クラウドやAndroidで支援する:今の私たちにできること ―― 日本Androidの会 災害時支援アプリ・マッシュアップ・ミーティング 第1回 レポート

みわ よしこ

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レポート 2011年4月 1日

 2011年3月11日の東日本大震災後,ICT(Information and Communication Technology)企業やオープン・ソース関連の各コミュニティは有機的に連携し,多様な支援システムを迅速に開発して提供した.また,今回の東日本大震災では,広く普及している携帯電話やスマートフォンが,救助活動・支援活動に大変有用であることが示された.

 「日本Androidの会」はこれらの展開を受けて,携帯機器向け災害支援アプリ開発への本格的な取り組みを開始するため,2011年3月25日の夜に,東京大学 駒場キャンパスにて緊急ミーティング「災害時支援アプリ・マッシュアップ・ミーティング」を開催した(写真1).当日の東京近郊は,鉄道の多くの路線が50~80%程度の運行状況だったが,ミーティングには60名程度が参加した.業務としてICTや携帯機器開発にかかわる人々のほか,行政にかかわる人々,管理職や経営者なども多く見受けられた.

 

写真1 Androidの会 災害支援アプリ・マッシュアップ・ミーティング 第1回の様子

 

 まず,日本Androidの会 会長の丸山 不二夫氏が挨拶を行った(写真2).丸山氏は「震災から立ち上がろうとしている被災者の復興支援に重点を当て,さらに『未来の防災』に役立つ,災害時の大切な指針を与えるシステムを作る」という今後の方向性を示し,

  • クラウドで開発して開発期間の短さを重視
  • 将来はガラパゴス・ケータイ向けのサービスにも展開

という方針,さらに,

  • 明日から開発を開始して2週間で動くものを作る

という計画を示した.

 

写真2 日本Androidの会 会長の丸山 不二夫氏

 

 続いて,クラウド・サービス提供者やアプリ開発者によるショート・プレゼンテーションが行われた.

2011年4月3日(日)に「災害時支援アプリ・マッシュアップ・ミーティング 第2回」が開催されます.詳しくはこちらをご参照ください.

 

 

●日本マイクロソフトはAzure無料パスや東京電力のミラー・サイトを提供

 クラウド・サービス提供者側のトップ・バッターは,日本マイクロソフトの砂金(いさご)信一郎氏である(写真3).砂金氏は,震災後,「Azureのエバンジェリストとして何かできないか」と思い,コミュニティの迅速な活動を支えるためにすぐにWindows Azure Platformの90日間無料パスを発行できるようにした.その後,使用できる機能制約を少しずつ緩めていき,現在は全機能が利用できるようになっているという.90日間経過後は,相談を受けて個別対応する予定とのこと.

 

写真3 日本マイクロソフトの砂金 信一郎氏

 

 さらに日本マイクロソフトは,自治体や東京電力,工場に火災が発生したコスモ石油など,アクセスが集中するWebサーバについてミラー・サイトの作成と提供も行った.ミラー・サイトの提供にあたっては,社内の公共営業チームが積極的に支援や調整にかかわったという.

 

●救済支援情報サイトにAmazonサーバを提供

 続いて,アマゾン データ サービス ジャパンの玉川 憲氏が登壇した(写真4).震災直後からTwitterの「#save_県名」タグに集まった書き込みをまとめて掲示するなどの活動を行っていたWebサイト「SAVE JAPAN! PROJECT」で,アクセス過多に耐えられないという問題が発生していたことから,「クビが危ないかも」と思いつつも,独断でAmazonのAWS(Amazon Web Services)サーバを提供した(後日,社長から無事に許可が得られ,クビは飛ばなかったとのこと).

 

写真4 アマゾン データ サービス ジャパンの玉川 憲氏

 

 「地震が終わったあとは無力感で一杯だったけれど,『これだったらできる』と実感できた.これからもできる範囲でできることをやっていきたい」とプレゼンを結び,会場からは大きな拍手が沸き起こった.

●セールスフォースや富士通もクラウド・サービスを無償提供

 セールスフォース・ドットコムの岡本 充洋氏は,企業として災害支援のためにクラウド・サービスを無償で提供しようと考えた際に,自社サービスの「向く」,「向かない」について検討したという(写真5).同社のサービスはリレーショナル・データやステータス,プロセスの管理に優れているため,それを提供することにした(Salesforceフル機能1,000ライセンスを90日間無償提供).例えば,無償提供に含まれている「chatter」という企業内向けSNSサービスは,「ドメインのメール・アドレスを使って会員登録すると,そのドメインの人だけのSNSが自動的にできる」というものである.表に流すことのできない問い合わせに役立っているという.

 

写真5 セールスフォース・ドットコムの岡本 充洋氏

 

 富士通の車井 登氏は,計画停電や交通機関のトラブルと闘いながらデータ・センタを維持する苦労とともに,同社の支援プログラムについて発表した(写真6).同社は,震災の復旧・復興に向けて活動を行う企業や自治体,非営利団体などに対して,クラウドのインフラやアプリケーション・サービスを3カ月間無償で提供する(詳しくはこちらを参照).

 

写真6 富士通の車井 登氏

 

●福島県内からの生々しい苦労と不安の声も

 福島県会津若松市に拠点を置くGClueの佐々木 陽氏は,広い福島県での移動や物資移動の生々しい苦労,および原発事故に関する情報の遅さに対する怒りと住民の不信感,不安感を語った(写真7).福島県の発表がもっとも早く,ついで東京電力,政府の順であるが,「黒煙が上がってから政府が発表を行うまで,長いときは5時間もかかる」という現在の体制がどれほど住民に不安を与えているかは,現地にいなければ実感できないだろうと思われる.

 

写真7 GClueの佐々木 陽氏

 

 これらの経験から同氏は,「原発の煙の状態をリアルタイムで開示できる仕組み」,「現在の道路状況がリアルタイムで分かる仕組み」,「被災地向けの物資に関するニーズを適切に把握して供給とのマッチングを行う仕組み」の重要性を示した.

 

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