携帯電話に搭載されたメモリ液晶や曲がるプラズマ・ディスプレイなどを展示 ―― FPD International 2009レポート

北村 俊之

tag: 組み込み 電子回路

レポート 2009年10月30日

 2009年10月28日~30日の3日間,プラズマ・ディスプレイや液晶ディスプレイを始めとするフラットパネル・ディスプレイについての国際展示会「FPD International 2009」がパシフィコ横浜(神奈川県横浜市西区)にて開催された(写真1).今回で16回目となる本展示会では,液晶ディスプレイやプラズマ・ディスプレイ,有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ,電子ペーパ,およびその応用製品,製造装置,部品,材料などが一堂に会した.ディスプレイ産業は近年,「3Dテレビ」,「電子ブック」,「ディジタル・サイネージ」,「拡張現実(AR)」などの新しいアプリケーションが見え始めている.また,市場については中国が急成長しているという.

 今回は,「省エネ」,「省資源」などにかかわる電子部品などの展示会「Green Device 2009」も併催された.LEDや有機ELを使った照明装置や太陽電池,2次電池,蓄電用のキャパシタ,パワー半導体などの新製品が展示されていた. 


写真1 会場受付の様子


●10μWという少ない電力で駆動できるメモリ液晶を展示

 シャープは,電源を切っても画像を保持できる「メモリ液晶」を展示した(写真2).10μWという非常に少ない電力で駆動できる.

 同社のメモリ液晶には「散乱型液晶タイプ」と「HR-TFT(高画質TFT)タイプ」の2種類がある.散乱型液晶タイプは偏光版が不要で,高い反射率を実現している.環境照度が低くても視認可能という特徴がある.白黒パネルでは,散乱光下で50%の反射率を達成している.HR-TFTタイプは白黒のくっきり感を出すことができ,自然なスクロール表示が可能な高速書き換えを実現している.

 こうした技術は,同社の防水ケータイである「mirumo SoftBank 934SH」に搭載されている. 


写真2 シャープのメモリ液晶

 

●ハートや車の形をした液晶ディスプレイを2010年度中に量産

 NEC液晶テクノロジーは,ハートや車,葉っぱなど,任意の形状に切り出した液晶ディスプレイ(LCD)を展示した(写真3).製造できるサイズは5インチ型程度.ただし,任意の形状とはいっても,外形は緩やかな曲線である必要がある.表示するコンテンツは,ハートや車などの形状に合わせて作成するか,あるいは従来と同じく四角い形状で作成し,ドライバIC側で表示しない部分の座標を設定する方法がある.

 すでに顧客からの引き合いがあり,同社では2010年度中の量産を目標にしているという.


写真3 NEC液晶テクノロジーのハート型LCD

 

●曲がる145インチ型のプラズマ・ディスプレイを展示

 篠田プラズマは,PTA(Plasma Tube Array)技術を採用した曲がるプラズマ・ディスプレイ「SHiPLA」を展示した(写真4).サイズは145インチ型.ディジタル・サイネージなどの応用を想定している.

 PTAは,プラズマ・ディスプレイ・パネルと同様の発光原理を利用する.太さ1mmのプラズマ・チューブ内にRGBの各蛍光体を1色ずつ入れたものを並べることにより,大画面化を可能にした.

 液晶ディスプレイや従来のプラズマ・ディプレイと比べて,消費電力が小さい.例えば42インチ型パネルの消費電力は100W(従来のプラズマ・ディスプレイの約40%).画質についても,ドライバICなどを工夫することにより,従来のプラズマ・ディスプレイと同等の品位になるという.次世代品では,直径1mの円柱にPTAを巻きつけた状態で映像を表示することも検討している.



写真4 篠田プラズマの「SHiPLA」

 

●蛍光体材料の量子効率を高精度で計測

 システムエンジニアリングは,LEDやO-LEDなどの蛍光体材料の量子効率を,積分球を用いた装置で精度よく計測する測定機器「QEMS-2000-PL」を展示した(写真5).本測定機器は薄膜だけでなく,液状や粉末状の蛍光体も測定できる.

 測定範囲は300nm~850nmである.分光法には,フォトルミネッセンス(PL)法を採用する.米国Labsphere社のスペクトラン積分球を用いており,試料の発光パターンのばらつきの影響を受けにくいという.また,分光放射強度の標準電球を利用して,絶対値の校正が行える.



写真5 システムエンジニアリングの「QEMS-2000-PL」

 

●太陽電池の変換効率の分布を測定

 レーザーテックは,太陽電池の変換効率の分布を計測する卓上型測定器「MAPシリーズ(MP15)」を展示した(写真6).6インチ以下の太陽電池セルを測定できる.外形寸法は510mm×650mm×420mm,重量は40kgである.

 セル生産のさまざまな工程で,非破壊・非接触の検査が行える.短絡電流密度の効率の分布を測定し,変換効率の高いエリアや低いエリアを識別する.EL法では測定できない任意のバイアスのもとでの電流密度の分布の可視化,任意のエリアでのI-V特性の表示,太陽電池セルの変換効率の分布の可視化,効率のムラの可視化などに対応する.

 測定時間は1セルにつき1分以内で,スリット光を走査して電流を測定する.光源にはキセノン・ランプとAM1.5フィルタを使用しており,太陽光スペクトルを実現している. 


写真6 レーザーテックの「MAPシリーズ」

 

●膜厚を非接触で測定できる分光干渉式の膜厚測定機器を展示

 浜松ホトニクスは,分光干渉式の膜厚測定機器「Optical NanoGauge(C10178)シリーズ」を展示した(写真7).本装置は,分光干渉法を利用した非接触の膜厚測定機器である.薄膜サンプルに対して白色光を照射し,その表面と基板の界面からの反射スペクトルをカーブ・フィッティング法,または高速フーリエ変換(FFT)により解析する.

 検出器には,電子冷却型のマルチチャネル検出器(PMA)を採用している.マクロ計測用(C10178)とミクロ計測用(C10323)の2機種を用意する.リアルタイム計測やリモート通信機器による外部機器との通信,試料の光学定数測定などに対応する.


写真7 浜松ホトニクスの「Optical NanoGaugeシリーズ」


●太陽電池アレイの発電量を効率的に回収

 ナショナル セミコンダクター ジャパンは,アレイを構成する各太陽電池パネル出力とアレイ出力を最大化する「SolarMagicパワー・オプティマイザ」を展示した(写真8).本機器を利用することで,パネル間の出力に差がある場合でも,各パネルとアレイの出力を最大にできるという.個々の太陽電池パネルから取り出せる出力を監視し,制御することによって,ミスマッチによって失う出力の瞬間値の50%程度を回収できる.

 本機器は,太陽電池アレイの構成を維持したまま設置できるように設計されている.各パワー・オプティマイザにはユニバーサル・ブラケットが同梱されており,各太陽電池パネルの出力をパワー・オプティマイザに直列に(正極を正極に,負極を負極に)接続して使用する.そして,パワー・オプティマイザの出力は次の太陽電池パネルに接続されたパワー・オプティマイザに接続される,という構成をとる.


写真8 ナショナル セミコンダクターの「SolarMagicパワー・オプティマイザ」

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