ESEC2013プレビュー企画 ワイヤレス化がすすむ組み込みの無線規格をチェック

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2013年4月14日

2.Bluetooth(IEEE 802.15.1)

● 沿革

 Bluetooth規格の変遷を表4に示します.Bluetoothは10mから100m程度の近距離で,64kbpsの音声通信と数百kbpsのデータ通信を行う規格として登場しました.1999年にV1.0,2001年にV1.1,2003年にV1.2の仕様が発表され,そのころから普及が始まりました.2004年にはV2.0にバージョン・アップされるとともに,最大2.1Mbpsのデータ通信を可能にした高速化機能のEDRが追加されました.2007年にはV2.1,2009年には最大24Mbpsの高速伝送が可能なV3.0が発表されています.
また,2009年には超低消費電力を特徴とするV4.0も追加されました.
Bluetoothはスウェーデンの通信機器メーカであるEricsson社で開発が始められ,1998年にEricsson社,フィンランドNokia社,米国IBM(現在Lenovo社)社,米国Intel社,東芝の5社によって普及団体のBluetooth SIGが設立されました.
BluetoothはIEEEの802.15ワーキング・グループでも採用され,2002年にはBluetooth V1.1のMAC層と物理層がIEEE 802.15.1として標準化されています.
 

表4 Bluetooth規格の変遷

バージョン 概要,追加機能
1999 v1.0 互換性に難点
2001 v1.1 普及が始まったバージョン
2003 v1.2 SCO,無線LANとの干渉防止など
2004 v2.0+EDR EDRによる高速化
2007 v2.1+EDR 認証簡略化,省電力化
2009 v3.0+HS 802.11のPHY/MAC利用,高速化
2009 v4.0 Bluetooth Low Energy

V2.0以降のBluetoothの規格は,Bluetooth SIGのWebサイト(http://developer.bluetooth.org/gatt/Pages/GATT-Specification-Documents.aspx)で無償ダウンロードできる
 

 

● 用途・特徴

 Bluetoothは,携帯電話機やパソコン,ディジタル家電,カー・ナビゲーション・システム,それらの周辺機器などをワイヤレスで簡単に接続することを目的としています.
特に,携帯電話機とヘッドセットの接続や,携帯音楽プレーヤとヘッドホンの接続は,Bluetoothの代表的なキラー・アプリケーションです.
ヘッドセットに限らず,ワイヤレス・キーボード,ワイヤレス・マウス,リモコン,カー・ナビゲーション・システム,ゲーム機のコントローラなど,ケーブルが邪魔に
なる機器や,常時リアルタイムの通信が必要な機器に,Bluetoothが適しています.転送速度が低いため,大量のデータを一括転送するような用途には適していません.
 

 

● 基本仕様

 Bluetoothの主な仕様は表5の通りです.
Bluetoothは,2.4GHzのISMバンドでFH(周波数ホッピング)を用いた無線通信を行います.基本モードで1Mbps,拡張(EDR)モードでは2Mbpsまたは3Mbpsのデータ・レートをもちます.
用途によって,消費電力と通信距離を最適化できるように,最大出力電力の違いによってClass 1(100mW,通信距離100m),Class 2(2.5mW,通信距離10m),Class 3(1mW,通信距離1m)の三つのクラスが定義されています.
音声通信用のSCO(Synchronous Connection Oriented)リンクでは64kbpsで単方向(非対称型)の同期通信を行います.データ通信用のACL(Asynchronous Connection Less)リンクでは,下り721kbps+上り57.6kbpsの非対称型・非同期通信,または上り下りとも432.6kbpsの対称型・非同期通信を行います.拡張(EDR)モードの転送レートはそれぞれ2倍または3倍になります.音声通信の品質は電話クラスなので,音楽プレーヤなどではACLリンクの方を使用します.
 

表5 Bluetoothの主な仕様

  周波数帯 方式 理論速度 最大距離
v1.x 2.4GHz FH 1Mbps

100m:Class1

10m:Class2 1m:Class3

v2.x+EDR 3Mbps
v3.0+HS 24Mbps
v4.0 1Mbps

 

● ネットワーク構成

 Bluetoothのネットワーク構成は,図2のようになります.Bluetoothは単なる1対1のインターフェースとしても利用できますが,小規模なネットワークとして定義されており,複数のデバイスの間で自由にデータを転送できます.ネットワークの接続はデバイス同士が自動的に行うので,デバイスの電源さえ入れておけば,ユーザは接続状態を意識せずに簡単に利用できます.
ただし,不要なデバイスとの混信や,気付かないうちに他人に接続されるのを防ぐため,接続可能なデバイスとして認識させるペアリングの手順が定められています.
Bluetoothでは,通信を行うデバイスはマスタとスレーブに分かれます.1台のマスタに1~7台のスレーブを接続可能であり,最大8台で一つのピコネットを構成します.通信はすべてマスタ-スレーブ間で行い,スレーブ同士が直接通信することはできません.
 


図2 Bluetoothのネットワーク構成

 

 

● プロファイル

 Bluetoothのプロファイルの例を表6に示します.
各デバイスは,これらのプロファイルの中から必要なプロファイル(一つまたは複数)を選んで実装できます.通信を行う双方のデバイスが同じプロファイルを実装している場合に,その機能が有効になります.
 

 表6 Bluetoothのプロファイルの例

略 号 名 称 概 要
A2DP 高度オーディオ配信プロファイル ステレオ品質のオーディオ・ソースの転送
AVRCP オーディオ/ビデオリモート制御プロファイル TV,ビデオ機器のリモート制御
BIP 基本画像プロファイル 画像デバイスから印刷,ストレージに保存など
BPP 基本印刷プロファイル 各種デバイスからプリンタに転送して印刷
GAVDP 一般オーディオ/ビデオ配信プロファイル A2DPとVDPの基礎として動作する
GOEP 一般オブジェクト交換プロファイル デバイス間でオブジェクトを転送する
HFP ハンズフリープロファイル ハンズフリー・デバイスで発呼,着呼する
HSP ヘッドセットプロファイル ヘッド・セットとの通信
HIP ヒューマンインタフェースデバイスプロファイル キーボード,マウス,ゲーム・デバイスなど
SPP シリアルポートプロファイル 仮想シリアル・ポートを用いて接続
SYNC 同期プロファイル GOEPと連携してPIM情報の同期をとる
VDP ビデオ配信プロファイル 動画データの転送

 

参考1 Interface誌 特集「Bluetooth無線初体験」

参考2 Bluetooth SIG

 

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