来るか電気自動車「ちょい乗り」時代 ―― Smart City Week 2013

磯野 康孝

tag: 組み込み 電子回路

レポート 2013年11月19日

 2013年10月23日~10月25日,都市におけるエネルギー利用や都市運営の効率化を目指したスマートシティ・プロジェクトに関する展示会「Smart City Week 2013」がパシフィコ横浜(横浜市西区)にて開催された(写真1).主催は日経BP.

 

写真1 会場前の様子

 

 

●電気自動車を使った乗り捨て型カー・シェアリングの実証実験を開始

 横浜市と日産自動車は,電気自動車を使ったワンウェイ型カー・シェアリング「チョイモビ ヨコハマ」で利用する超小型モビリティ「NISSAN New Mobility CONCEPT」の展示と試乗会を行った(写真2).「チョイモビ ヨコハマ」は,横浜市と日産自動車が進めている自動車交通施策に関するプロジェクト「Yokohama Mobility Project Zero(YMPZ)」の一環として実施される,期間限定(2013年10月11日より1年間)の実証実験だ.国土交通省の「超小型モビリティ導入促進」事業の支援を受けている.

 

写真2 試乗会のようす

 

 

 通常のカー・シェアリングは車両を借りる場所と返す場所が同じだが,「チョイモビ ヨコハマ」は,到着した目的地で返却できる.利用料金は20円/分(入会金や年会費は無料)だ.借り受けおよび返却は,横浜市都心エリアを中心に設置されているカー・ステーションで行う.ただし,返却地は借り受け時に指定する必要がある.

 カー・ステーションとして,三井不動産リアルティの「三井のリパーク」をはじめ,多数の企業や観光施設,公共施設から駐車場の提供を受けている.実験開始時の約45カ所から最終的には約70カ所まで順次拡大していく予定だという.

 本サービスを利用するには,専用サイトから会員登録を行い,安全運転講習会を受講する必要がある.また,利用条件として,日本の自動車運転免許証を取得していること,eメールを受信できるスマートフォンを所有していること,日本国内発行のクレジット・カードで決済できることが求められる.

 「NISSAN New Mobility CONCEPT」は,2人乗りの電気自動車(全長2,340mm×全幅1,230mm×全高1,450mm)である(写真3).最高速度は約80km/hで,航続距離は約100km.発売時期および販売価格などは未定.なお,ナンバー・プレートは軽自動車のものが交付されていたが,あくまで実証実験のための暫定的な処置であるという.

 

写真3 超小型モビリティ「NISSAN New Mobility CONCEPT」
ドアは上部に跳ね上げるデザインになっており,狭い場所でも効率的に乗降できる.窓はない.

 

 

●ロボット・スーツで「立ちたい」,「歩きたい」を補助

 サイバーダインは,装着者の意思を感知して立ち座りや歩行動作をアシストする装置「ロボットスーツHAL福祉用(下肢タイプ)」を展示した(写真4).

 

写真4 ロボットスーツHAL福祉用(下肢タイプ,単脚)

 

 

 本装置は,装着者の「意思」を感知して動作する.人間が体を動かそうとする際には,皮膚表面に微弱な生体電位信号が流れる.本装置は,装着者の皮膚表面に張り付けたセンサからその信号を感知すると即座に解析し,信号に応じて筋肉が動くと同時に,各関節部分のパワー・ユニットをコンピュータ制御によって動かし,装着者の動作を補助する.

 上記のような制御を「サイバニック随意制御」と呼ぶ.これに,あらかじめ用意した人間の基本動作プログラムによる制御「サイバニック自律制御」を組み合わせることで,装着者の意思に従った適切な補助を行えるという.

 実際に,本装置を動作させるようすを見ることができた.説明員がHALは装着せずにセンサだけを身に付け,そのセンサとHALを接続した状態で脚を動かすと,動きに合わせてHALが動作した(写真5).また,脚を実際に動かさず,動かそうと考えるだけでもHALを動かせた.

 

写真5 説明員の脚の動きに合わせてHALが動作している

 

 

 専用ソフトウェア「HALモニタ」によって,各関節ごとにアシスト・レベルを設定できる(写真6).さらに,本体のインターフェース・ユニットでも微調整でき,さまざまな症状に合わせたアシスト設定を簡単に細かく行えるようになっている.また,歩行バランスや生体電位信号レベルをリアルタイムで確認できるため,装着者の歩行時のくせや荷重の偏りに関して,適切なアドバイスを与えることもできる.

 

写真6 「HALモニタ」のメイン画面

 

 

 HALを支える技術において,皮膚表面を流れる生体電位信号の取得とリアルタイムの解析技術に多くのノウハウがあるのはもちろんだが,電位信号を取得するセンサの形状や取り付け方法にも同様のノウハウがあるという.展示場では企業秘密ということで撮影できなかった.

 今後の課題として,HALの装着をより簡単にすることと,センサの取り付け方法の改良が挙げられていた.簡単にすばやく装着できることを目指しているという.


●携帯用放射線センサ「ポケットガイガー」に組み込みモジュール版が登場

 ヤグチ電子工業は,スマートフォンに接続して使う携帯用放射線センサ「ポケットガイガー」の組み込みモジュール版(Type5)を展示した(写真7).既存のマイコン・ボードとつなげて,放射線検出機能を持った計測デバイスなどを自由に作ることができる.

 

写真7 ポケットガイガー放射線検出モジュール
手前の黒い四角がセンサ部分.

 

 

 「ポケットガイガー」シリーズは,安価に入手可能な線量計の普及と,市民レベルの放射線監視ネットワーク構築を目的とした非営利プロジェクト「radiation-watch.org」が開発・配布している携帯型の放射線センサである.ヤグチ電子工業は製造を担当しており,純国産品だ.

 現在まで,ユーザが組み立てるキット・タイプのType1から検出精度を上げたType4まで4種類が販売され,1万2千台の出荷実績があるという.これらのタイプは,本体をスマートフォンに接続し,計測や線量の表示は専用アプリを使って行う.外装に市販のミント・ケースを使うType1は1,850円,高精度のType4でも6,450円という安さだ.携帯性にも優れ,Type4の大きさは外形寸法が34mm×61mm×12mm,重さが24gというコンパクトさである.今回展示された組み込みモジュール版(Type5)はさらに小さく,外形寸法が58mm×26mm×11mm,重さが約7gで,汎用モジュールとして世界最小・最軽量の放射線センサとうたっている.

 検出方式は,性能劣化がなく安価に製造できる「PINフォトダイオード方式」を採用,センサそのものはType4から独FirstSensor社製のX100-7を使用している.測定時間は0.05uSv/hで2分程度.10万円台の線量計でも1分程度かかるといわれているので,それを考えると十分な速さだろう.精度も同等だという.

 ArduinoやPIC,AVRなど幅広いマイコンに対応しており,Arduinoのサンプル・プログラムおよびWindowsの通信ソフトが無償で提供される.マイコン・ボードへの接続方法などはWebサイトからダウンロードできる.線量率の測定表示範囲は,0.01uSv/h~10mSv/hである.


いその・やすたか

 

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