中小メーカを巻き込んで産業振興,台湾が"EV"に熱い国になっていた! ――The 2nd Taiwan International Electric Vehicle Show(EV TAIWAN 2012)

古川 治

tag: 組み込み 電子回路

レポート 2012年5月14日

●EVビルダ向け部品が出そろう

 台湾製リチウム(Li)イオン電池のメーカも多数出展していた.こちらは主に電動バイク向け(48V以下)の製品が多く見られたが,話を聞くとNEV向けやEV向けの96V~350Vクラスも問題なく対応できるとのことだった.台湾ではオートバイの業界も電動化に熱心である.なお,本展示会は「The 7th Taiwan International Motorcycle Show(2012 MOTORCYCLE TAIWAN)」と同時開催だった.

 展示品はEV車の主要部品だけでなく,EV車に必要な電動ブレーキ・バキューム・ポンプや防水型高電圧用コネクタなど,さまざまなパーツが展示されていた(写真8写真10).これらは,コンバージョンEVの製作には必須となる部品だ.

 

写真8 DIJIYA Energy Saving Technology 社の展示

DIJIYA Energy Saving Technology 社はリン酸鉄型リチウムイオン電池の展示に力を入れていた.

 

写真9 Phoenix Silicon International(PSI)社のブース

Phoenix Silicon International社の展示もリン酸鉄型リチウムイオン電池が中心.

 

写真10 YT STABLE Tech.社のブース(左はYT社のDoreen Li氏,中央は筆者,右はYT社のBernice Wu氏)

YT STABLE Tech.社は電動バキューム・ポンプの専門メーカ.同社の製品は,筆者の会社の「ボルトオンEVキット」にも採用している.安定性が高く,とても良い.現在,さらに静かで低電流の新型ダイアフラム・タイプを供給してもらっており,現在,テスト搭載中.今後はEV用パワー・ステアリング・ポンプなども発売するという.筆者がとても注目している企業の1社である.

 

 

 

●EV用モータの調達では台湾企業に期待

 今回の筆者の目的の一つは,モータや電池など,コンバージョンEV製作のための主要パーツの調達であった.日本のコンバージョンEVは,安価で手軽なDCブラシ・モータとコントローラを組み合わせて使うのが主流である.いわゆるゴルフ・カートの技術の派生である.これだと車両や電池との協調制御が行いにくい.ただ動かすという点では使いやすいが,単純なゆえにEVの肝である各制御の研究・開発を行うには物足りない.そしてブラシ・モータに対する"今さら感"もある(ブラシは摩耗するので寿命があり,定期保守が必要).

 そこで,EV用に開発されたブラシレス・モータとインバータ/制御モジュールの組み合わせをベースとして利用したいと考えた.以前に海外製品でこれらを調達したことがあるが,高額なので継続的な取り扱いが難しかった.日本製もあるが,残念ながら中小企業が調達するのは難しい.リチウムイオン電池についても同様な状況がある.中小企業ゆえに相手にされない(?!),というのはきわめて残念だ.

 そして,製品のコストと性能のバランス,オープンな取引を期待できるのが台湾企業なのである.例えばFUKUTA社のブースで筆者の活動と事業の話をすると,総経理特助のJacky Chang氏が対応してくれた(写真11).ていねいな商品説明と今後の進行について,筆者の考えと要求を既に知っていたかのように,具体的に話が進んでいく.何より,進みたい方向に背中を押された気分になり,とてもうれしかった.日本の中小企業に対して希望の光をもらったようだった.

 

写真11 どこのブースでも気持ちよく商談ができた

 

 他の台湾企業とも商談を行ったが,要求に対してできるだけ応えようとする姿勢はどこの会社も同じであった.日本のビジネスでは「余計な冒険をしない"待ち"のスタイル」が一般的となってしまっている.「まずは冒険してみる"攻め"のスタイル」の大切さをあらためて気づかされた.まるで「あなたも私たちもベンチャ企業.だから,あなたのチャレンジを支持する」と言われている気がしたのである.

 

●サンプル販売にも積極的で試用しやすい

 本展示会は,会場規模はさほど大きくないが,トレード・ショウとしてとても意義深い内容だった.これは,台湾のトレード・ショウならではのことかもしれない.

 ここで展示されている製品は,その多くがすでに研究機関やEVビルダに供給されていたり,商品化が完了しているものである.さらには,「あったらいいな」というものがカタチとなり,いつでも製造可能な状態になっている.また,サンプル販売などにも積極的で,比較的手軽に製品を試用することができる.

 日本の展示会では「ロットの発注をくれれば製造を検討する」とか,価格未定・発売時期未定など,参考出品のオンパレードなどだが,それとはまったく対照的だった.彼らは常に"攻め"なのだ(写真12).

 

写真12 展示会の会場の様子

 

 

●なぜ台湾製品の品質が上がったのか

 筆者は十数年前,カー用品で台湾企業との取引を行った経験がある.その当時の製造技術と品質はお世辞にも良質のものが多くなく,台湾製とは「そういうものだ」という認識だった.しかし,今ではまるで同じ国とは思われないほど品質が向上していた.同行した台湾の友人によると,「台湾が得意とする半導体製造技術が,EV用部品製造技術に応用されている」とのこと.製造が台湾の得意な分野になったのであろうか,その自信は確かなようだ.日本では垂直統合型の大企業が技術力をけん引する構図だが,台湾企業はそのような垂直統合型の事業形態には興味がないように見える.「スモール・ハンドレッド型のベンチャたちが,水平分業の黒子に徹してグローバルの雄を目差す」というのが,台湾のスタイルのようだ.

 「開放的」,「積極的」,「スピード感」の台湾.これからEVの分野でも注目されていくのは間違いない.日本のベンチャにとっても,協業のパートナとして台湾企業は魅力的だと思う.

 

ふるかわ・おさむ
(株)オズコーポレーション 代表取締役

 

 

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