拝啓 半導体エンジニアさま(54) ―― 別業種に転職してもうまく行く人,そうでない人

ジョセフ半月

tag: 半導体

コラム 2013年11月 1日

 こうも業界の人員削減のニュースが続くと,次第に感覚がマヒしてきます.先月(2013年10月)もP社半導体事業の人員半減のニュースがありましたが,さほど大きなニュースにもなりません.おかげさまで(といっても,ありがたいことはなにもないのだが),ますます半導体エンジニアの方々が半導体以外のビジネスに転身するケースが増えているようです.実際,筆者の知り合いにも,そういう方がずいぶんおられます.

 別の世界に行っても活躍されている半導体エンジニアがたくさんおられるというのは良しとすべきでしょう.以前にも書きましたが,先の見えない半導体業界に積極的に見切りをつけて別の世界に活路を見出している人も多いですし,他業種で半導体関連の仕事をするというケースも多いようです.世界のトップで競争している業種や会社の方が,半導体出身者の半導体や電子技術などに関する知識と経験を活用する気持ちや機会を切実に持っているのでしょう.消極的な気分が蔓延している半導体事業よりも他事業での方が先端の半導体に関われる,というのは,逆説的ですが部分的には真実だと思います.


●エンジニアとして転職するなら技術的な適応力でなんとかなる

 ところで,別の業界・業種に行ってもうまく行く人と,そうでない人は,あまり時を置かずにはっきりしてくるようです.違う環境に移ってもなんとかなるのは,適応力といってしまえばそれまでです.しかし,見聞きしてきた実例からすると,移動する際の前提条件のところでの折り合いみたいなものが大きく影響するように思われます.そこでボタンを掛け違ってしまうと,とてもまずい.けれど,どうもその辺は面と向かって切り出しにくいのか,意識の外にあるのか,うまく行かなかったケースほど,やはり事前の観察というか確認というかが足りないままに見切ってしまっているような気がします.

 一エンジニアの場合でも,受け入れる側と移動する側の思惑の差がないわけはないのですが,それほど大きくなることは少ないように思います.受け入れる相手がエンジニアリング分野の場合は,業種は違えど職務経歴などからどのようなスキルがあるのかそれなりに理解できるケースがほとんどでしょう.移動する側も自分が得意なのはこれ,こういう仕事がやりたい,とはっきりいえるはずです.その過程で「これは折り合えない」ということもお互いに分かるでしょうから,そこで無理しなければ,後から「失敗した...」ということにはならないのではないでしょうか.ただ,筆者らみたいな年寄りだと,歳くってるけど大丈夫? みたいな冷たい目で見られがちです.言ってやりましょう,生涯一エンジニア,バリバリです! と(けど頑固じゃない,柔軟よ,と言っておくのも大事なようですが).

 まあ,実際,別な会社に移るにせよ,同じ会社の別の事業に移るにせよ,一エンジニアとしてやるのであれば,個人の技術的な適応力さえあれば結構なんとかなっているように思われます.そんな中でたまにうまく行かないケースは,「何か」に凝り固まりすぎている場合ではないかと思われます.意識するかしないかは別として,長年の流儀が染みついていたら,一端バラバラにするのもいとわず,柔軟に再構築するくらいの柔軟性は必要でしょう.そのうち過去の知識や経験が生きてくる局面は到来するでしょうから,それまではまず勉強,です.


●管理職として転職するなら思惑のミスマッチに要注意

 それに対して,エンジニア出身といっても管理職層の場合は,最初からいろいろ大変です.社内の他事業に移りたいと思うにせよ,社外に活路を見出すにせよ,バリバリとビジネスのできるような経営者タイプは別にして,中間管理職層はどこの会社もだぶついています.「マネージメントができる」とか言っても,なかなかポストが見つかりません.よしんばうまく職が見つかったとしても,そういう層では,受け入れる側の期待と本人の指向とがずれているケースが,エンジニアのケースよりもしばしばあるように思われます.

 「社外に活路を見出す」というときに,ときどきあるのは,受け入れる側は本人の能力というよりも,その人が持ってくるお土産というかなんというかに期待している,というケースです.まあ,そういうものを引いてこれるという「政治力」というのも能力といえば能力ですが....確かに昔は,元いた会社が「おつきあいで」仕事を出してくれるような「慣行」もよく見聞きしました.「昔の会社が,俺と付き合うためなら1本くらいだすよ,と言っとるよ~」てな具合です.人脈伝わってちょっと1本と仕事がとれて安泰.大して働かずに新聞を読んで,ゴルフに行っていてもOK.まあ,良い時代でした.けれどこのごろ,それも落ち目の半導体事業では,そうもいかないでしょう(まだそんな感じでなんとかなっている人は,幸福をかみしめよう).

 今どき,昔の同僚やら部下やらにあたってみても,外に出すような仕事などありません.だいたいコネで仕事などとれないわけです.それに,移った本人は管理職としての能力を買ってほしい,営業力もある,人材育成能力もある,などと思っているのに,受け入れた会社の方は「管理職なら足りている,ひも付きの仕事がとってこれないなら期待外れ」ということで,ミスマッチになってしまいます.

 一方,社内での他事業への移動なら問題ないかというと,そうでもないようです.よほど政治力のある人は別でしょうが,他事業へ行っても管理職層などは余りぎみなので,そうそう良いポジションなど残っていないでしょう.社内の場合は,あまりあからさまな降格人事もやりにくいけれど,何か功績を上げての異動でもないので降格しなければラッキー,普通はかなりプライドの傷つく処遇,そして「いろいろ問題があるから引き受ける人が見当たらなかった」ポジションだったりします.そこで起死回生の一発を繰り出せるようならすごいのですが,悪条件も重なってなかなかうまく行かない.「俺のせいじゃないんだけどな~」とこぼしても,お前の責任だ,などと言われてしまう.といったうわさ話も時折聞きます.


●いっそ一念発起してみる?

 かねて主張している通り,この際,中間管理職などは止めてしまって,CQ出版の雑誌で勉強しなおしてエンジニアに戻りますか? それともここで一発起業しますか? このごろは,ハッカソンだのピッチ・コンテストだの,起業をとりまく環境も年寄りが覚えている昔の姿からは様変わりのようです.チャンスも多いようですが,アイディア,プラス体力勝負のようです.「この歳で,体力,気力が続くか?」そんなことを考えているようでは,最初からこりゃダメですな.


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