アバールデータに聞くHP Workstationと最適化された検査装置の実力 ―― 検査データの巨大化時代,システムの最適な組み合わせをセットで提案
組み込みキャッチアップ |
高速,高性能と高信頼性を追求した画像入力ボード,A/D変換ボード,光通信ボードなどの製品で定評ある株式会社アバールデータ.最近では,インテル® Xeon® プロセッサー搭載の高性能ワークステーションを活用したシステム製品の開発を進めているそうです.今回は,同社 第二開発部 課長の山本 弘樹氏,営業部2グループ ESチーム シニアチーフの岡本 俊氏のお二人にお話をうかがいました.
●処理能力はどこで差が? 組み合わせの大事さを痛感
―― アバールデータが最近力を入れていることは?
山本氏:当社はこれまで主に組み込み機器メーカやシステム・ベンダをお客様として,システム構成要素としてのボード,装置,ソフトウェアなどを個々に供給してきました.最近ではそれらの構成要素はとても高性能ですが,組み合わせ方によっては十分な性能を引出せないこともあります.また,お客様の要望も高度かつ多様になり,システム的な製品を求められることも多くなっています.そこで,PCやワークステーションを中心に,当社が最適な組み合わせで構築したシステムを製品化していきたいと考えています.
―― 組み込みシステム製品を具体的に教えてください
山本氏:最近,要望が急速に高まっている大容量高速ストレージ・システムや,当社が最も得意とする画像検査分野でカラー光切断三次元形状計測システムの開発を進めています.どちらも昨年12 月に開催された国際画像機器展で展示を行い,好評をいただきました.
―― 大容量高速ストレージ・システムを詳しく教えてください
山本氏:日本HP のワークステーションとRAIDカード,SSD,当社の各種ボードを組み合わせて,ボードからのデータを記録・蓄積していくシステムです(図1).当社でRAIDの性能評価を行ったところ,512Kランダム・ライトにおいて,SSD 1 台で502.2Mバイト/s,RAID0 2 台で959.3Mバイト/s,RAID0 4 台で1600Mバイト/s,RAID0 6台で2205Mバイト/sと良好な成績が得られました.
実使用時のオーバヘッドを考慮しても,当社A/D変換ボード APX-5040やグラバーボード APX-3326Aの1ch(転送速度800Mバイト/s)ならRAID0 4台で,APX-5040の2ch同時転送やAPX-3664+高速ラインカメラ(転送速度1600Mバイト/s)でもRAID0 6 台で十分にカバーできます(図2)(写真1).
実は,当初は他の組み合わせで評価していたのですが十分な速度が出なかったので,日本HP の協力をいただいてワークステーションとワークステーションのオプションRAIDカードの組合せで最適化したところ,これだけの性能が出せるようになりました.組み合わせが大事だということをあらためて痛感しましたね.
―― 大容量高速ストレージは,どんな用途に使われますか
岡本氏:まず第一に,画像検査装置のお客様のニーズが大きく変化してきています.以前は,良/不良の判定を高速かつ精確に行うことが画像検査の目的であり,大量の画像データの記録はあまり要求されませんでした.ところが,最近では良/ 不良を問わずすべての画像を記録したいというお客様,検査画像だけでなく製造段階の各工程の画像を記録したいというお客様が増えています.
―― 画像検査以外の分野では,どうですか
岡本氏:車載分野で,高解像度カメラの画像を連続して記録し続けたいという要望が急増しています.日本HPのワークステーションを何台も車に載せたいというお客様もいますよ.これは自動走行システムなどに関係している可能性があると考えております.その他の分野でも,ビッグデータの蓄積に対する要望が急増しています.たとえば,橋梁やトンネルの非破壊検査データを収集・記録したいとか,画像データ以外でも,周囲環境の電磁波データなどのアナログ・データを収集・記録したいなどの要望があります.
●独自開発のカラー光切断三次元形状計測
―― カラー光切断三次元形状計測というのは?
岡本氏:当社で開発を進めている先進の画像検査/マシンビジョン技術の一つです.立体形状をスキャンして得られる三次元形状(デプスマップ)と,カメラから得られるカラーのテクスチャ情報を,1 台のカメラで同時に取り込んで処理します.3Dグラフィックスで,情報をポリゴンとテクスチャに分けて扱うのと,ちょっと似ていますね.画像検査では製品のキズ,欠けや寸法など形状の検査と,汚れや色むらなど視覚上の検査を行いますが,それらを同時に,かつ高い精度で検査できます(図3).
―― 立体形状のスキャンには,どんな装置を用いますか
岡本氏:光切断法というのは画像計測の分野では古くから用いられてきた技術ですが,従来はレーザ光源を用いたスリット光を照射して,モノクロ・カメラで撮影していました.そのため,カラー・テクスチャは別のカメラで撮影して合成することが必要でした.当社の方式は,独自開発の検出アルゴリズムによって,市販の白色LED スリット光照明と一般的なVGAカラー・カメラを用いて三次元形状とカラー・テクスチャを同時に取得できます(特許出願中).1台の安価なカメラで計測できるのはシステムのコスト,サイズを削減できますし,デプスマップとテクスチャの位置ずれが生じません.お客様が使い慣れたカメラをそのまま使えるのも大きな利点だと思います.
―― その実現には,ソフトウェア処理が重要なポイントですね
岡本氏:そうですね.このような高度なアルゴリズムが実装可能になったのは,最近のPC,ワークステーションの処理能力の向上のおかげです.このカラー光切断法も,日本HPのワークステーションと組み合わせて構築した三次元形状計測システムとして製品化したいと考えています.
みやざき・ひとし
(有)宮崎技術研究所
この記事に関するお問い合わせ先
(株)アバールデータ |
日本ヒューレット・パッカード(株) http://www.hp.com/jp/ws_oem/ | |