競りビジネスとは ―― 物作りあれこれ(7)

村山 建

 「競り(せり)」.よく知られているのが,河岸のマグロなどの競り落としの風景である.

 築地市場の今年(2013年)の初競りでは,マグロの中でも最高級ブランドとされる青森県大間産の本マグロが1億5540万円で競り落とされ,有名になった.これらは手競りで,あらかじめ決められている符丁によって金額を表し,競り人がこれを確かめる方法で行われる.競りには特に決まった方法があるわけではないらしく,地域や場所によってまちまちと聞いている.最近ではインターネット・オークションも一般的になってきた.

 競りに掛けるものは何でもよく,伝統的なものとして食肉,中古車,花などがあるそうだ.先のマグロなどは典型的な手競りだが,競りの効率を上げるために機械を使う場合もある.

 中古車の機械競りなどは圧巻である.競りだから,売るものをしっかり見せなければならない.舞台の上をゆっくりと売り物の中古車が歩く.走るのではない.歩くのである.大勢の観客(競り人)は食い入るようにこれを見つめる.すべての競り人の前には端末が置かれている.これぞという物件を見つけると,思いっきり端末のキーを叩く.だから端末機が壊れやすいらしい.すべての端末機の出力データはコンピュータに転送され,処理される.だから機械競りなのである.

 先ほど機械競りの端末機が壊れやすいと言った.実際には端末機だけでなく,集線装置,コンピュータ,その他の処理装置など,さまざまなシステムで故障が起こる.1日の競りの対象は確か600台程度だと思ったが,途中でシステムがダウンしてしまっても,それだけ大勢の競り人が集まっているのだから,途中で競りをやめるわけにはいかない.やむなく手競りに切り替える.機械競りと比べると,手競りの効率が大きく落ちることは当然である.結局,予定数がこなせず,大量に競りもれが出てしまう.

 競りの主催者はシステムの運用責任者である会社の経営者を散々なじって,はては「賠償しろ」と喚き出す.それほどシステムの信頼性が重要なら2重化するべきではないかと思うのだが,どうやらお互いぎりぎりのところでやっているビジネスらしく,システムの2重化の話はついに沙汰(さた)やみになったようである.

 競りビジネスの現役に聞くと,気性の荒い人が多そうな業界向けのシステム構築はあまりやりたくない,と漏らしていた.

 

 

むらやま・たけし
(株)テクノクリエート

 

 

●筆者プロフィール
村山 建(むらやま・たけし).日本電気(株) 伝送通信事業部 開発部門で一貫してデータ・モデムの開発などに従事.その後,技師長として十数年間,主として北米に駐在.帰国後に(株)テクノクリエート(http://www.techno-create.com/)を創設.同社社長として現在に至る.

 

 

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