拝啓 半導体エンジニアさま(53) ―― 間違いだらけの計画の立て方

ジョセフ半月

tag: 半導体

コラム 2013年10月 2日

 「またもや」というべきでしょうか.特に社名は挙げないことにしますが,業界の人減らしがニュースになっているこのごろです.昨年会社を離れた方々の中には不幸にしてまだ落ち着き先が決まっていない方もおられると聞いているのに,です.

 それにつけてもつくづく思うのは,見通しの悪さ,計画のまずさでしょう.こうたびたび人減らしをしなければならないということは,計画が二転三転しているということでしょうから,元の計画(か元の元の計画か...)が甘かったのは明らかでしょう.だいたい計画そのものの立て方というか,考え方にも問題がありそうな気がします.

 筆者などは商品設計の分野ばかりで経営の経験はないので,もの申すのはおこがましいとは思うのです.しかし,長年の経験から感じるのは,もっともらしい理由や調査結果に基づいた緻密な(つじつまあわせの)商品計画ほど,後になってみたら「滑った」ケースが多いように思います.そういう計画の立て方はだいたい多くの日本の半導体会社に共通しており,それが日本半導体の今に至る苦境につながっているのではないかと想像しています.


●新商品の計画を例に考える

 経営レベルからは1ランク下の話になりますが,力こぶを入れ,リソースを投入して立ち上げる新商品の計画ともなると,マーケティングの人たちが走り回って綿密な市場調査にあたります.営業もなるべく多くの潜在顧客の意見を聞き,設計,製造とも技術面の知恵を絞って事前に障害となるようなリスクを軽減し,皆で新商品の立ち上げに邁進する,という感じでしょうか.その過程で,全体計画から個別の細かい事柄までいろいろな細部計画が立てられていきます.

 ところがいざふたをあけて実施となると,思っていなかったような障害が出てきます.設計トラブル(設計しているお前の能力がないからだ!),製造トラブル(自然災害が原因の場合は不可抗力か...)といろいろあって計画の遅延もたびたび.やっとできて市場に出してみると,思ったほどには売れず(お客に食い込めなかった営業が悪い!いや遅延を起こした設計が悪い!),また,社会情勢の変化や市場の変化(金融危機,異業種からの参入など....マーケティング部門としては金融危機など予想できません)で,あえなく立派な企画もポシャってしまう.

 後になって密かに反省してみると,もっとよく検討していれば事前に分かったはずなのに計画時点では考慮に入れていなかった要因があったり,既に変化は表れていたのに自分に都合の良い方向に手前味噌に解釈していたりと,「失敗の原因」は多々見つかるのです.その上,誰も予想していなかったような事件があったよな~,運が悪いな~という感じ.しかし,後ろ向きな反省を繰り返していても仕方がないので,失敗はさっさと「分かり易い教訓化(結構的外れだったりするが,言うと怒られるので言わないことにします)」してまとめ,先に進みます.そして,また似たようなことを違う「原因」で繰り返してしまうのです.


●計画が失敗する三つのパターン

 そういう繰り返しを見ていると,いくつかパターンがあるように思います.第1はそんなに先は見通せないのに,先を緻密に見過ぎた計画を立てすぎるケースです.まず数カ月先くらいの価格や需要くらいであればそう外れたことを言わない優秀なマーケティング部門でも,数年先ともなると頼りない.それで調査会社などのデータやら顧客の意見やらから,いろいろ裏付けを取るわけですが,何年も経ってから振り返ってみれば,昔の予想って外れたよなという事例もぞろそろ.顧客の会社もいつの間にか無くなっていたりして,顧客自体が自分のことを分かっていなかったのだよね,ということも....先の見通しなどには相当な誤差や不確定性があるにも関わらず,計画として決めるときには,けっこう幅の狭い予想範囲で,ともかく緻密に細かいところまで決めすぎではないでしょうか?

 第2は,そうして決めた計画を金科玉条のようにして守ることです.日本の会社はマジメな人が多いし,決めたことを日程通りに達成するということが部門にしろ,個人にしろ評価の前提なので,ともかく頑張ります.頑張るだけでなく,計画の日程管理だけを専門にやっている人や部署がいたりして,ともかくおしりをたたいて守らせる.計画必達.それでいて計画の見直しポイントなども事前にここでと決まっていたりするので,そのポイントまではともかく皆さん突っ走ってしまう.ここでは計画時にいろいろ不確定性があったことなどは飛んでしまい,未来のことを事前に決めた通りに確定させたいという思いばかりが募ります.それが良い方向であれば,成功への信念,執念といえるのですが,悪い方向だと集団錯誤でしょう.

 そして第3は,このままじゃまずい,となって計画を見直すのですが,見直すための再調査やら,報告の作成,いろいろな「すりあわせ」でずるずると時を過ごしてしまう,というものです.なにせコンセンサスがすべてに優先するので,外の世界の時間の流れとは別に,内部のいつものメンバで顔を見合わせている時間がゆっくり流れます.結果,手直しした計画が実施されるころにはまた,既に外界の状況は変わってしまっているというお粗末.


●すばやい判断,細かい軌道修正を目指そう

 結局,多くの人を動かすために計画は必要ですが,いろいろな外乱や変化に即応して素早く修正を加え,変化に対応させていかねばならない,ということでしょう.オーナ企業などでうまく行っているように見えるところも,最初からうまくいく方向を一直線に狙っていたというより,判断がすばやくできるので,細かく軌道修正をやりつづけてうまいところに着陸させたというケースが多いのではないでしょうか.

 緻密な計画をゆるゆるとやるよりは,手早く始め,まずければ即座に修正する,そんなリーダシップが切に求められている気がいたします.

 

じょせふ・はんげつ

 

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