MicrosoftのKinectの技術概要やIBMの次期スパコン用プロセッサなどが登場 ―― Hot Chips 23
高性能半導体チップに関する技術講演会「Hot Chips(A Symposium on High Performance Chips) 23」が米国カリフォルニア州Palo AltoのStanford Universityで8月17日~19日に開催された(写真1).米国Microsoft社は,据え置き型テレビ・ゲーム機「Xbox 360」用のモーション・センサの要素技術を公表した.また,米国IBM社は,次期スーパコンピュータのプロセッサを発表した.
●Microsoft社はモーション・センサ「Kinect」の要素技術を公表
Microsoft社が要素技術について講演したモーション・センサ「Kinectセンサ」はもともと,テレビ・ゲーム機器の入力デバイスとして開発されたものである.USBポートを備えていることから,パソコンとUSBケーブルで接続してデバイス・ドライバをインストールすることで,パソコンのUSB入力デバイスとしても使える.この特徴を利用し,パソコンにKinectを接続して研究開発や趣味などに活用する動きが活発である.Kinectセンサを購入したユーザは,ゲーム・ユーザよりもパソコン・ユーザの方がはるかに多いと言われているくらいだ.
そのKinectセンサだが,ハードウェアに大きな特徴がある(図1~図3).人間の動き(ジェスチャ)を3次元的に捉えることができる.Kinectセンサは対象物までの距離情報(奥行き情報)も採取しているからだ.このために赤外線発光の半導体レーザを搭載し,赤外線を照射して反射光を赤外線カメラで撮影している.また4本のマイクを搭載しており,4チャネルの音声入力が可能である.
●IBM社が次期スパコン用プロセッサを発表
IBM社は,次期スーパコンピュータ「Blue Gene/Q」のプロセッサを発表した.「Blue Gene/Q」は,20P(ペタ)FLOPSを性能目標として開発中のスーパコンピュータである.1個のプロセッサと16GバイトのDDR3 DRAMのメイン・メモリをまとめたCPUモジュール(Computeカード)を基本単位とする(図4).32個のCPUモジュールと高速入出力リンクをまとめたモジュール(「ノード(Node)」と呼んでいる)を16個×2プレーンのユニットとしてラックに収納する.つまり,1個のラックは1024個のプロセッサを内蔵する.
本プロセッサは18個のCPUコア(「A2プロセッサ・コア」と呼んでいる)を内蔵するマルチコア・プロセッサである(図5).実際に演算を処理するのはこのうちの16個のCPUコア(物理番号0番~15番)であり,1個のCPUコア(物理番号は16番)はOSをハンドリングするコア(サービス・コアと呼んでいる),もう1個のCPUコア(物理番号は17番)は冗長コアである.冗長コアは,いずれかのコアが不良だった場合に論理番号の割り当てを交換して使う(図6).
プロセッサの動作周波数は1.6GHz(電源電圧は0.8V),ピーク演算性能は204.8GFLOPS,消費電力は55Wである.動作周波数を1.6GHzと低めにとどめることで消費電力を抑えていることが分かる.CPUコアは64ビットのPowerアーキテクチャで,4ウェイのマルチスレッディングに対応する(図7).またCPUコアごとに,4個の浮動小数点演算ユニット(FPU)を内蔵している.