USB 3.0規格のFAQ(1) ―― 信号波形からSuperSpeed USBを理解しよう
Q.PCI ExpressとUSB3.0の違いは?
A.物理層については,ほとんど一緒.
表3にあるように,物理層を見るとPCI ExpressとUSB 3.0はほとんど一緒です.またこの表には示していませんが,トランスミッタ側でレシーバが接続されたことを検出するためのカラクリも一緒です.
USB 3.0がPCI Expressと異なる点は,以下の四つです.
1) 完全にクロック埋め込み式となっている
USB 3.0は,シリアル・インターフェースの標準的な技術であるクロック・リカバリ回路を受信側で使い,受信データからクロックを抽出します.これをクロック埋め込み式と呼びます.PCI Expressも受信側にクロック・リカバリ回路を備えていますが,PCI Expressは基本的に受信側も送信側も同一リファレンス・クロックで動作させます.これをコモン・クロックと呼びます(図10).
2) スリープ状態からの復帰,リセット,ポーリングなどのためのサイドバンド信号としてLFPS(Low Frequency Periodic Signal)と呼ばれる低周波バースト信号を使う
LFPSは,5Gbpsと同じ物理層の上を流す低周波バースト信号で,Serial ATAで使われているOOB(Out-of-Band)信号に類似しています.20ns~100nsの周期,40%~60%のデューティ比のパルスで構成されるバースト信号で,目的に応じてバースト長とバースト間隔は変わります(図11).図12にLFPSの一例であるPolling.LFPSの波形を示します.Polling.LFPSはレシーバ検出後に最初にトランスミッタが送信する信号です.
3) 伝送線路で劣化した信号を補償するためのイコライザを内蔵する
USB 3.0では,レシーバが受け取った信号をイコライザ回路で補正します.
4) テスト用のループバックBERT(Bit Error Rate Test)機能が受信側に追加されている
テスト用のループバックBERTとは,テスト用に入力されたパターンのエラー数を累積し,その結果を外部に吐き出す機能です.
なおAC結合は,PCI Expressと同じように送信側にキャパシタを伝送路に直列に挿入して実現します.これは,以下の三つの理由があるからです.
- トランスミッタがレシーバの接続を伝送路の時定数変化で検出できる
- コモン・モード電圧に非依存.その結果,半導体プロセスなどに非依存にできる
- 計測器を直接接続できる
一般に,高速伝送ではLVDS(Low Voltage Differential Signaling)やCML(Current Mode Logic)といったインターフェース規格が使われていますが,これらのインターフェースではDCバイアスがかかっているため,そのまま計測器を接続すると50Ω入力に定常的に電流が流れます.すなわち,ドライバに大きなDC負荷がかかり,波形が変わってしまう可能性があります.そのため,計測器の50Ω入力に接続する際にはDC成分をカットする必要があります.