被災地内外の意識の差を認識しつつ,今できる支援を考える ―― 日本Androidの会 災害時支援アプリ・マッシュアップ・ミーティング 第2回レポート

みわ よしこ

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レポート 2011年4月13日

 「日本Androidの会」は,2011年3月25日夜の緊急ミーティングにて,災害時支援アプリの開発を2週間で行い,成果物を公開することを決めた.このために1週間後の2011年4月3日,品川シーサイド楽天タワー(東京都品川区)において,2回目のミーティングが開催された(写真1).アプリ開発やネットワーク・インフラにかかわる人のほか,現地での支援活動にかかわる人,地域での勉強会やICTによる地域活性化活動にかかわっている人など,約60名が参加した.ミーティングでは,前回以降の取り組みの報告や,今,被災地復興支援のために何が必要かを考える議論などが行われた.

写真1 災害支援アプリ・マッシュアップ・ミーティング 第2回の様子

 

●マッシュアップの成果

 まずアプリ開発者から,マッシュアップの現状について報告が行われた.日本Androidの会・福祉部 飯塚 康至氏は,災害発生時用の機能を持った東日本大震災への募金アプリ「payforwarding」の進捗を報告した(写真2).本アプリは,オンライン決済サービス「PayPal」を利用している.この1週間で,サンドボックス(保護された領域)で動作を確認できるところまで進んだということである.

写真2 日本Androidの会・福祉部 飯塚 康至氏

 

 外崎 雄二氏は,最寄りの避難場所を地図上に表示するアプリ「近くの避難所」の進捗を報告した(写真3).データを集積し,データベース・システムを動かすところまで終了したという.

写真3 外崎 雄二氏

 

 大阪大学の寺西 裕一氏は,遅延耐性ネットワーク(Delay Tolerant Network:DTN)とクラウドをシームレスにつなぎ,ピアツーピアのすれちがい通信を経由してTwitterへの投稿が行えるシステム「MONAC」について報告した(写真4写真5).現在は証明書付きメッセージをインターネット空間に出すことまでは行えており,ゲートウェイとの同期が行えれば,ひとまず完成と考えられるそうだ.

写真4 大阪大学の寺西 裕一氏

 

写真5 すれちがい通信システム「MONAC」の概要

 

 これらのアプリやシステムは,現在の被災地に直接役に立つというわけではない.中長期的な,次にいつどこで起こるか分からない災害への備えである.必要性は誰もが感じながら,しかし,現在の被災地のために直接役に立つわけではないことも理解している.議論は,言葉を慎重に選びながら,ぽつぽつと続けられた.

●被災地の外との格差,内での格差

 今回の東日本大震災の特徴の一つは,広い範囲が被災したことである.被災のタイプは地域によって異なる.激震・津波などの被害を多重に被った地域もあれば,液状化によって生活インフラが寸断された地域もある.同じ地域でも,地形や川の形状などの若干の違いによって,被災の程度が大きく異なっていたりする.「この土地に住めなくなった」ということがらも,本人がサラリーマンであるか,地元の土地で農業を営んでいる農家であるかによって,重みが全く異なる.ある程度,復旧が進んできた現時点では,幹線道路や都市部に近く物資やボランティアが集まりやすい地域と,そうではない地域の格差が激しくなっている.都市部では,制約が多々あるものの通常の生産活動が行われる状態になっているにもかかわらず,津波に襲われた沿岸部では,まだ犠牲者の遺体の収集も終わっておらず,水や食べ物,雨風をしのぐ場所,衛生面などが課題でありつづけている.

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