マイクロ波によって距離や移動速度を検出する技術に注目が集まる ―― 2008 Microwave Workshops & Exhibition(MWE 2008)
マイクロ波を利用したシステムや製品,マイクロ波に関する部品,材料,測定機などを集めた展示会「2008 Microwave Workshops & Exhibition(MWE 2008)」が,2008年11月26日~28日の3日間,パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて開催された(写真1).会場では,マイクロ波を利用して対象物までの距離を測定する技術や,対象物の移動速度を測定する技術に注目が集まった.
[写真1] MWE 2008展示会(マイクロウェーブ展)会場入り口の様子
●定在波レーダにより対象物までの距離を0mから測定
財団法人 雑賀技術研究所は,マイクロ波帯の電波を使った距離測定装置「新型定在波レーダ SSRU-2401」を展示した(写真2).対象物に24GHzの電波を照射し,送信波と反射波の干渉によって生じる定在波を受信して信号周波数を解析する.これにより,対象物までの距離,対象物の相対速度,対象物の相対変位を検知できる.0mの至近距離から200mの遠距離まで,広い範囲の距離検出が可能.また,距離にかかわらず相対変位の分解能が0.01mと高い.一般的な測距レーダは,送信波と反射波の往復時間から距離を割り出す.そのため近距離では電波の往復時間が短くなり,最短測定距離は1~2mにとどまる.
本装置にはホーン・アンテナを搭載する機種と,パッチ・アンテナを搭載する機種がある.前者の指向角は30°~40°,検知距離は0~200m.後者の指向角は約80°,検知距離は0~70m.
同財団はあくまでも技術を提供する立場である.現在,本技術を利用した製品の企画・製造・販売を行うパートナを探している.評価キットを用意しており価格は9万円.
[写真2] 定在波レーダSSRU-2401を利用して天井までの距離を測定している様子
●対象物の移動速度をドップラー効果で検知
新日本無線は,移動体検知用のセンサ「ドップラーモジュール」を展示した(写真3).救急車などが近付くときにはサイレンの音が高く聞こえ,遠ざかる時には低く聞こえるドップラー効果を利用する.移動体の有り無しや移動速度を検知できる.
アンテナ一体型で中心周波数が10.525GHzの「NJR4718シリーズ」や,中心周波数が24.15GHzの「NJR4252/62シリーズ」などがある.本モジュールは,10GHz帯または24GHz帯の局部発振器,方向性結合器,送信アンテナ,受信アンテナ,ショットキー・バリア・ダイオードなどで構成される.
出力は数十~数百mVで,電圧が含む周波数成分そのものが対象物の速度となる.例えば,対象物からの信号が1kHzの成分を多く含めば,その速度は時速20kmと判断できる(図1).本モジュールの後段には,例えばアンプ,フィルタ,A-Dコンバータ,DSPなどを接続する.このフィルタの特性を調整することで時速100kmといった速度の検出も可能.検知距離については,DSPにおいてノイズ・キャンセルなどを施せば,10m程度まで延ばせるとする.
同社では,自動車や建物への侵入検知センサとしての利用を見込む.海外では,防犯を目的として,赤外線を利用して侵入者を検知するセンサと,ドップラー効果を利用したセンサを併用することが多いという.
[写真3] 対象物の移動速度を測定できるセンサの外観
防犯装置において高い信頼性を求められる機種では,赤外線センサと併用されることが多いという.
[図1] センサ・モジュールが出力する信号周波数と速度の関係