AndroidとT-Kernel / μT-Kernelを組み合わせた展示に注目 ―― TRONSHOW 2012
ユビキタス環境の実現に向けて,トロン・プロジェクトの研究成果を一堂に集めて紹介する「TRONSHOW 2012」が,2011年12月14日~16日の3日間,東京ミッドタウン(東京都港区)にて開催された(写真1).ユビキタス・コンピューティングについての概念は広く認知され,基本的な研究はこの10年でかなり進んでいる.RFID(Radio Frequency Identification)技術が標準化され,低価格の製品が市場に供給されている.また,アクティブ・センサ・ネットワークの実用化も進んでいる.
今回で28回目を迎える本シンポジウムは,ユビキタス・コンピューティングに対して,最先端の研究を紹介すると同時に,将来のあり方(技術面だけでなく,社会や制度面も含めて)を考える場となっている.
今年は,日本の東日本大震災やタイの洪水,トルコの大地震など,自然災害が世界的に発生した年だった.こうした状況を鑑み,本シンポジウムでは新たなユビキタス・コンピューティングの応用として,平時だけでなく有事に際して,こうした技術がどのように役立つのかにも焦点を当てていた.ユビキタス・コンピューティングを災害対策にどのように生かせるのか,生かすために今後何をしていかなければならないのか,などについて議論が行われた.主催はT-Engineフォーラム.
●運転状況に応じて,表示情報を切り替える
富士通グループは,ARM Cortex-A9コア,2D/3Dグラフィックス処理回路,四つのビデオ入力,最大五つのディスプレイ出力など,車載機器で必要とされる画像表示機能を1チップに集積したLSI「MB86R11/MB86R12」を展示した(写真2).例えば速度などの車両情報,カメラ映像などの視覚補助情報,カー・ナビゲーションなどの運転支援情報を,運転状況に応じて切り替えて表示するような用途を想定している.
四つのビデオ入力ポートでは,複数の映像入力を同時に処理できる.最大1280ピクセル×720ピクセルの入力機能,拡大・縮小機能,動き適応インターレース-プログレッシブ変換機能などを備えており,低ノイズの映像を生成できる.ビデオ入力ポートの一つは,最大1920ピクセル×1080ピクセルのインターレース入力に対応しており,ディジタル・テレビの映像をそのまま入力可能.内蔵ディスプレイ・コントローラは,八つの階層表示と階層間ブレンドの機能,ディザ機能,ガンマ補正機能を備えており,多様な解像度,色特性に対応できるとしている.
「MB86R12」については,1本のケーブルを使い,最大3Gbpsのデータ転送速度で映像データ,制御信号,電力をいっしょに伝送できる.電流変化を利用して伝送する電流差動伝送インターフェース(CML:Current Mode Logic)を採用している.
●Android端末用の周辺機器をT-Kernelで開発
パーソナルメディアは,リアルタイムOSであるT-Kernel 2.0を用いてAndroid用周辺機器を開発するための開発・評価キット「T-Kernel for Android Open Accessary」を展示した(写真3).本キットは,ARM11コアを搭載した開発・評価用ボード,T-Kernel 2.0のソフトウェア開発キット,USBドライバ,周辺機器を開発するための入出力ドライバ,サンプル・アプリケーションなどで構成される.
付属のUSBドライバは,本評価キットで定められたプロトコル処理を自動的に実行し,Android搭載端末とT-Kernelを搭載した周辺機器の間に通信路を構成する.ユーザは仕様を意識することなく,周辺機器やアプリケーションのデータ処理の開発に専念できるという.Androidが苦手とするリアルタイム処理の制御にはT-Kernelを利用する.これにより,AndroidとT-Kernelの双方のメリットを生かした組み込み機器を開発できるという.応用例として,Android搭載端末で操作できる血圧計などのヘルスケア製品,ディジタル・サイネージ,券売機,AV機器,情報家電,および住宅やビルといった設備機器などが考えられる.
同社のブースでは,スムーズに高速なページめくりが行えるiPad用のPDFリーダ「Smooth Reader」も展示していた(写真4).縦書き対応,見開き2ページ表示,リンクからのジャンプ,しおりなどの機能を備えている.