のタッチパネル技術を利用した端末をそれぞれ展示し,来場者の関心を引き付けていた(写真8).


写真8 タッチパネル・システムズの超音波表面弾性波方式のタッチパネル
2点のタッチに対応するタイプ.

 

 タッチパネル・システムズが展示したのは,以下の五つの方式のタッチパネルである.

  1. 超音波表面弾性波方式
  2. 赤外線走査方式
  3. 音響波照合方式
  4. 5線式抵抗膜方式
  5. 静電容量方式

 超音波表面弾性波方式は,超音波発振子と超音波受信子,超音波反射素子をパネルに取り付けて超音波の反射強度を違いを検出する方式である.パネル表示画像の明るさが維持される,耐久性に優れる,といった特徴を有する.ただし水に弱く,屋外の使用には向かない.

 赤外線走査方式は,赤外線発光素子のアレイと赤外線受光素子のアレイを取り付けて赤外線を送受信し,途中で赤外線がさえぎられることを検知する方式である.パネル表示画像の明るさが維持される,屋外でも使える,耐久性に優れる,といった特徴を有する.ただし,分解能はそれほど高くはない.

 音響波照合方式は,タッチパネル・システムズが独自に開発した方式で,パネルに触れたときに発生する音波を4個所の受信素子で検出する.指やペン,手袋の指などのさまざまな入力デバイスに対応する,パネル表示画像の明るさが維持される,といった特徴を有する.ただし,パネルを長く押したときには,検出が困難になることがある(写真9).


写真9 タッチパネル・システムズの音響波照合方式のタッチパネル

 

 5線式抵抗膜方式は,従来の抵抗膜方式の改良版だ.抵抗膜方式はガラス上の導電膜とカバー・シートの導電膜の間で接触点の抵抗を検知する方式である.抵抗膜方式の特徴は,ほかの方式に比べるとコストが低いことである.最も普及しているのは4線式の抵抗膜方式だが,ほかの方式に比べて耐久性で劣るという弱点がある.この点を改良したのが5線式である.ただし抵抗膜方式には,パネル表示画像が暗くなるという共通の問題がある.

 静電容量方式は,ガラス上の導電膜にパネル四隅の電極から電界を与え,指先が導電膜上のフィルムに接触すると指先と導電膜の間で容量結合が発生して微弱電流が流れることから,指先の位置を検出する方式である.指先のタッチに対する感度が非常に高い(接触する直前の状態でも検出可能),耐久性に優れる,といった特徴を有する.ただし指先(あるいは指先に相当する導電体)にしか反応せず,ペン入力には適さない.

 このほか,赤外線発光ダイオード(赤外線LED)とCMOSイメージ・センサを組み合わせたタッチパネルをシロクが展示していた.通常の液晶ディスプレイに後付けでタッチパネル機能を追加できるという特徴がある.


写真10 シロクの24型液晶ディスプレイにタッチパネル機能を取り付けたところ

 

 このタッチパネルは,赤外線LEDとCMOSイメージ・センサ,反射板を組み合わせたスクリーンで構成されている.赤外線LEDの反射光をCMOSイメージ・センサで撮影し,指の位置を認識する.2本の指によるタッチやジェスチャなども認識できる(写真11).



写真11 シロクの赤外線LEDとCMOSイメージ・センサを組み合わせた素子
パネル上端の左右隅に取り付けてある.パネル右端の白いテープ状のものは赤外線の反射板

 

ふくだ・あきら
テクノロジ・ライタ/アナリスト
http://d.hatena.ne.jp/affiliate_with/ 

«  1  2
組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日