電気自動車(EV)が実用化に向けてカウントダウン,充電インフラやバッテリの新提案が続々 ―― AT International 2009レポート

福田 昭

 ●小型電気自動車コーナは多様な車種でにぎわう

 電気自動車とその充電インフラストラクチャをまとめた「電気自動車& 充電インフラ・ゾーン」も来場者を集めていた.

 オートイーヴィジャパンは,2人乗りの小型電気自動車「ジラソーレ(Girasole)」を展示した.イタリアのStart Lab社が開発した電気自動車をベースに,日本市場向けに仕様を改良したモデルである(写真5).


[写真5] 2人乗りの小型電気自動車「ジラソーレ」

 

 ジラソーレの外形は全長2,345mm×全幅1,260mm×全高1,510mm,ホイール・ベースは1,725mm,車両総重量は560kg.最大出力8.5kWの交流誘導モータで後輪を駆動する.バッテリはリチウム・イオン2次電池で,容量は200Ah.家庭用の100V電源コンセントで充電できる.充電時間は7~8時間.満充電での走行距離は120km.最高速度は時速65km.車両本体価格は260万4,000円である.ハンドルは標準が左ハンドル車.オプションで右ハンドル車もある.

 オートイーヴィジャパンは独自開発の電気スクータ「スカルピーナ(Scarpina)」も展示した.スカルピーナには2輪モデルと3輪モデルがあり,AT International 2009の会場には2輪モデルが展示されていた(写真6).


[写真6] 電気スクータ「スカルピーナ」

走行音が静かすぎるため,わざとモータの音を外部に出すように工夫したという.

 

 2輪モデル「スカルピーナ・ドゥエ」はリチウム・イオン2次電池を搭載しており,容量20Ahのモデルは満充電で45km,容量24Ahのモデルは満充電で55kmを走行できる.充電時間は1~2時間.バッテリ容量が20Ahで,バッテリを取り外せるタイプの車両本体価格は36万7, 500円.

 トヨタ車体は,1人乗りの小型電気自動車「コムス(COMS)」を出品した(写真7).外見は自動車というよりも,4輪のスクータに近い.大きさはベーシック・タイプが全長1,935mm×全幅955mm×全高1,600mm,車両総重量は345kg.定格出力が0.29kWのDCブラシレス・モータ2個を後輪に1個ずつホイール・インで装着してある.バッテリは密閉型鉛2次電池で,容量は33Ah.満充電走行距離は,市街地走行で35km程度.充電時間は8時間程度.価格はベーシック・タイプが79万2, 750円.


[写真7] 1人乗りの小型電気自動車「コムス」

 ゼロスポーツは,スポーツ・カー・タイプの1人乗り小型電気自動車「エクシードRS」を展示していた(写真8).外形は,全長2,480mm×全幅1,295mm×全高970mm,自動車総重量は415kgである.バッテリはリチウム・イオン2次電池.満充電走行距離は約100km(時速30kmでの定地走行).充電時間は6~8時間.電動機は,定格出力が0.59kWのDCモータである.


[写真8] スポーツ・カー・タイプの1人乗り小型電気自動車「エクシードRS」

 

 電気自動車とハイブリッド車に向けた高速充電器の展示にも,来場者は高い関心を示していた.高岳製作所ハセテック豊田自動織機などが高速充電器の実物を展示していた(写真9).


[写真9] EV(電気自動車)用高速充電器の例
高岳製作所の「EHR1-50B3」.

 

●距離60cmの空間を非接触で電力伝送

 

 

 このほか,60cmと長い距離を非接触で給電するシステムの実験が来場者の注目を集めていた.昭和飛行機工業が開発した電磁誘導方式の給電システムである.展示ブースでは,板状の水平電極を60cmほど離して対向させ,下部電極から上部電極に電力を供給してみせた(写真10).上部電極に取り付けた電球を光らせて,電力が供給されていることを分かりやすく見せていた.このデモンストレーションで供給した電力は約1kWだという.


[写真10] 非接触給電システムのデモンストレーション

下部電極から上部電極に非接触で電力を供給する.デモンストレーションでは,上部電極に接続した電球を光らせて見せた.

 

 展示ブースの説明員によると,板状の電極は必ずしも対向させる必要はなく,板状の電極を垂直に向けても,電力は供給されるという.電力は高周波で送電しているが,電子レンジ(13.56MHz)よりもずっと低い周波数だとしている.送電効率は具体的には明らかにしていないが,20%といった値よりはずっと高いという.

 また展示ブースでは小さな円板状の電極を使い,水槽の内部に挿入した円板状電極との間で電力を供給できることも披露していた.水中を電磁波が通過し,水槽内部の円板状電極に接続した発光ダイオード(LED)を光らせる(写真11).水槽には金魚が泳いでおり,給電中に金魚が感電しないことを具体的に示していた.


[写真11] 非接触給電の実験
水槽内部の円板状電極に電力を非接触伝送し,発光ダイオードを光らせる.

 


ふくだ・あきら
テクニカルライター/アナリスト
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