QNX OSがx86からPowerPC,ARM Cortexへとサポートを拡大 ―― QNXジャパン テクノロジ イノベーション コンファンレンス レポート

福田 昭

tag: 組み込み 半導体

レポート 2009年11月 2日

 組み込み用32ビット・リアルタイムOS(RTOS)のベンダであるカナダのQNX Software Systems社は2009年10月27日に東京のカナダ大使館で,ユーザ向けの技術講演会「QNXジャパン テクノロジ イノベーション コンファンレンス」を開催した(写真1).今年は日本法人のQNXソフトウエアシステムズが設立されて10周年にあたり,それを記念してコンファレンスを開催した.


写真1 講演会場の様子

 

 始めにQNX Software Systems社でアジア太平洋地区営業統括部長をつとめるキム・クルーガー氏が基調講演を担当し,同社の概要を説明した(写真2).QNX社のソフトウェア製品は過去には,医療機器や産業用機器,FA(Factory Automation)機器などの開発に利用されてきた(図1).現在では自動車やネットワーク機器などの市場に注力している.さらに将来は,民生機器に向けて製品を販売することを検討しているという.


写真2 QNX Software Systems社のアジア太平洋地区営業統括部長をつとめるキム・クルーガー氏

 



図1 QNX社が注力する市場


●リアルタイムOSと開発ツール,ミドルウェアを継続的に更新

 続いて日本法人のQNXソフトウエアシステムズで技術マネージャをつとめる岡澤幸一氏が,「QNX 製品ロードマップ」と題して講演した(写真3).QNX社は大別すると,3種類のソフトウェア製品群を提供している.一つは組み込み用32ビット・リアルタイムOS「QNX Neutrino」,もう一つはソフトウェア開発環境「QNX Momentics」,最後がQNX Neutrinoで動くミドルウェア群「QNX Aviage」である(図2).


写真3 QNXソフトウエアシステムズで技術マネージャをつとめる岡澤幸一氏

 

 


図2 QNX社の製品群

 


 QNX NeutrinoとQNX Momenticsは,2009年の上半期末(2009年5月)にバージョン6.4.1をリリースした.2009年の下半期にはバージョン6.4.2をリリースする予定である(図3).バージョン6.4.1ではサポートするCPUにARMのCortex-A8とPowerPCのe500が加わった.バージョン6.4.2ではARMのCortex-A9をサポートする予定である.



図3 QNX社の製品ロードマップ

 


 またQNX社は,旧世代のリアルタイムOS製品である「QNX4」のサポートを継続している.ドライバ・ソフトウェアをアップデートしたCD-ROMを2009年中にリリースする(当初は2009年10月のリリース予定だったが,少し遅れているとの説明があった).

 ミドルウェア群の「QNX Aviage」については,QNX社は3種類のミドルウェアを提供している.グラフィカル・ユーザ・インタフェースの「HMIスイート」,マルチメディア処理ソフトウェアの「マルチメディア スイート」,音響処理ソフトウェアの「音響処理 スイート」である.

●グレード別の技術サポート

 続いてQNX Software Systems社でサポート&サービス部門のディレクターをつとめるジョン・ウォール氏が顧客サポートに関して「プロフェッショナル サービス:お客様を第一に,常にイノベーションを」と題して講演した(写真4).ウォール氏は始めに,組み込み機器のソフトウェア開発者が重視する項目と問題点として抱える項目を列挙した.


写真4 QNXSoftware Systems社でサポート&サービス部門のディレクタをつとめるジョン・ウォール氏

 


 重視する項目は,(1) 品質の向上,(2) 開発時間の短縮,(3) 顧客の要望に応えること,(4) 保守しやすい製品の構築,(5) 製品コストの低減である.問題点として抱える項目は,(1) 要求仕様の変更が続くこと,(2) 機能的な知識が不足していること,(3) 要求仕様が確定する前に納品日が決定してしまうこと,(4) 設計が複雑化していること,(5) 開発プロジェクトのためのツールが不足していること,である.

 これらの事実を踏まえて,QNX社は技術サポートをいくつかのグレードに分けて顧客に提供している.標準的なグレードとしてまず「スタンダード」がある.QNX社のソフトウェア製品を購入すると付属してくるサービスだ.内容はオンライン・サポート,電子メールによるサポート,製品の自動アップデートなどである.サポートの順番は先着順,サポート期間は開発者1名に付き12カ月.

 その上のグレードとして「ブロンズ」,「シルバー」,「ゴールド」のサービスが存在する.これらのサービスでは「スタンダード」に加えて専任の技術アカウント・マネージャが付いて優先度の高いサポートを提供する.

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