PICマイコンを使って測定ツールを作ってみよう(5) ―― ネットワークとA-Dコンバータを利用してさまざまな場所の温度を測る

中西 紫朗

tag: 組み込み 電子回路

エレキ系DIY 2011年8月11日

●複数点の温度を記録して分析

 VB画面を図12に示します.

 

図12 VB画面の表示例

 

 今回はプログラムを簡素にする目的で,機能を制限しています.

 まず,マスタでしか動作しません.スレーブまで動作させると,RS-485ネットワークからの応答を待つ必要があり,受信処理が複雑になります.送信先として一応,スレーブも指定できますが,計測開始ボタンを押すと「マスタ以外には対応していません.」とのメッセージが現れます.

 次に,VB画面では温度計のほかに湿度計や電力計も表示されていますが,これはまだ対応していません.次回以降に対応する予定です.

 タイマ処理はVBのほうで行っています.READ命令のフォーマットでは,計測間隔と一度に送れるデータ数も可変になっていて,PICマイコンのほうで自動的に一定時間間隔で複数のデータを送出できるようにしています.しかし今回は,VBが内部タイマで,同じREAD命令を1秒間に1回発行し続けます.しばらくはこのスタンドアローン・モードで説明しますが,今後,適当な時期にPICマイコンのほうで自動的に送出するように変更する予定です.

 グラフに目盛りがあると見やすいのですが,今回は数値を横に表示して,その替わりとしています.マスタやスレーブの各オブジェクトを配列変数にすると,プログラムがすっきりし,修正も少なくてすみ,バグも減ります.オブジェクトの配列変数化については,次回に説明する予定です.

 VB画面には四つのコマンド・ボタンがあります.温度計測の開始ボタンと停止ボタン,ログの開始と停止を交互に行うボタン,リセット・ボタンです.計測開始ボタンを押す前に送信先を選択します.送信先はマスタだけですが,一応マスタを選択します.開始ボタンを押すと,グラフに温度が赤で表示されます.1回受信するごとに変数Nが1カウントアップされ,温度は配列内に収められます.配列は8000万の要素数が定義されていて8000万秒分あり,2年以上を記録できます.それだけの長期間に渡ってパソコンを動作させっぱなしにすることはできませんが....

 PICマイコン基板は,VBから計測開始のREAD命令を受け取ると,どのメニューにしていても,上の行に READ #: と表示されます.ログ開始ボタンを押すと,ボタンの表示がログ停止に変わり,ログがファイルに記録されます.ファイル名は温度記録YYYY-MM-DDとなり,同じ日なら実行するたびに,同じファイルに記録データが追加されます.1秒ごとにファイルがOPENされて時間と温度が記録され,CLOSEされます.

 VBのタイマ処理は,タイマ・コントロールで行います.ツール・メニューからタイマを選び,FORMに貼り付けるだけです.RS-232-C送受信を扱うMSCommコントロールも同じで,張り付けるだけで実行時にはコントロールは表示されません.タイマのインターバル・プロパティでタイマ処理の起動間隔を設定します.単位がms(ミリ秒)なので,ここには1000(1秒)を設定します.

 室内温度はさほど変化しないので,短時間のグラフは図12のように横一直線になります.時間軸を長くとると,周期的に変化していることが分かります.特に冷房機器を働かせていると,周期的な変動が出てきます.これは,空調機器が温度調整を行っている証拠で,その部屋にマッチしたキメの細かい制御を行っていないとこうした周期的変動が大きくなります.変動の幅が大きいほど無駄な電力を使用していることになり,これを削減すれば大きな省電力につながります.

 およそ制御というものは,多かれ少なかれこういう変動を作り出します.また人間は,高い温度の部屋に入ると,自動的に体の表面積を広げるなどして,その温度に適応しようとします.機械に比べて適応性があるわけです.しかし,これは個人差が大きいものです.これを個人に合わせて調節すれば,空調不足や過冷房などが少なくなります.特に,部屋の中の温度差が問題になります.温度差を少なくするには,扇風機をどこに置けばよいか,いつ回せばよいかが,実験で確認できます.

 今回の温度計測装置を部屋に何台か設置すれば,各点での温度が測定できます.集められたデータを分析すれば,冷房が動作しているとき,朝方,日中,夕方,夜などでの各部の温度が分かります.心拍計や肌温湿度計,肌表面抵抗計,照度計や太陽光電池と組み合わせれば,その人にとっての適切な温度が環境によって変動することが分かります.

 多数の人が集まる場所では,誰にでも快適な環境を作り出すことはできませんが,最大公約数的な環境は作り出せます.空間全体の温度を調節する冷房機器と,ある場所だけ調節する扇風機などを組み合わせれば,ある程度快適な空間になります.そのためには,空気流量を測定できるセンサが必要になります.まだ高価ですが,オムロンなどのメーカから販売されています.空気の流れにより,部屋の各所の温度がどう推移するかが分かります.

 冷房病などの被害を減らすには,このような多元的な計測が必要になります.将来のオフィスは,このような計測が日常的に行われ,人間にとって本当に快適な空間が提供されるようになるのでしょう.冷房を行っているのに,冷えすぎで足温器を使わないといけない,といった矛盾も解消されることでしょう.

 

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