QuickSilver,動的リコンフィギャラブルPLD技術で次世代携帯電話市場に挑む

組み込みネット編集部

tag: 半導体

インタビュー 2001年8月10日

 半導体技術の研究・開発を行う米国QuickSilver社は,動的リコンフィギャラブルPLD技術のパートナ企業を探すため,日本法人のクイックシルバー・テクノロジー・ジャパンを設立した.QuickSilver社の戦略,動的リコンフィギャラブル技術の概要,今後の動向などについて,クイックシルバー・テクノロジー・ジャパンの代表取締役である河南公宣氏と常任顧問の山本嘉一氏に話を聞いた.

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クイックシルバー・テクノロジー・ジャパン代表取締役の河南公宣氏(左)と常任顧問の山本嘉一氏(右)

―― QuickSilver社の概要を教えてください

河南氏 CEO兼社長のJaime Cummins氏とJohn Watson氏が,1998年に米国カリフォルニア州San Joseに半導体の設計/製造/販売を行う会社を設立しました.その後,動的リコンフィギャラブルPLDを実現するAdaptive Computing Machine(ACM)と呼ぶ回路を開発しました.

 2001年8月,ACM技術を採用した製品を早く発売できるように,IPコアの開発,ACM技術と組み合わせて使用するOSの開発,動的コンフィギャラブルPLDで実現する回路を開発するためのツールの開発,アプリケーション・ソフトウェアの開発をそれぞれ専門に行う,四つの会社に分割しました.

―― QuickSilver社の戦略として,日本法人の位置付けは?

河南氏 日本は,現在,モバイル通信システム分野では世界的なリーダであると思います.またWCDMA(wideband code division multiple access)など,いわゆる3G(第3世代)携帯端末のテスト市場として捉えています.

 米国本社は,業務ごとに四つに分割されていますが,日本法人は,四種類の業務をすべてサポートしていきます.

 市場からは,さらなる小型化,軽量化,高機能化,低コストの要求が出てきています.マイクロプロセッサ,DSP,FPGA,ASICなど,これまで携帯電話で使われてきた技術では,第3世代や第4世代に対応していくことは,難しくなるでしょう.ACM技術で提携できる企業が多いのではないかと考えています.

―― Adaptive Computing Machine(ACM)技術の概要を教えてください

山本氏 ACMとは,ダイナミック・リコンフィギャラブルPLDの技術です.ACM技術を利用するチップには,ダイナミック・リコンフィギャラブルに対応したPLDコア,PLDのプログラム・データを圧縮して格納するキャッシュ・メモリ,動的なプログラミングを制御するコントローラ回路が必要です.また,そのチップがRISCプロセッサ・コアを搭載していれば,ハードウェアとソフトウェアの両方に対してプログラマブルになります.

―― ACM技術の用途として,どのようなものを考えていますか?

河南氏 パソコン系の分野も視野にいれていますが,おもに通信技術,ワイヤレス通信,ディジタル・カメラ,セットトップ・ボックス,カー・ナビゲーションの市場をねらっています.

―― 日本での需要はどの程度あると考えていますか?

河南氏 日本市場というより,日本企業のパートナを探すことに重点をおいています.ディジタル市場は,2005年の予測で200兆円と言われています.われわれは,そのうちの20~30%の製品にACM技術を利用してもらえると考えています.

―― 国内でACM技術を普及させるために,今後,どのような活動を行っていく予定ですか?

河南氏 パートナシップの確立に尽きます.パートナ企業が現在確保している市場を強化できるように,相互協力のマーケティング活動を行うのが目標です.パートナ企業を得るために,ベンチマーク結果の説明やプレゼンテーションを行っていきます.

 すでに,京セラなどの日本企業が米国本社に対して資本参加を行っています.また,2001年秋には,横須賀リサーチ・パークにラボ(研究所)を開設します.技術者のトレーニングやデモンストレーションなども行っていきます.

―― LSIメーカからACM技術を実装した標準LSIを供給する予定は?

河南氏 LSIメーカと提携する予定はありません.ACM技術のLSI化は,TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)に委託したり,パートナ企業との合弁会社を設立して,そこで行う予定です.

―― PLDコア部の書き込みはどのように行うのか?

山本氏 C/C++を使っているソフトウェア技術者が設計できるように,C/C++のサブセットからなる記述言語を用意しています.当社では,これを「Q言語」と呼んでいます.C/C++は,HDLより抽象度の高い設計に向いています.しかし,C/C++はシーケンシャルな記述はできますが,空間的な記述ができません.このため,Q言語には,空間的な情報を記述できる機能が追加されています.またQ言語で記述したものを動的リコンフィギャラブルPLDにマッピングするツールも用意しています.

 ACM向けにマッピングしたデータを外部メモリ(フラッシュ・メモリなど)に書き込み,ACMデバイスの内部キャッシュ・メモリに転送します.転送が完了すると,コントローラ回路がPLDコア部へデータを展開していきます.

 なお,Q言語の教育サポートを行っていきます.またベンチマーク結果も含めて技術ドキュメントを提供していく予定です.

―― ACM技術を利用した具体的な製品があれば教えてください.

河南氏 現在,評価ツールを作成するためのエンジニアリング・サンプル(ES)をTSMCで製造中です.2001年9月には,顧客が評価するためのエンジニアリング・サンプルを提供できるでしょう.エンジニアリング・サンプルを搭載した評価ボードを作成し,設計ツールやテスト環境などを整備していく予定です.順調に行けば,2001年末には,評価ボードなどの開発環境も出荷できると思います.2002年6月には,ACM技術を採用した最初の製品が出てくると考えています.


組み込みネット編集部 猪之鼻 博隆


・クイックシルバー・テクノロジー・ジャパンのホームぺージ
http://www.quicksilvertech.co.jp/
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