テスラからEVエコラン,EVスクータまで多彩なEVが集合 ―― 全日本 袖ヶ浦EV50Kmレース大会(1)
デッキから見ると,すでにコース上に数台のEVが走っていた.車とドライバのための慣らし運転なので,のんびりした雰囲気がコース上にもピットにも漂っている.どのタイミングでコースに入ってもいいし,出てもいい.走りやすい隙を狙って,1台,また1台とコースへ入っていく.すぐにピットに戻ってくる車もある.とはいえ,テスラ(米国シリコンバレーのベンチャ企業であるTesla Motors社が開発した市販スポーツ車)は,最初から迫力のある走行だった(写真3).今回のレースに参加した中で唯一のEV-1クラスの車種である.もっとも高出力のモータと大容量のバッテリを積んでいる.
フリー走行の15分間が経過すると,そのまま公式予選の時間に移った.この時間も15分間だ.ピットにいったん戻る車もあるが,スタンドから見ている人にとっては,なんら変化はない.公式予選の決められた15分間で,1周のラップタイムが早い順に決勝レース時のスタート・グリッド位置が決まる.各車には,小型の発信器(トランスポンダ)が付けられており,コースに設置された計測装置で,各車のラップ・タイムや周回数などが自動集計されるようになっている.
ふと気付くと1台がまだコースに出ていない.しかも,前回,ダントツの速度で優勝した井土 智洋 氏のテスラだ.棄権? 決勝でテスラが1台ではさびしい.場内放送では,井上 智洋 氏はテスラともども会社には来ているといっている.
予選の正式発表はまだだが,速報ではドライバが砂子塾長のテスラ(東京自動車大学校チーム)がトップ・タイムで決勝のポール・ポジションを獲得したらしい,と放送している.2位~6位が日産リーフ,7位と8位が三菱i-MiEV G,9位と10位がコンバージョン・カー,11位と12位がi-MiEV(旧タイプ)となった(写真4~写真6).なんだ,基本スペックの順位そのままではないか.レースの駆け引きはないが,不自然でもない.50kmのレースになると,どう変わるのだろう?
●1人乗りエコラン・レースのEV版を開催
シングル・シータとは座席数が1,つまり1人乗りということである.エコランとは,もともとホンダが行っていた「エコノパワー燃費競技会」(第1回は1981年)の通称だった.ただしそのレースは,50ccエンジン搭載車と1リットルのガソリンでどれだけの距離を走れるか,という競技である.このレースは,一般人だけでなく,大学や高専,専門学校,高校,中学の学生も参加できるレースとして盛り上がり,現在も続いている.このレースのEV版が「EVエコラン・レース」である.
学校からの参加だと,レース場が遠いと移動距離が長くなり,費用がかかるため,地方開催のレースがいくつか用意されているらしい.そのため,規約がレースによって異なっている.そして,同じ車体で異なるレースに参加しようとすると,規約に適応できなくて走行できない場合がある,という問題点が指摘されていた.最近になって各競技主催者が規約を統一していかなくては...,という機運が高まってきているという.
このレースにでる車は,写真7のような形をしている.
(第2回に続く)
まの・もとき