携帯電話プラットホームは技術者を幸せにしたのか?(3) ―― 統合プラットホームの登場

吉田 昌平

tag: 組み込み

コラム 2008年9月25日

●開発には携帯電話メーカやチップ・ベンダも参画

 統合プラットホーム構築の立役者は,というといろいろ考えられるが,日本の場合は特にキャリアであった.新しい機能とサービスを半年サイクルで携帯電話に搭載するために,ソフトウェアやハードウェアを統合プラットホームとして提供し,それを採用している携帯電話メーカの負担を軽減した.プラットホーム開発には携帯電話メーカやチップ・ベンダも参加しており,彼らも重要な役割を果たしたと言える.

●プラットホーム統合で何が起きたのか?

 携帯電話の機能は,2000年までは通話機能,メール/ブラウザといったインターネット機能,カメラ機能だけだったのが,その後の2~3年で格段に増えた.音楽再生,動画再生などのマルチメディア機能,「おサイフケータイ」などのICカード機能,ワンセグ機能,GPS機能などをほとんどの日本の携帯電話メーカが搭載できたのは,統合プラットホームのおかげであると言ってよいだろう.つまり,ドコモの900シリーズの進化はSymbian/Linuxの進化であり,MOAPの進化だった.これらのプラットホームが用意されていたため,携帯電話メーカは各種サービスを搭載した携帯電話をほとんどタイム・ラグなくリリースできたのである.

 携帯電話メーカはシェアを獲得するために,携帯電話の形状(折りたたみ式やスライド式など)をいっそう工夫するようになった.また,独自のサービスや機能を搭載することも多くなった.

 しかし,統合プラットホームやOSでは提供されない部分のソフトウェア開発量はまだまだ多く,その部分の開発コストは(特に後発携帯電話メーカにとって)大きな負担となっていた.これを解決するべく,携帯電話メーカ同士が市場シェアを争いながらもさまざまな形で開発協力や共同開発を進めていった.

●IPベンダの登場,品質確保,工数減少

 統合プラットホームはソフトウェアIPを提供するベンダにもチャンスを広げた.携帯電話のさまざまな機能に対してさまざまなソフトウェアやソリューションを提供する企業が増加した.品質の面についても,OS(Symbian,Linuxなど)やプラットホーム(MOAPなど),ソフトウェアIPなどのそれぞれで一定の品質が確保されていた.

 これらの結果として,携帯電話メーカの端末開発作業は,ソフトウェア開発とその検証の工数が減少し,年間多機種のリリースが可能な体勢になった.それが今の携帯電話開発である.このように,開発する機能やその開発規模を可能にしたという点においては,統合プラットホームは技術者の負担を軽減したと言える.

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