原子力発電所の事故に見る安全確保とリスク対応の考え方

田辺 安雄

 3月11日は,家族といちご摘みを楽しんでいました.3時ごろ,ハウスの中でゴーと音がし,一瞬,風かと思いましたが,「地震だ」との声を聞き,農道に退避して地震が収まるのを待っていました.これが,東北の沖合を震源とし,大津波で多くの人命が失われ,第一福島原子力発電所が大きな被害に至るとは,そのときには想像すらできませんでした.その後,津波災害や福島1号機で起きた水素爆発に始まる自衛隊,消防署による必死の放水作業を見るにつけ,原子力発電所に対する自然の猛威に言葉を失うばかりでした.

 筆者はかつて技術者として原子力発電に関係し,現在は機能安全という安全の分野にかかわっています.技術者として駆け出しのころに初めて出張した福島3号機を含めて,現在も懸命の事故対応が行われているときに何を書けばよいのか迷いましたが,原子力発電所の安全対策やリスクについて一視点を伝えられればと思い,寄稿させていただくことにしました.

●沸騰水型の原子力発電の仕組み

 今回,事故が発生した,福島第一原子力発電所にある沸騰水型原子力発電所(BWR)というタイプの発電所の模式図を図1に示します.図2は原子炉で使用される燃料集合体です.

図1 沸騰水型原子力発電所の主要設備(電気事業連合会のWebサイトより抜粋)


図2 燃料集合体(電気事業連合会のWebサイトより抜粋)


 燃料集合体に束ねられる燃料棒の中には,直径が約1cm,高さが約1cmのペレットと呼ぶUO2(二酸化ウラン)の焼結体が,厚さ約1mmのジルコニウム合金の被覆管の中に積み重ねられています.8×8型燃料集合体の場合,高さが約4mの燃料棒が60本あまり束ねられており,110万kWの発電所では764体の燃料集合体が,原子炉圧力容器の中に装荷されています.

 ペレットの中で中性子によってウランが核分裂し,発生した中性子は燃料集合体の中を流れる冷却水を加熱し,発生した蒸気がタービンを回して発電します.その後,蒸気は復水器で水に戻され,ろ過されてから給水ポンプで原子炉に戻されて循環します.また,原子炉の出力を制御するために,中性子を吸収するボロンやハフニウム材料で構成された制御棒が,炉心の下部から挿入される構造となっており,制御棒の出し入れによって炉心内の中性子の量を調整します.通常の運転中は,制御棒の一部が炉心に挿入され出力の微調整に使用されますが,緊急の場合には,すべての制御棒が全挿入されて原子炉を自動停止します.

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