PHS経由でネットに接続できるEthernetアダプタのファームウェアをハック・後編 ―― 画像付きメールを利用した遠隔監視システムの製作事例
● 今回の実験に使用するハードウェアについて
前編と中編ではOSX-1のファームウェアを書き換えることで,さまざまな事例を解説してきました.ファームウェアをいくら書き換えてもリカバリ処理を行えば完全に元に戻るので,思い切ったハックが行えました.一方今回は,JPEGカメラをハードウェア的に接続する必要があります.もちろんOSX-1をケースから取り出して内部基板に4本の信号線を接続すればOSX-1でもカメラ画像を扱えるようになります.ただし,これだと当然メーカの保証適用外です.そこで今回は,OSX-1の内部に採用されている「OS-1」という1チップ・サーバを別に用意して,JPEGカメラを取り付けてみます(写真3).OSX-1には場所を選ばずW-SIMでインターネットに接続するという役目を担当してもらい,OS-1にはカメラ画像を自動返信するという役目を担当してもらうわけです(図1).
写真3 OSX-1とOS-1の組み合わせ
OSX-1(写真右)がインターネットに接続する役目を,OS-1(写真左の上に載っているサーバ・モジュール)がカメラのライブ画像をメールで返信する役目を果たす.この2台を連携させて,場所を選ばないネット・カメラを実現している.写真左下のボードは,OS-1専用のペリフェラル・ボード「OSIO-1」.
図1 システム構成図
JPEGカメラ・モジュール「C328-7640」で撮影した画像を1チップ・サーバ「OS-1」がメールに添付して送信する.Ethernetアダプタ「OSX-1」には,PHS無線モジュール「W-SIM」でインターネットに接続するという役目を担当してもらう.
家庭内などでインターネット接続環境が既に利用可能であれば,まずはOS-1とJPEGカメラを利用して自動返信システムを単体でテストしてみてください.なお,今回構築したシステムのソース・コードはすべてサイレントシステムのWebサイト上で公開しています.ほかのシステムに移植する際にも,参考になると思います.
● 1チップ・サーバにカメラを取り付ける
それでは,OS-1にJPEGカメラを取り付けましょう.OS-1のボードに直接カメラを取り付けることもできますが,将来的にはメールによるリレーの制御にも対応できるように,OS-1専用のペリフェラル・ボード「OSIO-1」も利用しました.JPEGカメラはOSIO-1のフリー領域に取り付けます(写真4).取り付けるといっても,JPEGカメラの電源とグラウンドとシリアルの入力および出力を,OSIO-1の所定のピンにはんだ付けするだけです(写真5).OSIO-1は,このように各種のデバイスを取り付けてOS-1を使って制御するための実験用のボードです.
写真4 OSIO-1にJPEGカメラを接続した例
OSIO-1に実装されているリレーやLEDもメールから制御できる.
写真5 OSIO-1の裏面の接続
J201に黒(GND)を,J202に赤(Vcc)を,J214に黄(Tx)を,J215に緑(Rx)を接続している.
OSIO-1には四つの押しボタン・スイッチと四つのLED,二つのリレーが実装されています.特にリレーは携帯電話からメールを利用してON/OFFを制御できるので,アイデア次第で面白い使い方ができそうです.