初めての技術系コミュニティ活動(1) ―― 社外に同志を見つけよう
●発信するとより多くの情報が返ってくる
コミュニティ活動を始めて2年間は,分科会やセッションに参加するなどといった,情報をもらう形で活動していました.もともと筆者は,自身が携わる組み込みソフトウェア開発におけるTDD活用のヒントを得ようと思って分科会に参加していたので,個人的にC言語におけるTDD活用の手法を検討していました.その検討結果を文章にまとめ,TDD書籍の著者の方や分科会の主催の方に見ていただきました.無謀にも,eXtreme Programmingの提唱者であるKent Beck氏や,C言語のテスト・フレームワーク「CUnit」の開発者の方々にも英訳して送付し,意見をいただいたりもしました.
いろいろな方から肯定的な意見をいただき,またXPJUG関西のスタッフの方からは「組み込みTDD」の分科会を立ち上げないかという打診をいただきました.今まで,コミュニティ活動で情報をもらっていた立場でしたが,自分から情報を発信したいという思いがあり,分科会活動を立ち上げることにしました.分科会活動の立ち上げと同時期に,XPJUG関西のスタッフに加わりました.
分科会を立ち上げて活動することで,「組み込みTDD」について情報を発信する機会に多く恵まれました.筆者の初めての執筆経験となったDesign Wave Magazineの記事「テスト駆動開発で組み込みソフトウェアの品質を上げる」も,分科会活動の中から生まれました.
情報を発信していく中で気付いたのは,情報を発信することによって,人とのつながりや新たな情報発信の機会がどんどん増えていく,ということです.私は「組み込みTDD」についての情報を発信していたので,知り合いになった人が「組み込みTDD」に興味がある人に出会ったとき,「その話なら細谷さんという人がいるよ」と筆者を紹介してくれることが多くなり,その流れで発表や執筆の機会が増えていったのです.その結果,自然と「組み込みTDD」に関心のある多くの方と知り合いになることができ,結果として,自分が発信した情報以上の情報を得ることができました.
●XPJUG関西の代表に
XPJUG関西のスタッフとして2年間活動を行った2007年春,筆者のコミュニティ活動における一つの転機が訪れます.当時XPJUG関西の代表をされていた方が事情により代表から退くことになったのです.
筆者は,XPJUG関西の活動の中で,数えきれない出会いや気づきをもらってきたので,今度は自分からXPJUG関西の活動を盛り上げていきたいと思い,代表に立候補しました.こうして今は,XPJUG関西の代表を務めさせていただいています.
代表として活動するようになってからは,「より多くの人に,自分と同じようにコミュニティ活動を通じて成長を体験してほしい」と思うようになりました.もちろん自分自身も,活発なコミュニティ活動を通じて多くの方と情報や思いを共有し,成長したいと考えています.
●今からコミュニティ活動を始める方々へ
いかがだったでしょうか? 筆者がコミュニティ活動を始めてから現在に至るまでの経緯をかけ足で紹介させていただきました.筆者もコミュニティ活動を始める第一歩はためらいました.活動を始めてからも,初めての発表,執筆の機会,スタッフや代表への立候補のときなど,ためらいながらも勇気を出して一歩ずつ前に進んできました.そして,いつも「ちょっとした勇気」を出すことで,大きな成長の機会を得ることができたと思います.
皆さんも「ちょっとした勇気」を持って,興味のある分野のコミュニティ活動を始めてみてはいかがでしょうか?
コミュニティ活動の場で皆さんにお会いできる日を楽しみにしています.
◆筆者プロフィール◆
細谷 泰夫(ほそたに・やすお).XPJUG関西代表として,関西でアジャイル開発を広めていく活動を行っている.特に,組み込み業界にアジャイル開発を浸透させたいと考えており,組み込み開発でのテスト駆動開発手法について執筆活動などを行っている.現在は,アジャイル開発における品質保証について研究中.