アバールデータに聞くHP Workstationと高速I/Oボード ―― 常に高速を追及,国産品へのこだわり,そして信頼
組み込みキャッチアップ |
PCやワークステーションで組み込みシステムを構築するとき,高速カメラの画像データやセンサ信号を取り込む画像入力ボード,A/D変換ボードや,コンピュータ間を高速に接続する光通信ボードなど,さまざまなI/Oボードが使われます.ここでは,多数の組み込みボード製品と高い技術力で定評のある(株)アバールデータ 営業部2グループ ESチーム シニアチーフの岡本 俊氏にお話をうかがいました.
●アバールデータのこだわりは高速,国産,信頼
―― アバールデータの得意分野を教えてください.
岡本氏:当社は1985年にVMEバス,1997年にCompactPCIバスのモジュール・コンピュータを発売するなど,組み込み用ボード製品を広く手がけてきました.最近の組み込みシステムはPCやワークステーションをベースに構築することが多いので,当社でもPCやワークステーション向けの画像入力ボード,A/D変換ボード,高速通信ボードなどのI/O ボードを主力製品としています.当社製品の特長は,「高速」をキーワードに最先端の高性能を追求していることです.その点で,PCでは処理性能が不足するので,インテル® Xeon® プロセッサー搭載など高性能のワークステーションと組み合わせる(写真1)お客様も多いですね.
―― お客様はどのような業界が多いのですか.
岡本氏:産業分野はさまざまで,半導体関連,電機,機械,自動車はもちろんですが,医療,食品関係のお客様が急速に増えています.画像検査技術が急速に発展して,ありとあらゆる検査を画像処理を駆使したマシンビジョンで実施する流れが加速しているように感じております.
―― そのような画像検査技術も開発しているのですか.
岡本氏:個々の分野での画像処理のソフトウェアやノウハウはお客様の方でもっているので,当社は良質なボードの供給に専念しています.「高速」とともに重要な当社のキーワードは「信頼性」です.当社では町田本社にメインの設計部門が在籍し,厚木工場と子会社の長崎を合わせて全ての製造を行っています.国内で設計から製造まで一貫して行っているので,コスト的には厳しい部分もありますが,信頼性が求められる半導体,自動車,医療,食品などのお客様が多いので助かっています.その点でも,PC より信頼性が高いワークステーションを好むお客様が多いようです.
―― 高品質と国内生産にこだわる点は,日本HP社のワークステーションと近いですね.御社でボードとワークステーションをセットで販売することもありますか.
岡本氏:ボードとワークステーションのシステム構成でご提案するケースもございますが,お客様の方でシステムを構築していただいているケースが多い状況となります.当社としては,どのPC,ワークステーションでも良好に動作することが目標です.ただ,お客様からPC,ワークステーションの選定について相談されることも多いので,その場合はこれまで多く使われているメーカを参考までにお答えしています.日本HP のワークステーションの実績も増えてきています.お客様が必要とする演算処理の内容によるので,ワークステーションの最終機種選定はお客様で対応されるケースが多い状況となります.
●トラブルは日本HPの技術者と密接に協業で解決
―― PC,ワークステーションとの「相性」による問題は.
岡本氏:確かにありますが,それはPCメーカの問題というよりチップセットとの相性や,I/O規格のバージョン差異等が多いと考えております.例えば,最近は落ち着きましたが,PCIからPCI Expressに移行するときはいろいろな問題が発生して本当に大変でした.当社のボードは設計から製造まで自社で行っているので,深い部分まで突っ込んでトラブルを解明できるのが強みです.ただ,マザーボードやチップセットの問題はPC メーカの協力がないと解明が困難です.実は,最近あるトラブルについて日本HP 社に相談したところ,HPの技術者と緊密に協業できて解明にも成功しました.大手のPC メーカから見ると,当社のような組み込みボード・メーカはごく小口のユーザなので冷たく扱われると思っていましたが,予想外に手厚く対応してもらえてありがたかったですね.
●主力製品は,CoaXPress,A/D変換,光通信
―― 御社の具体的な製品をいくつか紹介してください.
岡本氏:当社では画像製品,高速アナログ製品,高速通信製品などを得意としています.まず画像製品(図1)では,カメラ画像を高速に取り込む画像入力ボードを多数取り揃えています.その中で最新の技術は,カメラI/Fの新規格であるCoaXPress(コアエクスプレス)の採用です.これまではCamera Linkが主流で,当社でも多数製品化していますが,最近では,GigaEther,USB3.0,Thunderboltなどの次世代I/Fが話題です.中でもCoaXPressは高速で高品質の伝送ができるので産業用途に最適です.当社では,4 チャネル(Quadカメラ× 1 / Dualカメラ× 2 /Singleカメラ× 4)のCoaXPress画像入力ボードであるAPX-3664(写真2左)をいち早く製品化し,検査分野のお客様から多数の引き合いをいただいています.
―― 高速アナログ製品はいかがですか.
岡本氏:100MHz ?500MHz の高速サンプリングA/D変換ボードを取り揃えています.現在ハイエンドの製品は14 ビット/400MHz サンプリングのAPX-5040(写真2中央)です.1GHz製品も今後開発する予定となります.このクラスのボードは海外製がほとんどで,医療や検査分野を中心に国内製という当社の強みを高く評価していただいています.
―― 高速通信製品にはどのようなものがありますか.
岡本氏:当社が開発した高速光通信のGiGA CHANNELを中心に展開しています.複数のPC,ワークステーションを光ループで接続して,最大20Gbps の高速データ転送を実現します(図2).通信ボード上のメモリをネットワークで共有しプロトコル処理もハードウェアで行うため,ホスト側の負担は最小で,異機種間の相互接続も容易です.例えば,1 台のカメラの画像を複数のPC,ワークステーションで共有して,画像処理を分散して行うことによって,システム全体で大規模な処理を効率良く実現できます.最新の製品は17Gbps(8.5Gbps× 2)のAPX-782(写真2右)で,計測や検査分野で広く使っていただいています.
●頻繁にボードを取り替えるテスト環境では,脱着の容易さがありがたい
―― アバールデータ社内で,I/Oボードのテスト環境やソフトウェア・ツールを使う設計環境としてPC,ワークステーションを使用していると思いますが,ユーザとしての感想は.
岡本氏:そうですね.マシン・パワーを必要とする設計ツールが多いので,設計環境ではワークステーションを使うことが多いですね.特に,高速I/O ボードにはFPGAが不可欠ですが,論理合成などに時間がかかるので,高性能のワークステーションを使っています.テスト環境やデモ環境ではいろいろなボードを取り替えて使うことが必要ですが,日本HP 社のワークステーションでZシリーズが出たとき,ボード脱着などの操作性が抜群に優れているのに驚きました(写真3).それ以来,他の部署でもHP製品を多く使うようになりましたね.
みやざき・ひとし
(有)宮崎技術研究所
多様化する現場ニーズに対応するため,HP Workstation Zシリーズが新始動. |
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この記事に関するお問い合わせ先
(株)アバールデータ |
日本ヒューレット・パッカード(株) http://www.hp.com/jp/ws_oem/ | |