デバイス古今東西(1) ―― FPGA業界に再び面白くて挑戦しがいのある時代がやって来た

Jack Chu

●2強の開発競争と低コスト製品の供給により市場が急成長

 1990年代半ばから今日まで,Xilinx社とAltera社が牽引するPLD業界は,飛躍的な成長を遂げました.この急成長にはいくつかの要因がありますが,一番の決め手となったのは,上記2強による最新のプロセス技術を採用した先端FPGAの開発競争です.Xilinx社はUMC(United Microelectronics Corp.)と,Altera社はTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.)と提携することで,競争力を強化しました.2強による競争は,特徴的な機能の追加や性能の向上,コストの改善など,主にASICの代替品として利用される最先端FPGAの開発に向けられました.また,ファウンドリ企業にとっても,FPGAベンダと協業することには意味がありました.FPGAが備える回路の繰り返し構造は,最新の標準CMOSプロセスの開発を進める上で理想的なデバイス・アーキテクチャだったのです.

 1990年代後半,Xilinx社はVirtexファミリを,Altera社はAPEXファミリ(後にStratixファミリへ移行)を発表しました. インターネットの普及に伴い,広帯域化が要求される通信分野とIP(Internet Protocol)ネットワーク分野において,ハイエンドFPGAには絶えず需要がありました.現在もまだ,両社は高性能,多機能で,IPコアを内蔵する最新FPGAの開発に向けて激しい競争を繰り広げています.

 FPGA業界が急成長したもう一つの要因は,大量生産品の市場に向けて,FPGAベンダが低コストの製品を供給したことにあります.低コストFPGAは,ハイエンドFPGA向けのプロセス技術が急速に進歩したことによって実現しました.今日,年間何百万個ものFPGAが民生機器向けに出荷されています.例えば,一般家庭のリビング・ルームに設置されるフラットな液晶テレビやプラズマ・テレビに一つ,もしくは複数の低コストFPGAが搭載されています.低コストFPGAの量産が可能になり,FPGAユーザは飛躍的に増加しました.今日,大量生産品向けのFPGAの市場規模は,FPGA市場全体の30%を超えています.

 市場の急成長とともに,PLDベンダは半導体業界の注目株となり,売り上げ,利益とも飛躍的に向上しました.Xilinx社とAltera社の収益ラインは10億ドルを超え,20億ドルに達する勢いでした. それゆえ,当時FPGA市場への参入を望むメーカやベンチャ企業が多数現れました.

●ハイエンドFPGAの開発が途方もなく困難に

 それにしても,この10年間,なぜXilinx社とAltera社の2強に対抗しうる新製品や企業が登場しなかったのでしょう.一つには,特許で保護された知的財産が多く,市場参入に対する障壁が非常に高かったことが挙げられます.おそらく,Xilinx社やAltera社との訴訟に対して,ベンチャ企業は逃げ腰になっていたのでしょう.もう一つの要因は,FPGAに対応したツール環境を作り出すために,ソフトウェア開発に多大な労力が必要になることです.多大な初期投資とシステム開発に必要な年月が,この市場への新規参入をはばんできました.現在でも多くのソフトウェア技術者がFPGAベンダのツール環境の開発や改善に携わっています.

 しかしここ4~5年の間に,この状況は変わり始めています.FPGAのいくつかの特許の有効期限が切れました.また,ITバブル崩壊の後遺症や製品発売時期の遅れにより,FPGA業界の成長に陰りが出てきています.とりわけ130nmプロセスから90nmプロセスへの移行では,製品の出荷スケジュールが遅延するという問題が生じ,FPGAベンダとファウンドリ・パートナにとって厳しい状況となりました.業界の変化に伴って,製品戦略や計画が見直されました.回路規模の増大や機能追加,性能の向上と共に,最先端の製品を開発することが難しくなっていきました.Altera社とXilinx社が供給するハイエンドFPGAは45nmまたは40nmのプロセスで製造されており,さらに複雑さが増しています.そして,FPGAがシステム・レベルの機能を実現するプラットホームとなった現在,その開発は途方もなく困難になりました.

 FPGA事業の観点で見ると,最新のプロセス技術を利用する製品の開発には,多大な投資やサポート費用,開発リソース,そして開発期間が必要になります.また開発サイクルが長くなり,そのための投資を回収するのに時間がかかります.高集積と低価格を実現した新しいFPGAは,ASICの代替品としてではなく, 既存の複数のFPGAを置き換える目的で採用されています.その結果,FPGAベンダの収益率は低下しています.

 さらに,次世代のネットワーク機器や通信機器をターゲットとするデバイスの主要サプライヤの地位をめぐって,Altera社とXilinx社は市場で激しく火花を散らしています.いくつかのケースでは,ハイエンドFPGAが低価格・量産向けのFPGAに取ってかわられているようです.こうした低価格・量産向けFPGAは,一昔前のハイエンドFPGAの性能や集積度を実現しています.システム・コストを抑えるため,ハイエンドFPGAのユーザは,まずローエンドの最新製品を評価し,自分たちの要件を満たしているかどうかを確認します.

 最近の傾向を見ると,Altera社とXilinx社は高集積,高性能で,アプリケーションに求められる機能をすべて備えるFPGAを実現することに力を入れています.一方,CPLDや量産向けのローエンドFPGAについては,両社から目立った発表がありません.

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日