ESEC2013プレビュー企画 ワイヤレス化がすすむ組み込みの無線規格をチェック

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2013年4月14日

-------クローズアップ-------ESEC2013出展製品-------

 

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無線LAN,Bluetooth,ZigBeeの規格を総チェックしておこう

 組み込み業界ではワイヤレス化が急速に進んでいます.スマートフォンやタブレット端末の普及もそれに拍車をかけているようです.低消費電力モードが進化し,利用できる周波数帯の整理も進んでいます.本稿では,組み込み機器によく使われる無線規格の内容を,歴史的変遷も踏まえて整理しました.
 

無線LAN(IEEE 802.11)

● 沿革

 有線LANの標準化を行ってきたIEEEの802委員会では,1990年に802.11ワーキング・グループを作り,無線LANの標準化を始めました.標準化にはかなりの時間がかかり,1997年に最初の規格であるIEEE 802.11が策定されました.最大2Mbpsと低速で,互換性にも難があって普及はしませんでした.
1999年には,同じ2.4GHz帯で11Mbpsに高速化したIEEE 802.11bが策定され,普及が始まりました.そこで,無線LAN製品の相互運用性を認証する業界団体として,現在のWi-Fi Allianceが設立されました.
同じ1999年には,干渉の多い2.4GHz帯を避け,5GHz帯で54Mbpsを実現したIEEE 802.11aも策定されました.次いで,2001年には,2.4GHz帯のままで54Mbpsに高速化したIEEE 802.11gが策定されました.
2009年にはMIMO(Multiple Input Multiple Output)などの新しい方式を取り入れて,5GHz帯で100Mbps以上の高速化を実現するIEEE 802.11nが築定されました.さらに,1Gbps以上の伝送速度を目標として5GHz帯で最大6.93GbpsのIEEE 802.11ac,60GHz帯で最大6.8GbpsのIEEE 802.11adの標準化が進められています.(IEEE 802.11adは2013年1月に承認).
IEEE 802.11の主な規格を表1に示します.
 

表1 IEEE802.11の主な規格

番号 概要 備考
1997 802.11 共通事項,MAC層,2Mbpsの物理層 802.11-2012に統合
1999 802.11a 5GHz帯で54Mbpsの物理層
1999 802.11b 2.4GHz帯で11Mbpsの物理層
2001 802.11g 2.4GHz帯で54Mbpsの物理層
2009 802.11n 2.4/5GHz帯で最大600Mbpsの物理層
2013 802.11ac 5GHz帯で最大6.93Gbpsの物理層 2013年12月承認予定
2013 802.11ad 60GHz帯で最大6.8Gbpsの物理層 2013年1月承認

現行の802シリーズの規格は,IEEEのWebサイト
http://standards.ieee.org/about/get/802/802.11.html)で無償ダウンロードできる

 

● 用途・特徴

 IEEE 802.11は,有線LANのEthernetを無線化するというコンセプトから始まっています.無線LANの用途としても,当初は固定LANのケーブルを無線化する用途が主でした.
その後,ノート・パソコン,PDA,携帯ゲーム機,スマートフォンなどの普及とともに,無線の特性を活かしたモバイルの用途にも活用が進みました.
 

 

● 基本仕様

 IEEE 802.11の主な仕様を表2に示します.
また表3は各無線通信の階層構造を示したものです.802.11の場合MAC層は共通ですが,物理層の違いからデータ・レートや通信距離などの性能の違いが生じています.
2.4GHz帯(2400MHz~2472MHz)を用いる802.11b/g/nと,5GHz帯(当初は5150MHz~5350MHz,後に5470
MHz~5725MHzが追加)を用いる802.11a/n/ac,また60GHz帯(57~66GHz)を用いる802.11adがあります.802.11nは2.4GHz帯と5GHz帯の両方に対応しており,2.4GHz帯では802.11gと,5GHz帯では802.11aと通信することも可能です.
802.11bは,DSSS(Direct Sequence Spread Spectrum;直接スペクトラム拡散)とCCK(Complementary Code Keying;相補型符号変調)を用いて最大11Mbpsのデータ・レートを実現しています.通信距離は最大100mです.
802.11aと802.11gは共にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing;直交周波数分割変調)を用いて最大54Mbpsのデータ・レートを実現しています.通信距離は,2.4GHz帯を用いる802.11gが最大80m,5GHz帯を用いる802.11aが最大50mです.
802.11n,acも変調方式はOFDMです.さらに,複数のアンテナでデータ送受信を行うMIMOや,複数のチャネルを結合するチャネル・ボンディングを採用し,高速化を実現しています.動作モードが極めて複雑なため,通信距離は規定されていません.
802.11adはキャリアの高速化とチャネル・ボンディングによる高速化が主です.OFDMはオプションで,基本はSC(シングル・キャリア)モードです.
 

 表2 IEEE802.11の主な仕様

  周波数帯 伝送方式 公称速度 最大距離
802.11a 5GHz OFDM 54Mbps 50m
802.11b 2.4GHz DSSS,CCK 11Mbps 100m
802.11g 2.4GHz OFDM 54Mbps 80m
802.11n 2.4/5GHz OFDM,MIMO 65M~600Mbps (数10m程度)
802.11ac 5GHz OFDM,MIMO 290M~6.93Gbps (数10m程度)

802.11ad

60GHz SC/OFDM 4.6G~6.8Gbps (数m程度)

 

表3 階層構造と規格の範囲

  無線LAN Bluetooth ZigBee

↑ 上位層

↓ 下位層

アプリケーション プロファイル アプリケーション層
TCP/IPなど L2CAP APS(アプリケーション・ サポート・サブ層)
802.11 LLC(論理リンク制御) HCI(ホスト・コントローラ通信規格) NWK(ネットワーク層)
802.11 MAC(メディア・アクセス制御) LM/BB(リンク・マネージャ/ベースバンド) 802.15.4b(物理層)
802.11a/b/g/n/ac/ad RF(物理層)

 

 

● ネットワーク構成

 IEEE 802.11のネットワーク構成を図1に示します.
インフラストラクチャ・モードとアドホック・モードの二つがあります.
通常用いられるのはインフラストラクチャ・モードで,アクセス・ポイントを中心としたスター型の構成になります.アクセス・ポイントを有線LANなどのバックボーンに接続した階層型ネットワークもしばしば用いられます.
アドホック・モードはアクセス・ポイントを用いず,端末同士で直接無線通信を行います.1対1などの簡単な接続に適しています.
アクセス制御には,有線LANのCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)を無線LAN向けに改良したCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)が用いられます.
 

 


図1 IEEE 802.11のネットワーク構成

 

参考1 Interface誌 特集「作って試す! Wi-Fi」

参考2 Wi-Fi ALLIANCE

 

 

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