電気自動車(EV)が実用化に向けてカウントダウン,充電インフラやバッテリの新提案が続々 ―― AT International 2009レポート
自動車エレクトロニクス技術に関する専門展示会「AT International 2009」が2009年7月15日~17日にパシフィコ横浜で開催された(写真1).AT Internationalは,昨年(2008年)初めて開催され,今年が第2回となる.第1回の出展者数は約180社だったが,第2回の今年は約150社とやや減少した.展示会の来場者数は,昨年が1万7,563名.今年は1万8,296名とわずかに増加した.
[写真1] AT International 2009の会場風景
●バッテリ交換ステーションと連携した低コストの電気自動車システム
ベタープレイス・ジャパンは,バッテリ交換式の電気自動車(EV:Electronic Vehicle )システムを開発し,その普及を推進している.独自開発のバッテリ交換ステーションをガソリン・スタンドのように国土の津々浦々に配置して電気自動車のインフラストラクチャを構築し,電気自動車を普及させることをねらっている.
このシステムの特徴はいくつかある.まず,電気自動車単体の価格が安くなる.バッテリを含まない価格で電気自動車を購入することになるからだ.現時点で最も性能の高いリチウム・イオン電池をバッテリに使うと,車種によってはコストの半分をバッテリが占めることすらある.バッテリが車両価格に含まれないとなると,電気自動車とガソリン自動車の価格差はかなり縮まる可能性がある.
電気自動車のユーザはバッテリを借りて利用料を支払う形になる.ベタープレイス(あるいはその代理店)と契約し,走行距離に応じて例えば毎月,バッテリの使用料をクレジット・カードや銀行振り込みなどで支払う.
このシステムによって,バッテリを充電する手間が不要になる.バッテリ交換ステーションに行けば,充電済みのバッテリとすぐに交換してくれる.なおベタープレイスではフィールドでの充電を否定しているわけではなく,駐車場やガレージなどに充電スポットを配置することも推進している.例えばイスラエルでは,すでに400個所を超える充電スポットが設置されているという.
AT International 2009でベタープレイス・ジャパンはバッテリ交換式電気自動車システムの構築に必要な要素技術をいくつか展示し,来場者の注目を集めていた.すなわち「電気自動車」,「交換式バッテリ」,「充電ステーションの模型」などである.
今回展示した電気自動車は,日産自動車の「デュリアス」を独自に改造した車両で,交換式バッテリとモータ(出力75kW)で走行する(写真2).日本の保安基準を満足しており,ナンバを取得している.すなわち公道を走行できる.展示ブースの説明員によると,フル充電での走行距離は約100kmだという.
[写真2] バッテリ交換式の電気自動車
日産自動車のSUV「デュアリス」を独自に改造した車両である.
交換式バッテリは米国A123Systems社製で,容量は17kWh,重量は250kgと性能はそれほど高くない(写真3).日本の自動車メーカや電池メーカが合弁で設立した電気自動車用バッテリ開発・製造企業であれば,もっと高性能のバッテリを開発できそうだ.
[写真3] 交換式のリチウム・イオン・バッテリ
車両の床下に取り付ける.
バッテリ交換ステーションは,バッテリを自動交換する仕組みを備える(写真4).交換式バッテリは自動車の底面に配置する.ステーションでは所定の位置に停止した電気自動車の床下からバッテリを抜き取り,地下のトンネルを経由してバッテリを回収する.そして新しいバッテリを地下トンネル経由で運び,電気自動車の床下に装着する.展示ブースの説明員によると,バッテリ交換の所要時間は4分ほどだという.ガソリン・スタンドでガソリンを補給するのに要する時間と変わらない,といえる.
[写真4] バッテリ交換ステーションの模型
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