AndroidとT-Kernel / μT-Kernelを組み合わせた展示に注目 ―― TRONSHOW 2012
●NFCタグに対応した業務用Android携帯端末を展示
ユーシーテクノロジは,NFCタグ・リーダを搭載した業務用Android端末「UC110」を展示した(写真5).タッチ・パネル付きの4インチ型ディスプレイを搭載する.解像度は800ピクセル×600ピクセル.タッチ・パネルは,スマートフォンなどでも採用されている静電容量方式.
本端末は,アプリケーション・プロセッサ上でAndroidとリアルタイムOSのμT-Kernelを動作させるハイブリッド分散OSシステムを採用している.例えばセンサや専用ハードウェアの制御はμT-Kernelで実現する.通信機能は,3G音声通話/データ通信,Wi-Fi,Bluetoothに対応する.3G通信は着脱可能な通信モジュールによって実現しており,3G通信を利用できない屋内などではモジュールをはずした構成で動作させる.
本体背面には,NFCタグを含む13.56MHzのRFIDリーダ/ライタを搭載している.ICタグを活用した会員カード・サービスや商品管理,屋外での保守管理,トレーサビリティ管理などの用途に利用できる.専用ハードウェアを入れるためのスロットが用意されており,例えば特殊な無線通信機能やセキュリティ機能などを追加する際にこのスロットを使用する.
さらに,GPSセンサ,3軸の加速度センサ,方位センサ,ジャイロ・センサ,気圧センサ,照度センサを搭載する.気圧センサを使えば高度を判定できるので,建物の階数を認識することも可能.本体正面に30万ピクセル,背面に500万ピクセル(照明用LED付き)のカメラを備えている.正面のカメラはハンズフリー・テレビ電話として利用できる.
●ルネサスのSHやRXを搭載したLCD付き開発・評価ボードを展示
コアは,液晶ディスプレイ(LCD)を搭載した開発・評価ボード「松ASURA」,「竹ASURA」などを展示した(写真6).
「松ASURA」は,CPUとしてルネサス エレクトロニクスの「SH7264(動作周波数は144MHz)」を搭載する.またメモリとして64MバイトのフラッシュROM,およびSDRAMを,入出力インターフェースとしてEthernetポート,シリアル・ポート(3チャネル),USBインターフェース(ホスト,ターゲット)などを備えている.OSはT-Kernel.アイ・エル・シーのGUIライブラリ「GENIFA3」を搭載しており,「GENWARE3スタータキット」を使えばGUIアプリケーションも開発できる.米国Microsoft社の.NET Micro Frameworkにも対応する.
「竹ASURA」は,CPUとしてルネサスエレクトロニクスの「RX62N(動作周波数は100MHz)」を搭載する.また,メモリとして512KバイトのフラッシュROM,96Kバイトの内蔵SRAM,16MバイトのSDRAMを,入出力インターフェースとしてEthernetポート,シリアル・ポート(2チャネル),USBインターフェース(ホスト,ターゲット)などを備えている.OSはμT-Kernel.こちらは,アイ・エル・シーのGUI開発環境である「GENWARE-Lite」に対応する.
いずれの開発・評価ボードも,特殊なサウンドの出力に対応したCRI・ミドルウェアのサウンド再生ミドルウェア「かるイイ音」をサポートしている.
●家電とつながる小型の組み込みサーバ/クライアント・システムのデモを紹介
龍谷大学・長谷研究室は,パーソナルメディアのT-Engine/SH7727開発キットを利用した家庭用小型組み込みサーバ/クライアント・システムを展示した(写真7).本システムの応用事例として,例えば家庭内個人認証システムが考えられる.T-Kernel/Standard Extentionで動作するHTTP,FTP,SNTPサーバ/クライアント・アプリケーションと各種センサを連携させ,誰が(人),いつ(時間),どこで(場所),何を操作したかのログ(行動履歴)を収集して個人認証に役立てるという.
同研究室では,ユーザや使用環境に応じたユーザ・インターフェース設計,および単純で高機能な入出力機器の研究も行なっている.操作時のヒューマン・エラーを検出し,誤操作の原因の排除や低減を目指している.こうした研究に基づいて,GUIを改善した家電リモコンや,筐体のひずみを利用した入力インターフェースなどを開発した.
きたむら・としゆき