テクノスコープに聞く高速度カメラの検査画像を非圧縮で長時間記録! ―― ワークステーションの活用で交通インフラ調査が進む

宮崎 仁

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キャッチアップ 2014年4月24日

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1986年の創業以来,さまざまな情報・通信機器の受託開発と,他にないユニークな自社製品の企画開発で知られる(株)テクノスコープ.顧客からの難しい要望に応えることで磨かれてきた回路設計からソフトウェア開発までの技術力には特に定評があります.最近では,独自の超高速ストレージ技術とインテル® Xeon® プロセッサー搭載の日本HP Zシリーズ ワークステーションを組み合わせた高速度カメラ長時間記録装置へのニーズが高まっているそうです.営業部 部長の土屋 公司氏にお話をうかがいました.




(株)テクノスコープ 営業部 部長の土屋 公司氏


●回路設計,ソフト開発の両面に強みを発揮

 

―― テクノスコープが得意とする技術を教えてください

土屋氏:創業して最初に取り組んだのが,当時世界の最先端だったLaserWriterと互換のプリンタを作る仕事でした.国内の大手プリンタ・メーカと協業して,Macintoshとのインターフェースを作りました.その後もいろいろな開発を手がけましたが,パソコン用のボード,モジュールやドライバ・ソフトの開発,それらを組み合わせたシステム開発が一番得意ですね.

 最近はWindows PC ベースの開発が中心ですが,その中でも製品のライフサイクルが長く,インテル® Xeon® プロセッサーの高性能を活用できる日本HPのワークステーションは一番使いやすいですね.

 

―― 得意なアプリケーションはどのような分野ですか

土屋氏:最初はMacintosh関係やプリンタ関係のアプリケーションが多かったですが,最近はあらゆる分野にわたっています.OSではWindowsやMac OS Xはもちろん,ITRONや組込みLinuxも経験豊富です.早くからIEEE1394を手がけるなど高速インターフェースは得意ですし,カメラなど画像関係も得意としています.自社製品もいろいろあります(写真1).

 

写真1 テクノスコープの自社製品(Zenkuman)の例


 

―― Zenkumanというのがブランド名ですか.なんだかドイツのメーカみたいですね

土屋氏:実は,Zenkumanは日本語なんですよ.当社の社長が新潟の善久というところの出身で,「善久の男」という意味で名づけたと聞いています(笑).

 

―― すべて社内で開発しているのですか

土屋氏:製造はアウトソーシングしていますが,開発はすべて社内です.試作から量産まで良い外注先をもっているので,受託開発のお客様もワンストップで当社を利用していただけます.本社はさいたま市ですが,開発は新潟の技術研究所で行っています.新潟は新幹線を使って短時間で往復できますし,長岡技術科学大など技術系の学生も多く,優秀な人材が集まってきます.地元志向の技術者が永く勤め,当社の大きな強みになっていますね.

 

●画像記録用の超高速テラバイト・ストレージ

 

―― カメラなど画像関係では,どのような製品がありますか

土屋氏:最近引合いが多いのは,高速度カメラ長時間記録装置のFCR-46 です.これは,2,000フレーム/s という高速度カメラの画像を取り込み,圧縮せずに,約1時間記録できるシステムです.HP Z820 Workstationと,当社の大容量高速メモリーボードMIO-1910/1920を組み合わせて構成しています(写真2).

 

写真2 高速度カメラ長時間記録装置FCR-46


 512×512ピクセルで2,000フレーム/s のカラー画像を取り込むには,1,500M バイト/s で記録する媒体が必要です.ハードディスクは100Mバイト/s 程度で,とても間に合いません.多数の媒体を並列動作させる方法で高速化しました.

 コストや扱いやすさを考慮して,MIO-1910/1920ではSDカードを64 枚並列化しています(図1).SDカードは今後も高速/ 大容量化が予定されており,さらに高速/大容量のボードの開発をすすめていきます.

 

図1 MIO-1910/1920のインターフェース速度(数値はすべて理論値)


 

 

―― そのような画像記録装置は,どこで使われますか

土屋氏:いろいろな検査の用途が多いと思います.たとえば,車や電車にカメラと記録装置を積んで,走行しながらトンネル内部の状態を非破壊で検査したいという要望がありました.交通インフラ関係のニーズはとても増えていますね.検査のときはゆっくり走るので,長いトンネルだと1時間ぐらいかかる.それを1回で取り込みたいという用途です.往復分を1回で取り込めるように,記録時間を2 倍に伸ばしてほしいという要望もあるので,今後対応できたらと考えています.

 あと,高解像度化の要望も多くて,現在はフルHD(1,920× 1,080ピクセル)で30 フレーム/s 対応のものも作っています.もちろん,フルHDで高速度カメラという要望もあるのですが,すぐには難しいですね.将来は4K,8Kなどの要望も出てくると思うので,開発のニーズが途切れることはないでしょうね.

 

―― 高速,大容量の他に,技術的なポイントや課題は

土屋氏:検査用途では,複数のカメラで同時に,かつ同期した画像を取り込みたいという要望があります.FCR-46 はカメラ2 台対応ですが,10 台,20 台を同期させる技術ももっています.

 また,記録時よりも読出しを高速化してほしいという要望もあります.交通関係のアプリケーションでは,現場で画像を記録して自社に戻り,データ・センタの大容量ストレージにデータをダウンロードして,すぐに次の現場に行きます.転送の高速化には新しい技術の開発が必要で,大きな課題と考えます.

 このような仕事にはインテルCPU とWindowsは必須のプラットフォームで,ARMとLinuxでは転送性能が不足しますね.

 

―― カメラ側の性能やSD 以外の記録媒体はどうですか

土屋氏:カメラ側は,解像度にしてもインターフェースにしても進歩が速いと感じます.FCR-46ではIEEE1394b と光インターフェースを使っていますが,別のボードではGigE にも対応しています.

 SSDの並列化もすでに技術をもっています.フラッシュ・ストレージは急速に進歩しているので期待が大きいです.

 

―― PC,ワークステーションについてはどうですか.

土屋氏:受託開発,自社製品を通じていろいろなPC,ワークステーションを使っていますが,日本HPのワークステーションはとにかく堅牢で丈夫です.Z800,Z820と使っていますが,社内の技術者からは,電源容量が大きく,SATA/SAS等ストレージの拡張性が高い点が評価されています.またお客様に出荷したシステムでトラブルを聞いたことがありません.基本的な構造,配置が使いやすく,モデルチェンジで変わらない点も好評です.筐体自体は小さくはないですが,取っ手がついていて取り回しが良いのも特長ですね.現地に持ち運んで使ったり,車に載せて使うお客様が
多いので,丈夫で扱いやすいことはとても重要です.


みやざき・ひとし
(有)宮崎技術研究所

 

 

 この記事に関するお問い合わせ先


 

(株)テクノスコープ
http://www.technoscope.co.jp/


日本ヒューレット・パッカード(株) 
http://www.hp.com/jp/ws_oem/
Intel, インテル,Intel ロゴ,Intel Inside,Intel Inside ロゴ,Intel Atom,Intel Atom Inside,Intel Core,Core Inside,Intel vPro,vPro Inside,Celeron,Celeron Inside,Itanium,Itanium Inside,Pentium,Pentium Inside,Xeon,Xeon Phi,Xeon Inside,Ultrabook は,アメリカ合衆国および/またはその他の国における Intel Corporation の商標です.

 

 

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