デバイス古今東西(46) ―― 日米の半導体商社を比較:メガ商社化の波にのまれるか,業態を生産者寄りに変えていくか
●メガ商社化しない半導体商社は生産者寄りの業態へ移行
日本の半導体商社の中でメガ商社化しない企業はその果たす役割(機能)を拡大していくと,筆者は考えます.半導体商社の枠を越えた,生産者寄りの業態へと移行すると思います.では,どういった事業へ参入すると考えられるのでしょう?
半導体産業の変化により,欧米では水平分業化によるその分野の専門企業やベンチャ企業が台頭してきています.つまり,知的資産を基盤にした生産型企業が生まれています.こうした企業は,取り扱う対象がハードウェアからソフトウェア,サービスへと拡がり,複合的なビジネスが成立しつつあります.表2は,伝統的な半導体商社と欧米で認知されている知的資産を基盤にした生産型企業の比較です.
表2 伝統的半導体商社と知的資産を基盤にした生産型企業の構造比較
早稲田大学大学院 寺本 義也教授講義「経営組織論」の資料をもとに,筆者が情報を追加して作成した.
日本の半導体産業が復活するために考えられる展開の一つは,こういった知的資産を基盤にした生産型企業・ベンチャの多発的創出と定着です.日本の半導体商社は欧米のこのような企業との連携,もしくは半導体商社自身が社内で新しい機能を創造していくことが求められます.「主要な財」,すなわち取り扱い商品をハードウェア単体から,ハードウェア+ソフトウェア+サービス(ソリューション)へと拡大するには,半導体商社の組織や人材,企業文化の変革が必要となります.
やまもと・やすし
●筆者プロフィール
山本 靖(やまもと・やすし).半導体業界,ならびに半導体にかかわるソフトウェア産業で民間企業の経営管理に従事.1989年にVHDLの普及活動を行う.その後,日米で数々のベンチャ企業を設立し,経営責任者としてオペレーションを経験.日米ベンチャ企業の役員・顧問に就任し,経営戦略,製品設計,プロジェクト管理の指導を行っている.慶應義塾大学工学部卒,博士(学術)早稲田大学大学院.