人工呼吸器に見るセーフティ・クリティカル・システム設計 ――2重3重のバックアップで生命を守る
ここでは,生命維持装置の一つである人工呼吸器の設計について解説する.メイン・システムが機能しなければサブシステムに切り替え,ポンプが動作しなければ電磁弁で代替するなど,非常時にも機能を果たすことのできるシステムを開発した.システムの機能とユーザの安全をどのように確保するのかという考え方は,医療機器以外の分野にも応用できるだろう. (編集部)
人工呼吸器は生命維持装置の一つです.水難事故などで呼吸が止まった人を助けるのに,口から息を吹き込む方法がありますが,人工呼吸器はそれを病室などで行う装置です.肺機能が低下した患者のほか,全身麻酔からの覚醒過程でも用いられます.
人工呼吸器の基本原理は空気ポンプです.最も簡単な方法では,ふいごやバッグを手で操作して空気を送り込みます.この際,熟練した医師なら自然に行っていることですが,送り込む空気の流量や周期は患者の体格に適したものでなければなりませんし,少しでも自発呼吸がある場合は,それを補助するように呼吸と同じタイミングで空気を送り込まなければなりません(補助呼吸).