5cm角の制御用コンピュータやタッチ操作用ライブラリが付属するJava実行環境に注目 ―― TRONSHOW 2010レポート

北村 俊之

tag: 組み込み

レポート 2009年12月15日

 T-Engineフォーラムと社団法人 トロン協会は,2009年12月9日~11日の3日間,東京ミッドタウン(東京都港区)にて,T-EngineやユビキタスID技術に関する活動を紹介する技術展示会「TRONSHOW 2010」を開催した(写真1写真2).本展示会では「ユビキタス社会を開く鍵がここにある!」をテーマに,トロンプロジェクトの研究成果が多数紹介された.トロンプロジェクトがユビキタス・コンピューティングに焦点を絞った研究を始めてから,まもなく8年になる.この間,uIDアーキテクチャ(識別したいモノや場所に固有の番号ucodeを割りふり,その番号をもとにモノや場所と関連する情報を管理する仕組み)の提案や,uIDアーキテクチャに基づいた応用プロジェクトを行ってきた.

 本展示会は,「次世代リアルタイム・システム技術展」と「ユビキタス・コンピューティング展」で構成されている.前者では,採用事例が増えつつある組み込みOS「T-Kernel」にかかわる組み込み関連の技術が,後者では,実用化が始まったユビキタスID技術の最新の研究成果や事例などが紹介された.

 また,12月12日には,障害者や高齢者を支援する情報通信技術を紹介する「トロンイネーブルウェアシンポジウム(TEPS2010)」も開催された.


写真1 オープニング・セレモニの様子

 


写真2 会場受付の様子

 

●RFIDの利用領域は物流・商品管理からCRMへ拡大

 NECは,13.56MHz,953MHz,2.4GHzの主要3周波数帯をカバーし,かつ現在市場で使用されている6種類の主要プロトコルに対応したRFIDマルチリーダ/ライタを展示した(写真3).RFIDタグを「かざす」だけで読み書き可能.こうしたリーダ/ライタが小型化,軽量化,低価格化されることで,店舗や施設に置かれるPOS(Point of Sale)端末やPOP(Point of Purchase)端末などに組み込みやすくなる.また,パソコンやテレビ,携帯電話,ゲーム機などへ組み込むことも想定している.これにより,RFIDの利用領域はこれまでの物流・商品管理から,企業と消費者が直接つながるCRM(Customer Relationship Management;顧客情報管理)の分野へと拡大するという.

 展示ブースでは,本マルチリーダ/ライタとT-Kernelを搭載した携帯端末をUSBケーブルで接続し,各種RFIDタグが読み取り可能なことをアピールしていた.


写真3 USBケーブルで携帯端末と接続しているNECのRFIDマルチリーダ/ライタ

 

 

●T-Kernelを搭載した5cm角の制御用コンピュータを展示

 パーソナルメディアは,組み込みシステム向けのリアルタイムOS「T-Kernel」を搭載した小型の制御用コンピュータ「Teamacaron(ティーマカロン)」を展示した(写真4).カバーの外形寸法は50mm×50mm×16mm,コネクタ突起部を含む外形寸法は52mm×57mm×22mm.小型機器への組み込みを考慮して,半開放型のカバーを採用した.

 本コンピュータは,2004年に同社が発売したキューブ(立方体)型コンピュータ「Teacube/VR5701評価キット」のコンセプトを継承しつつ,LSI技術を用いて小型化,低消費電力化した製品である.本コンピュータは,ARM11コアを内蔵するNECエレクトロニクスの携帯機器向けメディア・プロセッサ「EMMA Mobile 1-D(NECエレクトロニクス製)」を搭載し,その上でT-Kernelが稼働している.また,プロセス管理やファイル管理を行うソフトウェア「T-Kernel Extension」やTCP/IPプロトコル・スタック,GUI機能に対応した「PMC T-Shell」などのミドルウェアを搭載している.

 周辺機能として,RGBモニタへの出力や,LAN(Ethernet),USB,microSDカード,2チャネルのシリアル・ポートなどの入出力用インターフェースを備えている.例えば,液晶モニタなどのパソコン周辺機器に接続できる.USBインターフェースについては,マウスやキーボード,USBメモリ,USBカメラ,RFIDタグ・リーダなどがつながる.デバイス・ドライバやアプリケーション・ソフトウェアを開発するためのEclipseベースの統合開発環境が付属する.


写真4 パーソナルメディアの「Teamacaron」

 


●タッチ操作用ライブラリが付属するJava実行環境をデモ展示

 アプリックスは,マイコン向けのJavaプログラム実行環境「nanoJBlend」を使ったデモンストレーションを示した(写真5).nanoJBlendを利用すると,オブジェクト指向でJavaプログラムを開発できる.メモリ管理などは不要.また,CPUアーキテクチャに依存しない環境を実現できる.I/Oポートへのアクセスや割り込みにも対応する.グラフィックス・ライブラリなど,組み込みシステム開発に必要な機能はクラス・ライブラリとして提供される.

 本環境にはタッチ・パネル付き液晶ディスプレイ用のGUIパーツ,およびライブラリが用意されている.これを利用すると,8ビット・マイコンや16ビット・マイコンとITRONをベースに,タッチ操作に対応したプログラムを容易に作成できる.入力用GUIパーツには押しボタンやスライダ,回転式スライダなどが,出力用にはアナログ式回転計やディジタル数値,グラフなどがある.表示するGUIパーツの画像はPNG形式とJPEG形式に対応する.


写真5 アプリックスの「nanoJBlend」によるタッチ操作アプリケーション

 

●T-Kernel上の.NET Micro Frameworkでアプリが動作

 コアは,T-Kernel上の.NET Micro Frameworkで動作するアプリケーションの事例を紹介した(写真6)..NET Micro Frameworkは.NET Managedが動作する最小のファームウェアであり,T-Kernelに移植することにより,WPF(Windows Presentation Foundation)やマルチタッチ,ジェスチャ機能などのユーザ・インターフェースを構築できる.また,HTTPやHTTPSなどのWebサービスとの連携機能や,DPWS(Device Profile for Web Service)を活用したローカル・ネット内のアドホック・ネットワーク機能を用いることで,Visual Studioでもアプリケーションを開発できるようになる.これにより,従来,組み込み分野のエンジニアしか開発できなかったアプリケーションを,Windows系のソフトウェア・エンジニアでも開発しやすくなるという.

 展示ブースでは,インターネット上でイメージ画像を公開しているWebサービスとの連携により,イメージ画像をリスト形式で表示したり,画像選択や表示を行うアプリケーションのデモンストレーションが行われていた.ターゲット・ボードには,シマフジ電機のARMボード「SEMB-MP201」を使用した.このボードにはNECエレクトロニクスのMP201プロセッサ(ARM 926 EJ-Sコア)が搭載されている.


写真6 コアが展示した,T-Kernel上の.NET Micro Frameworkで動作するアプリケーション

 

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