FA/医療/監視機器などの分野で注目されているワークステーションの活用法

宮崎 仁

tag: 組み込み

キャッチアップ 2013年4月25日

 

   組み込みキャッチアップ 

 

 

FA/医療/監視機器などの組み込みシステムでは,汎用PCやFA向けPCがよく使われていますが,価格,仕様,保守サービスなどの面で大きなギャップがあるため選択に苦しむことも多いでしょう.そんな中で,汎用PCとFA向けPCのギャップを幅広くカバーするワークステーションが注目されています.ここでは,国内ワークステーション市場で5年連続シェアNo1を獲得しているHP Workstationを中心に,ワークステーションの特長と活用法を見ていきましょう.

※出典:IDC's Worldwide Quarterly Workstation Tracker, 2012 Q4

●コスト,性能,信頼性のトレード・オフ

 組込み用途のコンピュータに要求されるのは性能だけではなく,長時間の連続稼働,悪条件に対する堅牢性,長期間のサポートや同一モデルの安定供給など,重要な業務に安心して使用できる幅広い信頼性が求められます.

 汎用PCは低価格で高性能ですが,製品サイクルやサポート期間が短く,信頼性にも不明な点が多いのが難点です.一方,FA向けPCは信頼性や長期サポート,長期供給という点で組込みの要求を満たしていますが,最新の性能や機能を反映していない製品が多く,価格もかなり高価です. 

 このように,汎用PCとFA向けPCの間には大きなギャップがあり,性能,信頼性,価格のバランスをとりながらコンピュータを選ぶのは難しくなっています.そこで,もう一つの選択肢としてワークステーションを選ぶユーザが増えているといいます.

 ワークステーションは,汎用PCよりも高性能なだけでなく,信頼性や長期サポート,長期供給の特長をもつものが多くなっています.もちろん,価格は汎用PCより高めですが,産業用PCよりは一般に低価格です.一方,信頼性や悪条件への対応,長期サポートや長期供給という点では産業用PCには及びませんが,価格と性能で大きな利点をもっています(図1).

 

図1 組込み用コンピュータの性能,信頼性,価格

 価格や信頼性の面で,汎用PCとFA向けPCのギャップは大きい.ワークステーションは価格や信頼性で汎用PCとFA向けPCのギャップを埋め,性能では最高のパフォーマンスを提供できる

 

 

●ワークステーションの利点と活用

 ワーステーションは,科学技術計算,OA,CAD,グラフィック・デザイン,画像処理などさまざまな専門分野で,高負荷の処理を実行する高性能コンピュータとして使われています.最近では,基本性能やアーキテクチャ/OSの面では汎用PCも接近してきましたが,高いシステム拡張性や,重要業務で必要な信頼性,可用性,保守性などの点で大きな違いを保っています.

 例えば,HPのワークステーションでは,最新テクノロジーと長期供給性を両立したインテル® Xeon® プロセッサーを搭載し,マルチプロセッサとマルチコアの組合せで強力な演算性能を発揮します.メモリ容量やHDD/RAID,拡張I/Oなどを強化し,1個の部品まで高信頼性,長期供給性を重視して選択しています.放熱性や保守性を追及した筐体設計によって,ファン回転数を低く抑え,ツールレスでメンテナンス可能な設計になっておりボードなどの追加・交換作業も簡単です(写真1).

 

写真1 HP Z820の内部

 

  さらに,HPでは国内での生産やサポートを重視しています.国内向けワークステーション製品は東京(昭島工場)で製造しており,高品質かつ納期短縮の実現や,流通経路でのリスク低減のメリットがあります.

 また,電話サポートは東京にいるワークステーション専任エンジニアが日本語で対応してくれるのはユーザにとって大きな安心と言えるでしょう(写真2).

 

写真2 国内向けワークステーションを製造している東京の昭島工場



 

 

 このような特長から,HPのワークステーションは医療システムや監視システムなど,24時間,365日休むことができない用途で広く支持を集めているといいます(写真3).

 

写真3 医療システムの事例

 高精細マルチディスプレイと高速画像検索/表示機能によって,医師と患者が同じ検査画像を見ながら診断や治療についての説明を行うことができる(愛知県名古屋市 特定医療法人米田病院)

 

 

●FA分野でのワークステーション活用

 マシンビジョンは,FA分野においてワークステーションのもつ高い演算性能や拡張性を最大限に活用できるアプリケーションと言えるでしょう.

 マシンビジョンでは,カメラから画像を取り込み,補正/2値化/特徴抽出などの画像処理,パターン/文字などの認識処理をリアルタイムに実行して,製造/検査/流通などの各段階の管理を無人で高速かつ確実に行います.X線や超音波を利用した非破壊検査でも,同様の画像処理による可視化が活用されています(図2).

 

図2 画像検査の事例

 カメラ画像を処理して瞬時に判定を行うことにより,製造ライン上で製品検査を行う.肉眼では見落としがちな微小な傷も検出し,記録することができる(アイエスシー株式会社提供)


 

 

 さらに,マシンビジョンと高精細ディスプレイを組合せて高度な目視検査を実現したり,記録した画像データを解析して製品設計や生産技術にフィードバックするなどの活用も増えています.

 ワークステーションは一般に拡張スロット数や電源容量に余裕があり,フレーム・グラバやグラフィックスなど多数の拡張ボードを使用する大規模な画像システム,監視システムに最適です.もちろん,高い演算性能や豊富なメモリ資源,大容量記録,高速通信など,画像処理や認識処理に不可欠な高性能も特長です.特に,HPのワークステーションは高性能GPUの搭載が可能で,演算性能はきわめて高くなっています.

 ラインの高速化が要求される用途では,ワークステーションの高速演算性能が直接役立ちます.また,ライン速度が要求されない用途でも,1台で複数の画像データを集中処理できるので,コスト低減に役立ちます.

 

●HP Workstationのラインナップ

 HPではインテル® Xeon® プロセッサーを搭載したワークステーションZシリーズをラインナップしています(表1写真4).

 

表1 HP Workstationシリーズの主なハードウェア仕様



※1 モデルにより対応していないものもあります.※2 Windows® 7 Professional正規版(64bit版)では192GBまでしか認識しません。※3 6基目は2.5インチのみとなります.

 

 

写真4 HP Workstationのラインナップ 

 

 シリーズ最上位機種のZ820は,デュアル・プロセッサ構成で最高16コア・32スレッドという究極のパフォーマンスと拡張性を実現.Z620はデュアル・プロセッサ対応のミッドレンジ・モデル,Z420は高い演算性能,拡張性,信頼性を身近にした売れ筋エントリ・モデルです.

 最先端プロセッサーを手軽に活用できるエントリ・モデルには,拡張性に優れたZ220と省スペース性に優れたZ220SFFの2機種が用意されています.

 豊富でバラエティに富んだラインナップは,PCからサーバまで世界市場で定評と実績を積み重ねてきたHPならではのものと言えるでしょう.

 

 

みやざき・ひとし
(有)宮崎技術研究所

 

 


この記事に関するお問い合わせ先

日本ヒューレット・パッカード(株) 
〒136-8711 東京都江東区大島2-2-1
http://www.hp.com/jp/ws_oem/
Intel,インテル,Intel ロゴ,Intel Inside,Intel Inside ロゴ,Intel Atom,Intel Atom Inside,Intel Core,Core Inside,Intel vPro,vPro Inside,Celeron,Celeron Inside,Itanium,Itanium Inside,Pentium,Pentium Inside,Xeon,Xeon Phi,Xeon Inside,Ultrabook は,アメリカ合衆国および/またはその他の国における Intel Corporation の商標です.

 

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日