拝啓 半導体エンジニアさま(49) ―― 設計部門の中間管理職の再就職,"リハビリ"は必要だがなんとかなる

ジョゼフ半月

tag: 半導体

コラム 2013年6月 4日

 アベノミクスのおかげで株価上昇,円高で業績も改善と思ったら,金利も株価も不安定さを増してしまったようです.市場の一寸先は闇,といった感じでしょうか.「パイこね変換」の例を引くまでもなく,今日のようなworld-wideな多数の市場参加者による高速取引が行われれば,カオス的な概念がはい出る余地もたくさんあるに違いありません.

 業種によっては"ボーナス増"のような話も出て,状況が好転している兆しがありますが,こと電機,電子,半導体といった業界では,依然として人減らしが続いています.

 

●若手であればすんなり再就職先が見つかるかも

 今どき,半導体業界の中で再就職先を探そうと思っても,大変難しいのは確かだと思います.だからこそ,「なんとしても会社にしがみついていよう」と考える人あり,また,「退職金の出るうちに早いところオサラバ」などと考える人あり(失礼!)で,こちらの方は,売りどきか買いどきかに悩む株式市場になぞらえれば,「売り買いが錯綜している」といったところでしょうか?

 それでもごく一部には,まだ人をとっている会社があるようです.ちょっと前に某社が,同じ鉄道路線沿いにある競業他社本社の最寄駅に求人広告を打っているのを見て,「挑発的だなぁ」と感心しました.ただ,このようなケースは限られているので,今ごろは応募が殺到しているのではないかと思います.

 この業界の日本の会社の多くは,ここ何年もの間,若手を採用していないと推測されるので,業界の中の若手の人口はかなり限られていると思います.それもあって,若手であれば意外とすんなり再就職先が見つかるかもしれません.それどころか,意欲のある若手の技術者ほど,このような業界(!?)に見切りをつけて,別の業界へ転身することも可能でしょうし,またそれを考えているでしょう.

 もしかすると,すでに実行済みでしょうか? 最近,証券会社あたりで駆使されている方程式などは,物理学の方程式と見分けがつきません.物性などをやっていたような人は,違和感などないのかもしれません.

 

●設計部門の中間管理職の再就職はかなり厳しい

 それにひきかえ,辛いのが筆者らのような中高年層です.

 まずは年齢がネックになる上に,頭が固く,変化への対応が難しく,役にたたない,という視線が突き刺ささります.品質管理の専門家のようにつぶしの利きそうな職種の人,あるいはコネでもなんでも仕事(お金)を引っ張ってこれそうな人は年齢など関係ないのでしょうが,筆者らのように凡百で,"金のなる木"などにも縁がないとなると,キツイです.

 筆者も長年,中間管理職を続けてきましたが,設計部門の中間管理職などはその中でも特にキツイ部類ではないかと思います.「マネージメントのスキルがあります」などと言っても,冷たい目で見られるばかりです.世の中,中間管理職はだぶついているようで,そこでスキルがあると言っても,それ以前に肝心のポジションがないケースがほとんどでしょう.とはいえ,若手のように金融関係に転職して,小難しい理論でもうけるような才覚はありません.なんとか,土地勘のある,これまでの自分の経歴が生きる仕事を続けたい,と思うわけです.

 しかし,過去の経歴にこだわるとダメですね.今までやってきたそのままの仕事というのは,なかなか見つかりますまい.ちょっとは新しい分野へ"移動"しないと,はしにも棒にもかかりません.そこで長年,中間管理職を続けてきたエンジニア出身者として痛切に感じるのが,「さびついてるなぁ」という感覚です.

 エンジニアリングは,続けてやっていれば,年を取っても苦にはならない,と確信しています.皆さんの周りにも,「かなりの年配だけれど現役バリバリ」という人がいるでしょう.ところが,エンジニアリングの中間管理職というのは困った商売です.実務から離れ,会議にでたり書類を書いたり,エンジニアリングから程遠い仕事ばかりです.かといって大きな企業の場合,あくまでも「中間管理」であって,本当の意味での経営からは遠いことが多く,中小企業で求められる「ビジネス」ができるという意味での「マネージメント」とはだいぶ違うように思います.

 中間管理職を10年も続けていると,いろいろな能力がさびついてしまっており,"使えない"状態に陥ってしまっています.筆者自身も痛感したことなので,これは本当の話です.いざ動こうと思っても,「あれ,どうするんだったっけ?」といった具合です.若いころはバリバリで設計していたはずなのに....

 

●経験と長年の中間管理職暮らしで身に付けた忍耐力が助けてくれる

 しかし,そこで「もうダメだ.エンジニアには戻れない」と絶望するのは早計なように思います."リハビリ"は必要ですが,なんとかなるものです.2,3カ月,さびを落としながら,新たにチャレンジする分野について勉強すれば,思いのほかはかどるものです.

 老眼の眼に細かい文字はちと辛いのですが,それこそ経験と長年の中間管理職暮らしで身に付けた忍耐力が助けてくれるでしょう.ちょっとお金を払う気があれば,自費でセミナに参加しても良いし,CQ出版社の書籍などを買ってきて,片っ端から「デバイスを動かしてみる」のもよいのではないかと思います.ソフトウェアでもハードウェアでも,自分で動かしているうちに,すぐにさびは落ちるし,新たな分野の知識も頭に入ってきます.

 そうして一歩を踏み出せれば,新たなチャンスが巡ってくる確率も上がろうというものです.

 

 

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