人工呼吸器に見るセーフティ・クリティカル・システム設計 ――2重3重のバックアップで生命を守る
● 呼吸だけは止めてはならない!
人工呼吸器と患者を制御系として考えると,人工呼吸器の制御はパラメータの多様さ,患者の様態変化という外乱要素が多いことなどで,第1級の複雑さを持っていると言えるでしょう.コンピュータの進歩とともに,装備も年々複雑になってきています.
しかし,絶対におろそかにしてはいけないことがあります.それはシステムが停止しないこと,暴走しないことです.生命を預かる以上当然のことですが,高機能と両立させるには,しっかりとしたコンセプトを持ってシステムの構築にかからねばなりません.
以下,1980年代初頭から1990年代前半にかけて開発され,病院や在宅医療の現場で使われた複数機種の人工呼吸器について解説します.ただし「人工呼吸器はすべてこの通りになっていて,このように設計すべきである」と主張しているのではありません.本稿における信頼性や安全性に関する考え方が参考となれば幸いです.