デバイス古今東西(1) ―― FPGA業界に再び面白くて挑戦しがいのある時代がやって来た

Jack Chu

●10年の停滞期を経て,久しぶりにPLDベンチャが登場

 ここ数年,PLDのベンチャ企業が数社現れています.これらのベンチャは,二つのカテゴリに分けることができると思います.一つは,設計のしやすさと先進的なソフトウェアを特徴とする,システム・レベルの開発を目指したハイエンド製品のベンダです.もう一つは,他にない特徴を持つ量産向けのローエンド製品のベンダです.Achronix Semiconductor社やXMOS Semiconductor社,Tabula社は前者のタイプ,すなわち高性能,多機能,システム・レベルの開発を目的とする製品を開発しています.これに対して筆者らSiliconBlue Technologies社は後者のタイプに属し,携帯機器市場で利用できる低消費電力FPGAの開発に取り組んできました.

 SiliconBlue Technologies社は,全員のPLD/FPGA分野における経験年数を足し合わせると300年以上という,業界のベテラン・チームによって約3年前に設立されました.この10年の間,製品の量産出荷にこぎつけたFPGAベンチャはほとんど存在しませんでしたが,筆者らはこの停滞した市場に一石を投じました.FPGAが登場した初期の頃に成功したベンダと同じように,筆者らはパートナ企業との協業を重視しています.すなわちTSMCやAdvanced Silicon Engineering社,Magma Design Automation社の協力を得て,低消費電力FPGAを製品化しました.TSMCが保有する65nm LP(Low Power)プロセス,Advanced Silicon Engineering社が供給する極小サイズの最先端半導体パッケージ,Magma社が提供する強力なフロントエンド設計ツールの組み合わせが,FPGA事業を成功させる鍵になると筆者らは考えました.

 そして筆者らはつい最近,iCE65ファミリ3品種の量産出荷を開始すると発表しました.この製品の特徴は,「低消費電力」,「低コスト」,そして「セキュアなシングル・チップ・ソリューション」であることです.AC100V電源のコンセントから電力供給を受ける機器を開発する技術者と同じように,電池で駆動する機器の設計技術者もまた,高集積のFPGAを利用できるようになったのです(図1)

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図1 民生機器向けFPGAの分類
(それぞれの円の大きさは4ドル相当のロジック・セル数に対応)

 話を戻しましょう.技術革新により,高集積,高性能,そして高い処理能力を持つFPGAが製品化され,これらは強力なシステム・レベルの設計ツールと共に提供されることでしょう.それと同時に,低消費電力の携帯機器市場においても,非常に柔軟性の高い設計を可能とするFPGAが製品化されることでしょう.大手であってもベンチャであっても,FPGA/PLDベンダが成功するためには,焦点を絞り,市場の要求と動向に敏感で,かつ計画を完璧に遂行することが求められます.そしてそれを実行できたベンダこそが,来たるべき時代のFPGA/PLD業界をリードしていくことになるのです.

 PLD業界に,再び面白くて挑戦しがいのある時代がやって来ました.一方,電子機器の開発者にとっては,こうした革新的なベンダの新しい提案について,調査したり学んだりする良い機会がおとずれたのだと考えていただきたいと思います.

◆筆者プロフィール◆

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Jack Chu.SiliconBlue Technologies Japan代表.1982年からASICとPLDの業界で,アプリケーション・エンジニア,マーケティング,そして営業に従事.シリコンバレーと日本で活動する.FPGA/PLDについてのキャリアは20年以上.

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