ネットに接続する組み込み機器の開発を容易にするミドルウェア群「T2EX」を一般公開 ―― TRONSHOW 2013
講演によるとT2EXでは,以下の機能を搭載した.すなわち,メモリ保護機能,ファイル管理機能,ネットワーク通信機能,カレンダ機能,プログラム・ロード機能,標準C互換ライブラリ(標準入出力機能を含む)である(図2).それぞれの機能はモジュールになっており,自由に取り外しできる.例えば,ファイル管理機能だけをT-Kernel 2.0と組み合わせることも可能だし,すべての機能を実装することも可能だ(図3).
図2 T2EX(T-Kernel 2.0 Extension)が搭載した機能
図3 T2EX(T-Kernel 2.0 Extension)を含めたソフトウェアの構造
T2EXが搭載した機能の中で重要なのは,ファイル管理機能とネットワーク通信機能である.組み込み機器でも大容量のストレージを利用するようになっており,ファイル管理が欠かせない.また,インターネット接続機能が標準的になったことで,ネットワーク通信機能も必須と言えるようになった.
また,T2EXの開発で強く意識したのは,「軽さ」および「コンパクトさ」だという.T-Kernel 2.0とT2EXを組み合わせても,現在の標準的なフラッシュROM内蔵マイコン(いわゆるフラッシュ・マイコン)に格納可能なデータ量にプログラムを収めなければならない.例えばT2EXのファイル管理機能は,データ・サイズだと100Kバイト弱になっている.T-Kernel 2.0と合わせて実装したとしても,必要なメモリ容量は200Kバイトに満たない.情報処理機器向けOSの代表であるリナックス(Linux)と比べると,必要なメモリ容量は1/10以下で済む.
T2EXのソース・コードを一般公開することは,リアルタイムOS向けの本格的なミドルウェアとしては初めてのことだという.ミドルウェアは通常,断片的な無償のソース・コードを集めてくるか,あるいは有償のミドルウェアを購入することが一般的である.T2EXのソース・コードはかなりの分量で,有効行だけで16万9158行に達する(図4).
図4 T2EX(T-Kernel 2.0 Extension)とT-Kernelのソース・コードの分量
●電子ペーパの開発キットを展示
展示会では,TRON OSまたはT-Kernelを搭載した製品をパネル写真で紹介していた(写真5).カーナビ,ディジタル一眼レフ・カメラ,オフィス複合機,電子ピアノ,FA(Factory Automation)用プロセス・コントローラ,ディジタル・タコグラフ,ディジタル・オーディオ・アンプ,ラベル・プリンタ,カラー・インクジェット・プリンタ,タクシーの料金メータ,ビデオ・カメラ,人工衛星などの採用事例が展示されていた.
写真5 TRON OSまたはT-Kernelを搭載した製品のパネル展示
また展示ブースでは,電子ペーパの開発キットが目を引いた.丸文が開発キット「アクアマリン」を展示していた(写真6).2インチ型基板の開発キットと6インチ型基板の開発キットがあり,いずれもモノクロ電子ペーパ・パネルとマイコン・ボード,統合開発環境,サンプル・コード,評価用アプリケーションを同梱してある.価格は2インチ型が6万9800円,6インチ型が9万9800円である.
ふくだ・あきら
フリーランステクノロジーライター
http://d.hatena.ne.jp/affiliate_with/