組み込み技術者のための資格試験，傾向と対策(7) ―― OCRES（OMG認定組込み技術者資格試験）

　「組み込みの開発現場で，どれくらいUML（Unified Modeling Language）は使われているのですか？」とよく聞かれます．そこで筆者は，複数の会社の人が集まるオープン・セミナや展示会などのミニ・セミナの場で，集まった方々に「UMLを使っていますか？」と質問するようにしています．「使っている」と答える人は，5～6年ぐらい前までは10人中1人いるかいないか程度でしたが，最近では，使っている人が4～5割に上る場合もあります．筆者の主観ですが，UMLは確実にじわじわと浸透してきているように思います（集まる人によって，かなりばらつきはある）．

　UMLを使っている（あるいは使っていない）理由を聞くと，以下のような答えが返ってきます．

（1）UML未使用派
・既存のシステムをベースにした案件ばかりで，UMLを描くことなどない．過去のソフトウェア資産が全く使えない新規案件でもないかぎり導入できない（今どき，そんな案件もない）．
・現場ではそろそろ必要性を感じているが，上（マネージャ層）にはそういう意識がない．上流の抜け漏れは，結局，現物合わせ，切り貼りでしのいでいる．
・2～3人の小さなプロジェクトなので全体が見渡せており，UMLの必要を感じない．それより早くコードを書いて，動かせ！ と言われる．
（2）仕方なく導入派
・海外へのオフショアで，必要になったので．
・客先の要望で，仕方なく...．
（3）UML積極活用派
・全体を見渡すことが難しい大規模な分散システムを開発しているので，オブジェクト指向設計とUMLで表現することが重要である．
（4） 様子見派
・同業他社の様子見中（そのためにセミナに来た）．

　便宜上，（1）UML未使用派，（2）仕方なく導入派，（3）UML積極活用派，（4） 様子見派の四つに分けてみましたが，一番多く感じたのが，（4）様子見派でした．また，たまに，こんな話も聞きます．

（5）UML導入失敗派
・経営者の鳴り物入りで，大金かけてオブジェクト指向とUMLをベースとした高価な設計支援ツールと教育を実施した．が，ツールは使えるようになったが，設計レベルでオブジェクト指向の頭になれなかった．結局，設計支援ツールのすばらしい機能（？）を生かせなかった．夢のような理想論に踊らされず，急がず焦らず地に足つけて，が良いと思う．

　成功談，失敗談も含め，いろいろな話を聞きますが，UMLはじわじわと浸透しているのが現状のように感じます．前置きが長くなりましたが，今回は，オブジェクト指向やUMLに重点をおいた試験「OCRES（OMG認定組込み技術者資格試験，オークレスと発音）」について解説します．

●オブジェクト指向やUMLに重点を置いて組み込み技術者のスキルを測定

　OCRESは，組み込み技術全般を対象とした試験ですが，OMG（Object Management Group）^注1が行っている資格試験だけあって，オブジェクト指向やUMLに重点を置いているのが特徴です．OCRESは世界共通の資格試験であり，日本ではUML教育研究所（UTI）が試験を実施しています．OCRESでは，リアルタイムOSとリアルタイム・システムの設計やプログラムの基本，さらには分散システムに関する知識が問われます．また，UMLの最新仕様である「UML2.0」に準拠した内容となっています．

注1：OMG（Object Management Group）とは，コンピュータ・アプリケーションのアーキテクチャや技術に関する標準を開発する非営利団体．UMLなどの標準化を進めている．

●OCRESはOMG認定資格試験の一部

　OCRESは，OMG認定資格試験（OMG Certification Program）の一部として体系化されています（図1）．OMG認定資格試験は，「OCUP（OMG認定UML技術者資格試験プログラム，オーカップと発音）」と「OCRES（OMG認定組込み技術者資格試験）」のほかにも，「OCEB（OMG認定BPMエキスパート資格試験プログラム，オーセブと発音）」や「OCSMP（OMG認定システムモデリング技術者資格試験プログラム，オーシーエスエムピーと発音）」がありますが，ここではOCRESを中心に説明します．

図1　OMG認定資格試験の構成（OCRESを中心に）

　OCRESには，上級レベルの 「OCRES Advanced」と中級レベルの「OCRES Intermediate」とがあります．その下には，「OCUP Fundamental」が位置しています．すなわち，OCUP Fundamentalは，中・上級のOCRESとOCUPのベースとなっています．OMG認定資格試験では，上位レベルの認定を受けるには，当該するレベルの試験合格に加えて，その下位のレベルの試験すべてに合格していることが必要条件となっています．例えば，OCRES Intermediateの試験に合格して認定を受けるには，OCUP Fundamentalが必須です．OCRES Intermediate試験そのものはOCUP Fundamentalに合格していなくても受験できますが，合格しても，OCUP Fundamentalを受験して合格するまでOCRES Intermediateと認定されないので注意が必要です．詳細はUML教育研究所のWebサイトを参照してください．