組み込み技術者のための資格試験,傾向と対策(7) ―― OCRES(OMG認定組込み技術者資格試験)
●出題範囲と配分
OCRESでは,それぞれのレベルに合わせて,RTOSやリアルタイム・システム,CORBA(Common Object Request Broker Architecture)注2,MDA(Model Driven Architecture;モデル駆動型アーキテクチャ)などの知識が問われます.また,OCUP Fundamentalの合格を前提にしているので,当然ながらオブジェクト指向やUML2.0仕様の知識も必要です.
注2:CORBA(Common Object Request Broker Architecture)はOMGが定めた分散オブジェクト技術の仕様であり,ネットワーク上に分散するオブジェクトとのメッセージのやり取りをするための基盤である.OCRES 試験では,組み込み向けのリアルタイムなCORBAの仕様であるCORBA/eも試験対象になる.
例えば,Intermediateの出題範囲は表1のようになっています.詳細な出題範囲やAdvanceの出題範囲については,OMGのWebページ("OMG Certified Real-time and Embedded Specialist(OCRES): Examination Objectives and Coverage")を参照してください.
表1 OCRES Intermediate出題範囲(http://www.umlcert.org/ocres/intermediate.htmlより引用)

なお,試験時間はIntermediateとAdvancedとも,90分で90問を解き,40点以上で合格です.受験費用は,それぞれ21,000円(税込)です.
●どんな人に向いているの?
オブジェクト指向やUML,モデル駆動型開発などを積極的に推進している企業や,大規模な分散システムおよび高い信頼性が要求されるシステムの開発に携わっている技術者に適しています.
●参考書や参考仕様で勉強しよう
OMGは,OCRESの出題範囲を示したWebページにて,出題範囲に対応する仕様や書籍を掲載しています.例えば,「RTOS Concepts」に対応する書籍として"Software Engineering for Real-time Systems"(1)が挙げられていますが,この翻訳書が『組込みシステムのためのソフトウェアエンジ二アリング 基礎編』(2)として国内で出版されています.同書は,タイトルにも基礎編とある通り,リアルタイム・システムの概論からリアルタイムOSの基礎について丁寧に書かれています.
著者であるJim Cooling氏が航空機の技術者だったこともあり,本書には組み込みシステムの事例として航空システムや軍事システムが使われている個所が複数あって,国内の書籍ではなかなか味わえない内容となっています(後述のコラムを参照).
なお,前述したように,OCRES Intermediate/Advancedは,基礎となるOCUP Fundamentalの合格を前提としています.そのため,OCUP Fundamentalに合格していない人は,まずそこからの受験対策が必要です.OCUP Fundamentalについては対策本が販売されており,インターネット上にも数多くの情報があるので,それらを参考にしてください.
次回は,Microsoft社の認定資格である「MCTS(マイクロソフト認定テクノロジ・スペシャリスト):Windows Embedded CE 6.0 Applications」などを取り扱う予定です.
くぼ・ゆきお
参考・引用*文献
(1)Jim Cooling; "Software Engineering for Real-time Systems", Addison Wesley, November 11, 2002.
(2)Jim Cooling;『組込みシステムのためのソフトウェアエンジ二アリング 基礎編』,アイテック,2008年7月.